まなびのひきだし
2017.07.03
保育所保育指針の改定のポイントとは(その1) 保育所保育に関する基本原則
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!
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2017年3月31日に保育所保育指針が改訂され、大臣告示されました。この改定のポイントを保育指針の本文に即して、順次解説していきます。なお、理解のため、改定されていないところを含めて、基本的な考え方を述べることとします。
1 保育所保育に関する基本原則
(1) 保育所の役割
ア 保育所は、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条の規定に基づき、保育を必要とする子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。
イ 保育所は、その目的を達成するために、保育に関する専門性を有する職員が、家庭との緊密な連携の下に、子どもの状況や発達過程を踏まえ、保育所における環境を通して、養護及び教育を一体的に行うことを特性としている。
ウ 保育所は、入所する子どもを保育するとともに、家庭や地域の様々な社会資源との連携を図りながら、入所する子どもの保護者に対する支援及び地域の子育て家庭に対する支援等を行う役割を担うものである。
エ 保育所における保育士は、児童福祉法第18条の4の規定を踏まえ、保育所の役割及び機能が適切に発揮されるように、倫理観に裏付けられた専門的知識、技術及び判断をもって、子どもを保育するとともに、子どもの保護者に対する保育に関する指導を行うものであり、その職責を遂行するための専門性の向上に絶えず努めなければならない。
「保育所の役割」の上の大きな見出しとして、「保育所保育の基本原則」となっています。今回、単に「保育所」とか、単に「保育」と呼ぶのではなく、「保育所保育」というまとまった言い方を多用しています。それは、保育所の保育の独自性・専門性を強調するためなのです。 「保育所の役割」は従来のものと基本的には同じです。もちろん最も大事なことなので、改めてその意味を読み取りましょう。
第1、保育所は「保育を必要とする子どもの保育」をするところです。保護者が面倒を見るはずのところ、代わりに小さな子どもの面倒を保護者に替わって行うということが児童福祉法で規定する保育所の福祉の最も基本となる働きです。その上で、保育所は子どもの健全な心身の発達を図ることを目的とするのですから、単に預かれば良いのではありません。発達を進めること、つまり教育という働きを担いますが、その働きは健全な心身の発達という人間の総体に関わるものなのです。ですから、子どもの最善の利益を考慮して、それを可能にする場として保育所の生活を構成していかねばならないのです。
第2、保育所は保育に関する専門性を有する職員がその保育を行います。専門性を持つという規定が極めて重要です。単に子どもを預かる、例えば近所の人ではないのです。なお、保育士ではなく、職員とあるのは、保育士以外の職員も保育関わる業務を専門的に行うからです。また、乳幼児という時期を踏まえて、家庭との密接な連携を行いつつ、保育所の保育を行います。さらに、保育所の保育は環境を通してとあり、園の環境がその教育を含めた保育の基本的なあり方となります。その保育は養護と教育を一体的に行い、心身の世話であり、子どもの心の安定を図る養護の営みの上に初めて教育が成り立つことを述べています。その教育を含めた保育は子どもの発達や様子を見つつ、それに相応しい対応が求められます。
第3、保育所は家庭や地域の様々な人々と連携して保育を進めます。また子どもの保護者や地域の子育て家庭に対する子育ての支援もその専門的な業務となります。
第4、保育所の保育士は専門性を持ってその業務を進めます。適切な倫理観を持ち、専門的知識と技術と判断により子どもを保育し、保護者を支援するのです。その際、その職責を遂行するための専門性の向上に努めるとあり、これは従来、第7章に位置していた専門性の向上に関わるところを一文で要約して、保育士の専門性の記述に含めました。その専門性は向上に努めてこそ専門的であり得るのですし、日々の実践の中でその向上の努力が求められます。それは保育所の役割の中に置かれたことにより、単に保育士の個人的な努力だけではなく、保育所として組織的にその専門性の維持・向上の機会を日々設ける必要があります。