こんにちは、無藤隆です。今月のテーマは、「数への関心の育て方」です。保育の中で数への関心を育てることについて学びましょう。

■幼児に算数を早く教えるべきなのか。そうはしないまでも、数への関心を育てるにはどうしたらよいのか。保育の中でどういった活動をすればよいのかを考えてみましょう。
算数の計算に至る前に数の概念の形成が必要です。それは量の大小の比較と数の大小の比較という二つの面が統合できることと、数の数える範囲が広がることが基礎となります。

■例えば、３と５では5の方が量として大きい。点の数が3つのパターンと5つのパターンを比較すれば、5つの方が3つより点の数が多い。それが量の比較です。それに対して、数として比較するのは質問としては「３と５はどちらが大きいか？」という問になります。量として比較するのは離れた方がすぐに判断できます。3個と5個の違いより、3個と9個の違いの方が簡単に判断できる。数の比較は、そうではなく、近く同士の方が容易です。３と5の比較なら、３、４、５と数えていくが、３と９なら3から9まで数えるだろう。だから、数の場合、近くの方がすぐに数えられて判断が速くなる。
これは数には量の面と順番の面とがあるからなのです。量は見た目での違いがあれば、すぐに分かる。数の方は順番に数えていくことで大小が判断できます。その数の量の面と順序数の面の統合が出来ると、計算を進める準備が整います。
例えば、カルタで何枚取れたかを競います。数えて分かるのは数としての比較です。取った札の厚みを比較するのは量についてです。でも、もちろん、どちらの結果も同じで一致するはずです。収穫したサツマイモを較べると、見かけの量と秤のグラム数では食い違いが出るかも知れません。

■もう一つの準備は数える範囲を広げることです。おはじきなどを並べて、いくつあるかを子どもに数えさせます。満3歳くらいだと、３から５くらいまでの数なら数えられます。それが、５を超え、10となり、20まで、さらにそれを超えて数えるようになります。その範囲が広がり、20を超えれば、日本語の数え方は後はほぼ同様になります。幼児期に大部分の幼児は20から100くらいまで数えます。さらに、おはじきのようなものだけではなく、紙でも鉛筆でも、自動車でも人でも、何でも数えるようになります。数はそういった抽象的な整理を可能にするものです。縄跳びが何回か跳べるかなどは動きを見て数えるので、難しくなります。

5個のおはじきと3個のおはじきを合わせると全部でいくつか。それは筆算で答えなくても、幼児は口頭で指を使ったり、おはじきに触ったり、口頭で考えたりして答えられます。そもそも数を数えるとは1ずつ足すことです。二つ加えれば、例えば、3個のものが5個になります。そのように、既に幼児は足し算を始めています。ただ、それは数えられる数の大きさの範囲においてのことですが。
５や10を単位とすることも分かり始めます。指が片手で5本、両手で10本となるからであり、また日本語は10進法で出来ているからです（「じゅう」、「じゅういち」、「じゅうに」、「じゅうさん」と唱えます。英語は12進法が元になっています。

■こう見てみると、筆算の練習に入る前に経験しておくべきことがたくさんあることが分かります。何でも数えられるようになること。５と10のまとまりを意識すること。分けたりまとめたりの機会を増やすこと。比較の習慣をつけること、特に数える比較と量の比較を双方行うこと。そういうことが可能となる遊びや生活の場面を探してみて下さい。

いかがでしたか？次回のテーマは、「環境」を予定しています。それではまた来月。