こんにちは、無藤隆です。今月のテーマは、「乳幼児期の発達の特徴（その３）」です。

保育所保育指針の乳幼児期の発達の特性の4番を取り上げます。

（４）乳幼児期は、生理的、身体的な諸条件や生育環境の違いにより、一人一人の心身の発達の個人差が大きい。

　同じ0歳、1歳、2歳と年齢で分けても、その中の1年間の幅は極めて大きなものです。当然ながら、月齢による違いが大きいからです。そうはいっても、大まかな区切りとして乳児は別として年齢を単位とすることが多いわけですが。また、行政的な補助金の単位としてもそういった便宜的な措置をすることになっています。実を言えば、5歳児クラスで見ても、月齢による違いは大きく、研究によっては小学校高学年までそれが続くということも言われています。むしろ、ごく小さい時期は2ヶ月とか3ヶ月くらいの単位で、3歳以降は半年程度の期間で分けて考えることも多いでしょう。

　その上に、同じ年・月齢であっても、その中の個人の違いはかなり大きなものがあります。一つは生育の個人差です。大人でも背の高い・低いがあるように、小さな子どもでもそれがあります。それは知的な発達でも違いがやはりあるはずです。もう一つは性格の違いであり、それを小さい時期は「気質」と呼びます。特に、穏やかな性質や興奮しやすい性質、明るめと暗め、元気があり活動的か静かか、などの違いがあります。
　睡眠や排泄リズムなどの生理的体質の違いにも配慮しましょう。寝付きが良くて、ぐっすり寝る子どももいれば、寝付くのに時間が掛かり、すぐに目覚めやすい子どももいます。どのくらい睡眠時間を必要とするかも大きな差があります。食欲もよく食べる子どもも小食の子どももいるのだし、偏食も味覚の敏感さによります（だから極端なものまで直さないでよいというのではありませんが）。排泄も定期的に便が出て終わる子どももいれば、少しずつとか不定期な子どももいます。
　もちろん、家庭での親の育て方の違いによる子どもの成長や個性の違いも大きいでしょう。虐待とまでいかなくても、育て方の問題が伺える場合もあります。もっと簡単な例で言えば、親がスポーツ好きで土日は一緒に身体を動かす家庭もあり、親が本が好きでしょっちゅう絵本を読んでやっている家もあり（そういう家庭では親が本を読む姿を見て、子どもも本好きになりやすいものです）、親がテレビゲーム三昧で子どもと一緒にやっている場合もあることでしょう。家庭によって起きる時間も寝る時間も様々です。中には朝遅く起きてきて、保育園にやっと皆が遊ぶさなかに来て、まだ眠そうな子どももいます。

　どうであれ、そういった子どもの違いに応じて保育をするのが保育園の仕事です。虐待というのに近いなら保護者と相談して、それを変える手立てを図る必要がありますが。それ以外については、保護者に指示したり説教することではありません。家庭の事情を察知しながら、子どもにとってよりよい成長のための条件を整えていくのです。
　まして、通常の個人差は必ずあるものです。年齢や月齢による特徴は単なる目安です。それをこういった個人ごとの違いを加味しつつ、保育の働きかけを変えていきます。それは一人一人まったく違う保育を行うという意味ではありません。概略は年齢・月齢による指導計画を立てて進めれば良いのです。その上での配慮です。

気をつけねばいけないことは、そういった個性の違いは必ずしも発達の遅れや異常というわけではないということです（時にはそういう場合ももちろんあります）。年齢や月齢には幅を設けて理解する必要があるのです。「おおむね」という表記にはそういう意味が込められていますが、実際にはどのくらいの幅があるものかは経験を要することです。ベテランの保育士に学びながら、発達の幅を知る努力をしてください。
 

いかがでしたか？次回のテーマは、「乳幼児期の発達の特徴（その４）」を予定しています。それではまた来月。