保育のひきだし こどもの可能性を引き出すアイデア集保育のひきだし こどもの可能性を引き出すアイデア集

まなびのひきだし

2016.08.03

23.乳幼児期の発達の特徴(その5)~生きる力の基礎を培う~

むっちゃん先生と学ぼう
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!

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こんにちは、無藤隆です。今月のテーマは、「乳幼児期の発達の特徴(その5)」です。

保育所保育指針の乳幼児期の発達の特性の6番を取り上げます。

保育所保育指針の乳幼児期の発達の特性のその6は、「乳幼児期は、生涯にわたる生きる力の基礎が培われる時期であり、特に身体感覚を伴う多様な経験が積み重なることにより、豊かな感性とともに好奇心、探究心や思考力が養われる。また、それらがその後の生活や学びの基礎になる。」です。

 子どもの発達は長期に渡るものであり、生涯に続いていくものです。乳幼児に終わるものではもちろんないのですが、同時に、乳幼児期ならではの育ちがあるのです。そこを大事にすることがその後の発達の基盤を作り、それが子ども時代、さらには大人になってまでも続く発達の始まりを構成するのです。
 生きる力を育てるとは、子どもまた大人がその生活の中で自分の力を発揮し、生き生きとした生活を営み、社会の中で自己を活かせるようになっていくことです。その力とは情緒的な土台の元で知的な力と社会性とがつながりつつ、それらが一体となって実際の生活の場で発揮されるもののことです。それは単に知識のことを言っているのではありませんし、仲良しがいることでもなく、また気持が穏やかというだけのことではなく、それがすべて共になって、子どもが自らやってみたいことを他の人と共にやっていけることなのです。
 それは学校でうまくやっていくとか受験とかを遙かに超えた力です。それを育てるとは、生活と遊びの中で子どもが生き生きと活動することによってです。そこから学びが生まれ、生きる力をいっそう高めていきます。
 その基礎を培うというのは急いで力を伸ばすという意味ではなく、じっくりと時間を掛けて子どもの育ちを待つと同時に、そのためのいわば土壌を整え豊かにして、育ちを可能にし、実現していくということです。待つことと働きかけることの組み合わせを意味して、「培う」という言葉を使っています。

 では、乳幼児期の発達の最も根本となる特徴は何でしょうか。それが身体感覚を伴うということです。子どもはたとえ乳児といえども、頭を使い、心が躍動しています。ただ、とりわけ小さい時期の特徴はその頭と心の働きと身体を動かすことが密接につながっているということなのです。身体とは動くことと感受すること(諸感覚を用いて回りのことや自分の動きを感じ取ること)からなっています。身体は周りを見つつ、音を聞きつつ、足下を感じつつ、例えば、移動するのですし、ものを操作します。子どもが主体的であるということとその身体が動くことはこの時期は一体なのです。
 子どもはその動きと関わりを通して、心身が躍動し、いろいろなことについて感じ、また考え始めます。その内面の動きを経験と呼んでいます。それは型通りの手順というより、いろいろな見方や感じ方や関わり方が生まれます。回りには様々なものがあり、人がいますから、その関わり方もいろいろになることでしょう。様々な関わりがあり、経験が多様になるからこそ、それが種々の発達につながります。歩くこと一つとっても、平らないところもでこぼこの所も、障害があったら、乗り越えたり、回り道をしたりします。飛び上がり、飛び降りることもあるでしょう。それらが全部あって、歩行という運動の発達が成り立つのです。

子どもが諸感覚を使って回りの物事に関わり、感受するときにほとんど意識されないその接触する働きが「感性」と呼ばれるものです。感性とは対象に密着し、感覚を通して育つものです。感性が感じたものを取り出し、見直すことで、興味が生まれ、考えるという営みが出現します。不思議だ、何だろうかと思うのが好奇心です。それを、もっと関わってみたいと感じて、さらなる関わりをしていこうとするのが探究心です。そこで出てきた新たな動きの特徴を捉えて、どうしてだろうか、どこが関係しているだろうかと思うのが思考力です。そこから、きっとこうなのだろうと思い、また試します。それが学びです。学びとは生活と遊びにおいて繰り返し関わりながら得られる安定した経験のつながりを指しています。
 このように乳幼児期の日々の生活の中で子どもが熱中して取り組むことがあれば、そこに感性が働き、意欲が湧き、思考が働き始め、結果として学びとなっていくのです。それが積み重なり、生きる力の基礎となっていきます。  
 

 

いかがでしたか?次回のテーマは、「発達過程とは」を予定しています。それではまた来月

 


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