まなびのひきだし
2015.02.04
05.環境について考えること
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!
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■保育内容「環境」の核となることは、子どもがまわりの事物に出会い、それに興味を抱き、さらにその性質について考えるようになることです。
■一つの例を出しましょう。ある園での冬の寒い日の事例です。もう10時くらいでしょうか。何人かの子どもたちが手に容器を持って集まり、そこから氷を取り出して、互いに見せ合っていました。日にかざして「きれい」と言ったりします。滑らせて地面に落ちると、割れて、面白がっています。テーブルの上に流しておいたのか、薄い氷があり、それを保育者がそっと持っています。一人の子どもが「氷が厚い!」と自慢して言います。別な子どもも「厚い」と言います。どちらが厚いのか、較べてもいます。そこで、保育者が「本当だ、厚いね。すごい。」と言った上で、「ふしぎだね、どうして○○ちゃんの氷は厚いんだろう」と呟きます。
■ 子どもたちは、「えー、どうしてかな」と言いながら、よく分かりません。保育者が、「じゃあ、もう一度やってみようか、いろいろなところに器を置いて、明日の朝、見てみよう」と誘います。この後、この氷の活動は何日か続いたようです。誰が厚くできるかではなくて、実は、寒い場所に置くと氷が厚くなるのだとか、そこは園舎の蔭になるところだとか、朝、登園後は陽が差してきて、陽が当たるところだともう溶け出しているのだとか、だんだん分かってきます。
■この子どもたちは氷について学んだわけです。確かに中には図鑑などで、寒いと水が氷になるとか、冷蔵庫で水が凍るのだとか、ジュースに入っている氷はだんだん溶けて水になるのだとか、分かっている子どもも結構多いでしょう。でも、それと実際に氷について体験することは違います。氷の冷たさを触ってみて実感します。持っている内に、氷が溶けて、水がしたたります。薄い氷の表面がすべすべします。氷が割れると、小さい氷がテラスの上をすーっと滑っていきます。
前の夜に容器に水を入れて置いておいたのが朝になると、氷になっています。全部ではなく、その表面ですが、厚いものや薄いものがあります。しかも、その氷の厚さがどこに置いたかで変わり、それは実はその場所の寒さによるものだし、さらに陽が差すかどうかで寒さ・温かさが変わることも気づきます。
■子どもたちは身の回りにある自然やそれ以外のいろいろなものや事柄について興味を抱き、それがどうなっているかを見つけたいと思うようになります。始めはただそれで遊んでいるのが、そこに何らかの「法則性」があるのかを考えるようになるのです。周りにあるもの・ことへの興味が次第にそこでどうしてそのことが成り立つのかの規則性・法則性を見つけようとするのです。それは、科学の芽生えと言ってもいいでしょう。
■始めから法則を見つけるということではなく、まず始めには体験があります。そこで感じたことがあって、不思議だという気持ちが起こります。面白いなあ、と感じる。どうしてだろうか、と不思議に思う。何故そうなるかを試してみる。きっとこうなのだと考える。そのように子どもの考えが生まれ、深まっていきます。
そこに子ども同士の感じ方や考え方の交流が生まれます。友達が感じる不思議さを自分も感じ、興味が広がります。保育者がその面白さや不思議さに共感し、探究活動へと向けていくことでしょう。環境の探究が始まるのです。