まなびのひきだし
2022.06.21
シリーズ 乳幼児期から向き合う性教育 第3回(全12回)
執筆:臨床心理士・公認心理師・保育士 伊藤美咲
対象:保育士、幼稚園教諭、保護者
【3/12 性教育のスタート地点】
それでは、子どもへの性教育、どこから始めたら良いのでしょうか?
身近な性教育のスタート地点は、「自分の身体を知ること」です。目、耳、口、腕、おへそ、指、足…そんな体の部位と一緒に、性器の名前や働きも少しずつ覚え、理解できると良いです。
例えば、お風呂やトイレ、着替えの時には、自分の身体を見る機会も多いと思います。そのような時に、「ここはおちんちん(ペニス)。おしっこが出るところだよ」「女の子のおまたには、前から3つ穴があるよ。前からおしっこが出る穴、赤ちゃんが通る穴、うんちが出る穴だよ」などと、実体験や興味に合わせて、声をかけられると良いです。
性器の名前については、なるべく正確な用語を伝えられると良いです。ですが、大人の側に照れがあったり、抵抗があると、子どもにもそれが伝わってしまいます。今は体の図鑑や、性教育の絵本などもあるため、読み聞かせ等を通して、性器の名前も、体の他の部分の名前と同じように自然と触れていけると良いでしょう。
【大切なところには名前がある】
2歳頃までは、外面的な特徴(外性器)の名前から伝え、幼児期になるにつれ、見えない体の機能も教えていけると良いです。幼児期の子どもは、まだ目に見えないものを理解することが難しい年齢です。そのため、絵本や図鑑を使うことは、理解を促すことにも繋がります。
胃や腸の名前や働きを説明するのと同じように、「ここは子宮だね。お腹の中で赤ちゃんが育つ場所だね」、「ここは精巣(睾丸)だよ。赤ちゃんのもとが作られるところだよ」と、性器の名前、機能についても教えていけると良いです。
保育園等の食育や衛生講習の時間を見ていると、子ども達は消化機能や、排泄機能について、正確に理解していることが感じられます。性の機能についてもタブー視せず、子どもの興味、理解度に合わせて、伝えていけることが望ましいです。
「身体ってこんなにいろんな働きがあるんだ!」
という気付きが、自分の身体を大切にする心にも繋がります。
参考文献
- 『【改訂版】国際セクシュアリティ教育ガイダンス 科学的根拠に基づいたアプローチ』 ユネスコ編 訳 浅井春夫、艮 香織、田代美恵子、福田和子、渡辺大輔 2020
- 『乳幼児期の性教育ハンドブック』 かもがわ出版 著 浅井 春夫 2021
- 『親子で話そう! 性教育』 朝日新聞出版 著 浅井春夫、 艮 香織 2020
- 『子どもを守る言葉「同意」って何? YES、NOは自分が決める! 』 集英社 著レイチェル・ブライアン、訳 中井 はるの 2020