まなびのひきだし
2015.08.05
11.動物の飼育、植物の栽培
=====================================
このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!
=====================================
■保育所で動物を飼育するとか、植物を栽培するといったことは特に都会の園だと必ずしも多くないかも知れません。しかし、保育指針では、保育内容・環境において「身近な動植物に親しみを持ち、いたわったり、大切にしたり、作物を育てたり、味わうなどして、生命の尊さに気付く。」とあるように、大事にされています。もちろん、野外に出て、虫を捕まえたり、草花を摘んだりすることもしてほしいのですが、この内容項目を満たすことは実際に日常的に動物に接し、また植物に親しむ必要があります。そのためには、園での飼育と栽培が最もふさわしい活動です。
■施設により制限はあると思いますが、できれば動物として子どもにとって愛されやすい哺乳類がよいでしょう。子どもが愛着を感じ、大事に世話をしたくなることが大切です。動物の抱いたときの温かさなどを感じられると親しみが出てきます。さらに世話をしている内に、相手の動物も慣れ親しんでくるようなものだと子どもの愛情が育ちます。名前をつけるなど、個としての認識が成り立ちすいものとなると、金魚とかカタツムリより、ウサギやモルモットやチャボなどがふさわしいはずです。なお、野生の動物を園で飼育することは、原則としてできないので、然るべきところから手に入れる必要があります。また、大型動物(山羊など)は獣医の助けが必要ですし、幼児の手に負えないので、避けた方が良いと思います。
継続的に出会えることが大事です。年に1度、数時間動物に接することはそれなりに意味がありますが、動物に親しみ命の尊さに気づくには不十分です。毎日のように世話をし、時に遊ぶといったことが意味があります。さらに、子どもが生まれるなどに立ち会えれば、もっといいでしょう。時に動物が死ぬこともあります。そういった際には動物の死を機会に改めてその動物を大事にしてきた思い出を振り返りつつ、きちんとした埋葬を行うことで、命の大切さが感じられる機会となります。
飼育当番などは交代ですることになります。それもきちんと責任を持たせ、年長児を中心とした体制を組み、そのやり方については最初に明確にしておけば、できるようになります。年齢を追っての成長の時間を持てる活動でもあります。
■植物の栽培は大きくは観賞用の花と作物に別れます。また自分の栽培ではないが、親しむものとしての植物が大抵の園ではプランターや花壇や庭の片隅などに生えていることでしょう。樹木があり、葉で遊んだり、実を摘んで、色水遊びや調理活動に使ったりもあるかも知れません。
栽培で大事なことは種をまくなり、球根や苗を植えるところから始めることです。成長過程を見守り、花が咲いたり、実がなる過程を経験することに意味があります。植物が種や苗から始まり、徐々に育つところを日々見守り、また世話をすることで、植物への思いが育ち、愛情とは言えないまでも、大事に思う気持ちが育ちます。それが命ということにつながるのです。
とりわけ、最後に食べることにつながる野菜などの栽培は子どもには印象が強いものです。その土地にあったものにすれば、さほどの手間も掛かりません。チューリップなどにしても、球根を植えるところからやっていれば、春になって芽が出てきたときに、あのときに植えた球根から生まれたのだとひときわ注目し、花が開けば、自分たちが育てた花だと誇りにも思えるでしょう。
保育者が植えるような草花は観賞に止まらず、それを使った遊べるものにしましょう。花びらや実を取って色水遊びをするとかできます。木にしても、ドングリとか落ち葉とかで遊べます。樹木が園にないとしたら、始終行くような公園などで日頃から関わるようにしていきましょう。
■動物も植物も子どもが思うようにできるわけではありません。自然の法則に従い、成長し、変容していくものです。子どもはその過程に寄り添い、大事にし、その変容の姿を見守ることです。幼児期にそういった経験ができることが、いずれ命を実感することへとつながるのです。
★★※施設の事情で哺乳類などの飼育が難しいところは、昆虫、魚等、飼うものを工夫しましょう。(子ども研)★★