まなびのひきだし
2016.07.06
22.乳幼児期の発達の特徴(その4)~仲間との関係と個の成長~
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!
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保育所保育指針の乳幼児期の発達の特性の5番を取り上げます。
保育所保育指針の乳幼児期の発達の特性のその5は、「子どもは、遊びを通して、仲間との関係を育み、その中で個の成長も促される。」です。
保育所は子どもたちが集団としている場です。もちろん、それは集団行動を求められるという意味ではありません。一人でいてもよいし、他の子どもとともにいてもよい。ただ、遊びが発展すれば、自ずとたいていの場合に他の子どもと一緒に遊ぶようになるということと、その発展が子ども一人一人の成長を促すことにもなるのです。
子どもは何より他の同年代の子どもに興味を強く持ちます。乳児でも他の乳児の顔や動作をよく見ています。おそらく同類だと感じるからなのでしょう。人間はごく小さい時期から仲間と一緒にあろうとするものなのです。
もちろん年齢が小さいと興味を持っていても、一緒に仲良く遊べるわけではありません。一緒であることのやり方を分かっていないと、互いの思いや願いの衝突を避けることが出来ません。でも、園の中でとりわけ同じメンバーと毎日のように一緒に過ごす中で少しずつ気心が知れてきて、そばにいても安心していられるようになります。
そこから相手の様子を真似をしたり、気持ちに共感するようになります。嬉しい気持ちは伝染しやすいですし、泣いたりして悲しい様子も他に伝わりやすいのです。真似といっても複雑な行動は難しいでしょうが、簡単なすぐに動かせる動作とかが面白いとか、何のためにやるかが分かる場合、真似しやすくなるようです。それにより、子どもの間に遊びはすぐに広がります。もちろん、時に好ましくない行動も広がります。それを含めて、それは子どもが共に育つということなのです。
同年代の子どもと共に年上の子どもを見る機会が貴重です。それは、子どもにあこがれを育てます。ああいうことをしてみたい、これもしたいという子どもの願いが生まれるからです。そこまでしっかりとは出来なくても、ままごとのように、子どもはそれをやっている気分になれるのです。でも、その内、本当にそのあこがれていることをやろうとするようになります。積み木を高く積んだり、コマを回したりは、いきなり出来るのではなくて、その前にたくさん上手にかっこよくやっている様子を見る機会があるからなのです。
それは難しく言えば、子どもが文化で価値あるとされることに出会い、身に付けていく過程です。誰にやれといわれなくても、小さな子どもは年上の子どもや大人がやっていることにあこがれ、それに近づこうとするのです。
多くの遊びは他の子どもと一緒にやるから楽しいものです。ただ、そこらを走り回るのだって、仲間と一緒だと楽しい気分で盛り上がれます。そこに一人の子どもが思いついたことがあれば、他の子どももそれを真似て、さらに真似の仕合が広がって、遊びが発展します。
もののやりとりをするというくらいでもそこには役割の分化が生まれます。積み木を手にとって相手に渡す。相手はそれを受け取り、また返してくれる。そういうもののやりとりが相手との人間関係の結びつきとなり、また渡す役ともらう役として分かれることでもあります。
ルールある遊びが入るともっと複雑な役割になります。鬼ごっこで鬼と逃げる役に分かれます。それは鬼だけでも、逃げる側だけでも遊びになります。双方がいて、違う役割行動を行い、しかもそれが相互に補い合うから一つの遊びになります。
こうやって遊ぶことが次第に一人でも遊ぶ力にもなっていきます。仲間と遊んだときのやり方を一人でもやってみようとするからです。練習もすることでしょう。一人で思いついたことを仲間の遊びに持ち込むこともあります。
個の成長は仲間との遊びに広がり、そこでの遊びを個々の子どもが自分のものにしていく。これが仲間と共に成長する子どもの姿です。