まなびのひきだし
2017.06.07
砂場遊びとは
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!
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砂場は園庭があれば必ず置かれているでしょう。室内での小さな砂場が用意されることもあります。誰もが砂場は好きです。毎日飽きもせずに遊んでいます。その魅力はどこにあるのでしょうか。それを通して、子どもは何を学んでいるのでしょうか。
砂の種類によっても多少変わってきますが、たいていの園で使っている砂であるなら、穴を掘ったり、山を築いたり、水を流し入れ、海のようにしたり出来ます。砂を容器に入れて、ケーキに見立てたり、砂で泥団子のようにして、ぴかぴかにも出来ます。たいていは数名は入り込める広さがあり、一緒になって遊べます。
こういう砂場は日本だけではないようですが、戸外に置いて、大きな穴を掘ったり、水を入れたりして、多様な遊びを展開するのは、日本で特に盛んなようです。
砂の魅力はなんと言っても、あのさらさらした感じです。ちょっと水が入ると、べたついて、固まりやすくなる。力を入れると、一つの形になる。でも、長持ちしないで、すぐに崩れる。一つ一つの砂粒には何の個性もありませんが、それが集合体となって、一つの塊としての面白さを作り出す。
砂場に入ると、まわりもおしりの下も砂です。目の前に置かれた小さな砂場をいじるのと、砂場の中に入り込んで遊ぶのでは、遊びの種類がだいぶ変わります。その上、砂をいじって動かしても、砂は砂の上に移るのです。たとえば、板や床の上に移すのではありません。砂という母体があって、その中で子どもはたわむれるわけです。全身まみれになるわけではありませんが、手先の遊びとは違って、全身を使うものになるわけです。その砂場全体が一つの遊びの場と変わります。
砂を掘ると、穴が出来ます。その掘り出した砂は脇に置くので、そこが山をなします。さらに掘ると穴が深くなり、山が積み上がります。通常、砂場の砂がある程度深くしてあれば、底の方は水分を多く含むので、重い泥に似たものになっていて、掘ると手応えを感じます。山の方は積み上げると、富士山のように形のよい山となっていきます。さらに、穴の横の壁を掘り出すと、トンネルが作れます。砂は穴を掘れる程度には柔らかいのですが、すぐには崩れない程度には粘着性があります。
砂は水が加わることで黒目の砂になり、さらに水を加えると泥に近づきます。その変化は水を加えたり、混ぜたり、また天候によっても変わっていきます。表面の砂は白く、底の方の砂は黒くなります。そういったものを目的によって使い分けたり、組み合わせたりで、作るものに変化をつけられます。なお、砂粒とはつまりごく小さい石です。そこに粘土質の水分を含んだ土が加わると、固まりやすいものになります。土は小石に加えて、水分とその他の(たとえば草などの小切れ)が混じったもののことです。水がたくさん入ると、流動性が増して、泥になります。砂遊びと泥遊びは水を加えることで連続的につながっています。 水を入れると、砂場に水たまりが出来ます。「海」とか「プール」と呼んで、そこからごっこ遊びが始まります。水遊びとしても展開するのです。
砂や泥を使って容器に入れることで、ままごと遊びやケーキ屋さんごっこが出来ます。葉っぱや木の実を載せると、ケーキらしくなります。特に、年齢の小さい子どもには手頃に展開できて、好まれる遊びです。
砂場遊びは多くは仲間との遊びでもあります。数名から10名以上が入れるほどの広さがあることが多いでしょう。またしっかりと協同するというよりは、並行遊びが展開しやすいものです。同じ砂が平面に広がっているので、どこが遊びの中心というわけではないですし、分担も特に成り立ちにくいわけです。友だちのやることを真似して、似たことがすぐに出来ます。でも、特に水たまりを作ったり、トンネルを作るあたりで、共同作業も生まれます。
砂場はどんなに巧みに穴や山を作っても、簡単に崩せます。あっという間に整地が出来るのです。だから、永続的な作品を作るのには向いていませんが、崩して朝、平らなところから始めるという意味で、日々新たな遊びになります。作品を残す遊びではなく、ひたすら作っていく遊びなのです。