まなびのひきだし
2014.11.05
02.運動能力を伸ばす
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!
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■乳幼児期は体の基本が出来、身体をどう動かすかが分かり、より組織的なスポーツの手前の段階が形成される時期です。そこでいくつかのことが大事になります。
■第一は運動量を一定以上にしていくことです。歩数で言えば、5歳くらいなら1万歩を越えるくらいが一つのメドです。広い庭があって、そこで思う存分遊んでいれば、その程度かもっと多くなります。
ただ、かなりの個人差があるものです。子どもにより静かな遊びを好む場合もあり、そうすると相当に運動量が不足するかもしれません。庭がないと散歩することになりますが、それもあまり行き先の公園などで動かないと運動不足になります。保育者が意図して運動遊びを導入し、そこにどの子どもも誘い込むようにします。毎日動くことが必要です。雨の日などは(外に雨合羽で出たらよいと思いますが)、部屋の中の運動遊びを工夫するとよいでしょう。
よくある体操教室の類いは子どもが体を動かす時間が少ないようです。跳び箱の跳び方の練習を順番にして、後の子どもはそれを見ているようだと、その時間にかえって運動量が減ります。それが刺激になり、普段の自由に遊べる時間に運動が増えればそれでもよいのですが。
なお、家庭でも土日など動くとよいのですが、親御さんによっては室内遊びに終始したり、買い物も車になって、子どもが動かないことはよく見られます。啓発も大事です。同時に園で補うべきです。
■第二は動きの多様性を確保することです。運動量が大事だということで、朝マラソンをして10分ほど走れば十分かと言えば、そうではありません。量も十分ではありませんが、動きが単調になりやすい問題があります。多様であるとは、人間の体の関節に注目すると分かりやすいでしょう。関節は左右上下への動きとひねる動きという自由度を持っていて、骨をつなぎ、その骨を筋肉が動かします。多様であるとは関節の柔軟な動きを可能にすることです。
関節は110カ所ほどあるようです。腕を取ると、肩、肘、手首、指の関節があります。幼児は多少の運動をすれば、すぐに大人より自在に動かせるようになります。それは手先の遊びによりますが、それも実は大事な運動遊びでもあります。例えば、手の指の一つ一つを他の指を動かさずに、曲げたりできますか。これは多少の練習で子どもなら出来るようになります。足指じゃんけんをすると、足の指も同じように一つ一つを動かせるようになります。
■第三は重心を中心とした体のまとまった動きを感じ取れるようにすることです。例えば、鉄棒の前回りは腰のあたりを棒に当て、わずかにそれをずらすと、体の重心が棒をわずかに越えるので自然に回転します。縄とびも重心を上下させる感覚がつかめると、ごくわずかな縦移動で跳べるようになります。実は滑り台もブランコも重心の移動の微妙な感覚を感じ取る大事な機会となっています。
■なお、園の環境について配慮すると、運動遊びをたくさん入れていかなくても、子どもは自ずとそこで体の動かし方を学びます。庭に小山があれば、その上り下りで足を踏みしめるようになります。それは足指の踏み締めを学ぶことですし、足首や膝の弾力性が増します。ちょっと段差があれば、飛び降りるようになります。膝の屈伸の仕方を覚えます。安全に配慮しつつ、多様な動きが可能な空間を作りましょう。
■なお、文部科学省は幼児向けの「運動指針」を出しています。参考にして下さい。
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319772.htm