おやこのひきだし
2023.06.22
シリーズ 身体障がいのある子どもたちと保育園生活 第7回(全12回)
執筆:株式会社Halu(乳幼児向けインクルーシブブランド IKOU運営)
対象:保育士、幼稚園教諭、保護者
身体障がいのある子どもたちの保育園生活における環境づくりや日常動作のサポートについてご紹介する連載の第7回目。前回は幼稚園生活がもたらした息子の変化についてお話しさせていただきましたが、今回は母である私の変化についてお話ししたいと思います。
現在小学校1年生のひとりっ子の息子は、歩いたりお喋りをする事が出来ない重症心身障害児です。生まれてから幼稚園に入園するまでは、ずっと児童発達支援に通っていたため、障がいのあるお友達はいるけれど、そうではないお友達との関わりが全くありませんでした。
そして、障がいのある子どもを育てているお母さん達は、私にとって心置きなく胸の内を話せる大切なお友達。
みんなといる時だけは、子どもに障がいがある事すら忘れてしまうような、そんな楽しい時間を過ごしていましたが、障がい児仲間との世界から一歩外に出ると、常に『障がい』という言葉を意識し、人の目を気にして、常にバリアを張って生活しているような感覚でした。
そんな日々を過ごしていた私に、大きな転換期が訪れました。
それは、息子の幼稚園への入園でした。
入園直後に行なわれた懇談会で、息子の障がいについて説明した時の事を今でもよく覚えています。
私にとって、初めて障がい児だけではない世界に飛び込んだ瞬間で、とても緊張して息子の障がいの話をしながら涙を堪えるのに必死でした。
でも、それから徐々にクラスのお母さん達とお話しをする機会も増え、息子の障がいに関する話も自然に出来るようになりました。
皆さんからの沢山の配慮や温かい言葉に何度助けられたかわかりません。
いつからか、幼稚園が私たち親子の新しい居場所の一つだと自信を持って言えるようになりました。
入園前は、重度の障がい児の息子と母親である私が受け入れてもらえるのかとても不安でしたが、幼稚園でのお母さん達との交流をきっかけに私の気持ちは大きく変化し、『色々な人と交流してみよう!色々な人に息子の事を知ってもらおう!』と思うようになりました。
そして、息子を連れてこども食堂でのボランティアに参加したり、ご近所さんとの交流も積極的にできるようになりました。
息子の障がいについてもオープンに話すようになり、地域の方達に温かく見守っていただきながら生活をしています。
4月からは地域の小学校に入学し、ますます地域の方達とのお付き合いが増えましたが、幼稚園での経験を経た私は臆する事なく障がいのある息子を紹介できるようになりました。
幼稚園に通わせた目的は、息子の成長を促すためでしたが、気がつけば母親の私も大きく成長した2年間でした。どちらかというと、私の変化の方が大きかったかもしれません。
私の心配をよそに自然に仲良くなっていく子ども達の様子を目の当たりにし、いかに自分が『障がい』という言葉にとらわれてきたかを考えさせられました。そして、障がいの有無に関わらず、子ども達の成長を一緒に分かち合えるお母さん達がいてくださった事は私のこれからの人生で大きな支えになると信じています。そして、幼稚園で出会ったお友達や保護者の方々からの学びを、今後の人生に活かしていきたいと思います。