まなびのひきだし
2016.03.02
18.環境の構成の仕方
=====================================
このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!
=====================================
保育所保育指針でも幼稚園教育要領でも、環境を通しての保育という趣旨に沿って、園の環境のあり方を大切にしていきます。
例えば、幼稚園教育要領の第3章の指導計画の立て方の留意事項の次の文章は同趣旨で保育指針にもありますが、環境の構成の仕方を述べます。
- イ 環境は、具体的なねらいを達成するために適切なものとなるように構成し、幼児が自らその環境にかかわることにより様々な活動を展開しつつ必要な体験を得られるようにすること。その際、幼児の生活する姿や発想を大切にし、常にその環境が適切なものとなるようにすること。
- ウ 幼児の行う具体的な活動は、生活の流れの中で様々に変化するものであることに留意し、幼児が望ましい方向に向かって自ら活動を展開していくことができるよう必要な援助をすること。
ここには、園の環境を整えるにあたり、いくつかの原則が述べられています。
- 1)具体的なねらいを持つこと。
- 2)子どもがその環境にあるものに関わり活動することで意味のある体験となること。
- 3)子どもが関わり意味ある体験になるように、子どもの生活や発想にふさわしい環境とすること。
- 4)子どもの具体的な活動は日々変化していくので、それに合わせて、変化させていくこと。
- 5)子どもが主体的になっていくように、自ら活動を展開できるようになっていくための援助をしていく。
- 6)幼児が何が望ましい方向ということが感じられるよう環境と活動の工夫をする。
まず保育士は環境の至る所で、そのねらいを考えておく必要があります。とりわけ保育士が変えようと思えば変えられる部分です。例えば、遊具などをどこにどの程度出しておくか。掲示物はどうするか。そういったものは毎日ではないにせよ、時期ごとに変えていけるものです。植物の栽培だって、プランターでやるなら、春などの季節にどうするか考えられます。それにより、どういう活動を予想しているのか。その活動を通して子どもはどういう体験をしそうなのか。その体験を通して子どもはどのように成長していくだろうか。何に気づくだろうか
環境にあるものとはただそこにあると、そこから子どもがよい影響を受けるということではないのです。子どもがそのものに実際に関わって、活動してこそ、子どもが楽しく面白く思い、熱中し、何度も関わり、そうして、そこに成長が生まれるのです。子どもがやりたくなるものを用意すること、やり始めて、活動が続くようなものとすることが必要です。その上で、そこから子どもは何を得て、何を学ぶかを考えてみます。
子どもが面白がり、気づきが生まれるためには、子どもの発想に近づけたものである必要があります。子どもが面白そうだと思えることであり、すぐに手を出したいと感じることなのです。それが特別な機会にだけ用意するのではなく、日頃の生活で始終出会えるところに置いておきます。そうすると、普段の生活の折々に出会えます。他の子どもが関わっている様子を見られます。繰り返し関われます。生活の中の他のことと結びつけて、新たな使い方を発見します。
環境は日々変化させていくべきものです。それは子どもの活動が変化していくものだからです。それにふさわしいものであり、その活動をさらに発展していく刺激であり、素材であり、また新たな方向を指し示すものを置いておくのです。そのために、現在、子どもの活動はどこまで来たか、どう発展してきたか、これからどういった方向に向かいそうか、さらに高めるためにどういった刺激や素材があるとよさそうかなどを検討できます。だから、環境の構成は子どもたちの活動の展開の記録と吟味と一体のものとなるのです。
子どもは初めから主体的で自分の考えをしっかりと持って、計画して、活動していくわけではありません。まずは自分からやってみられるようにします。それが正しいか、間違いかは後で直せばよいことです。何であれ自分から始めてみる。そこに子どもが夢中になっていく秘密があります。やってみたいことが生まれて、それをもっとやろうとする。そうするとこういうことをやってみたいとその先のイメージが生まれ、それを実現するための工夫をするようになっていくのです。
その先のイメージを具体化できるためにも、日頃から高いレベルの活動の様子を折に触れて見せておくことが大切です。それがあこがれとなり、やってみたくなり、でも、その真似がすぐには出来ないので、自分なりの発想で、それに近いことを初めて、でもいずれ本格的にあこがれた対象やそのやり方に近づこうとします。そこから高度な工夫が生まれていくことでしょう。
- サクセス子ども子育て研究所より参考事例紹介