おやこのひきだし
2023.12.08
シリーズ 身体障がいのある子どもたちと保育園生活 第12回(全12回)
執筆:株式会社Halu(乳幼児向けインクルーシブブランド IKOU運営)
対象:保育士、幼稚園教諭、保護者
これまでの連載では、「障がい児」その中でも特に⾝体的なチャレンジを抱える⼦どもたちの⽇常⽣活や、保育園等での⽣活について実例を交えながらご紹介をしてきました。
2012年に児童福祉法の改正によって創設された保育所等訪問⽀援事業によって、⼊園後もさまざまな専⾨職の協業により、地域で活き活きと⽣活できるような⽀援の充実が浸透しつつあり、これまで保育園等への⼊園に踏み切れなかった保護者も、健常なお⼦さんと交流する機会として、児童発達⽀援事業と併⾏しながら利⽤するという選択肢も持てるようになってきています。
さらに、2021年に施⾏された医療的ケア児⽀援法(※1)により、医療的ケア児のための環境整備が努⼒義務から法律上の責務となったことで、各施設や⾏政が⾝体障がいのある⼦どもたちも⼀般の保育園等に積極的に受け⼊れていくことが求められ、インクルーシブな社会の実現に向けての歩みが進められました。
また、昨今では、全国的に「障がいの有無に関わらず遊ぶことができる遊具を有したインクルーシブ公園」も増加傾向にあり、保育や教育の場以外でも障がい児と健常児など多様な関わり合いを持てる場として広まりつつあります。
特別なニーズのある⼦も含め、多様な⼦どもたちが共に育つ環境が整備されることは、障がい児にとってだけではなく、健常児にとっても、幼少期から様々なニーズを持つ⼈たちの存在を⾝近に感じ、⾃然に受け⼊れるという貴重な機会につながるのではないでしょうか。これまでご紹介した事例の中でも、実際に障がい児と健常児が同じ時間・同じ場所で過ごすことによって、⾃然と理解し合い、助け合える関係性が⽣まれており、当たり前のように違いを受け⼊れることができている例が⾒られました。
このように、お互いを認め合い⽀え合う社会の実現のためには、まずは、障がい者・児に限らず多様な⼈たちの存在を当たり前に認め受け⼊れることが⼤切です。⼤⼈世代でも「街で障がいのある⽅を⾒かけてもどのようにサポートしてあげたらいいのかわからない」という声をよく⽿にします。そのような⽅に掘り下げて話を聞いてみると、やはり「これまでの⼈⽣で障がいのある⽅に触れ合う機会がなかった」というケースがほとんどです。きっと世の中にはこのように⾏き場を失った「思いやり」や「優しさ」が多く溢れているのだろうと思います。ほんの少し寄り添える勇気を持てる⼈が増えるだけでも、多くのマイノリティにとって⽣きやすい社会となるのではないのでしょうか。
そして、もう⼀つ重要な視点は、どのような⼈であっても病気や事故、加齢によって「サポートが必要な側」になる可能性があるということです。将来の⾃分を含め、あらゆる⼈たちが、どんな状態であっても、⾃由かつ前向きに参加できる社会を実現することを⼀⼈ひとりが⾃分ごととして捉えることから、インクルーシブな社会が実現していくことを願っています。
- ※1)医療的ケア児⽀援法:正式名称「医療的ケア児とその家族に対する⽀援に関する法律」は、医療的ケア児を法律上で定義し、国や地⽅⾃治体が医療的ケア児の⽀援を⾏なう責務を負うことを⽇本で初めて明⽂化した法律。医療的ケア児の健やかな成⻑を図るとともに、その家族の離職を防⽌する⽬的で作られた。