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おやこのひきだし

2020.11.09

パタニティハラスメントとは?パタハラを受けた場合の解決策を紹介

現在の日本では、60%以上の家庭が共働きです。「イクメン」という言葉があるように、男性が育児にも積極的に協力することが当たり前になりつつありますが、男性が育児のための制度を利用しようとすると、職場で嫌がらせを受けることもあるようです。

この記事では、パタニティハラスメントについて詳しく解説いたします。また、パタハラを受けた場合の解決策についてもご紹介いたしますので、育児を分担して子育てに積極的に関わっていきたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

パタニティハラスメントとは

職場にはさまざまなハラスメントがありますが、パタニティハラスメントという言葉を知っていますか?パタニティ(paternity)は父性という意味で、ハラスメント(harassment)は嫌がらせという意味です。つまりパタニティハラスメントとは、男性社員が育児のため、時短勤務などの育児制度を利用しようとしたときに受ける嫌がらせのことです。
男性が育児に積極的に参加するため、育児休業などの制度を利用したくても、利用しづらい雰囲気の職場もあります。妊娠・出産や育児に関するハラスメントにはマタニティハラスメントという言葉もありますが、マタハラは女性に対するハラスメント、パタハラは男性に対するハラスメントです。

男性の育児休業取得状況

育児休業制度を利用して子育てに積極的に関わりたくても、パタハラに遭って諦めてしまう人もいます。育児休業を取得している男性はどのくらいの割合なのでしょう?男性の育児休業取得状況について見ていきましょう。

育児休業を取得できる条件とは

まずは育児休業を取れるのは、どのような人か確認しておきましょう。育児休業は次の条件を満たせば男性でも女性でも、性別に関わらず取得できます。

  • 1歳未満の赤ちゃんを育てている
  • 今の会社で1年以上働いている
  • 子どもが16ヵ月になる日の前日までに雇用契約がなくなることが明らかでない

これらの条件を満たせば就業規則に規定がなくても申し出ることによって取得可能です。育児休業は基本的に子どもが満1歳になるまでの間、希望する期間、取得できます。ただし、保育所などに入れないなどの理由がある場合は16ヵ月まで延長が可能です。また、16ヵ月になっても保育所に入れないなどの理由があれば2歳になるまで育児休業を取得できます。その場合は、2歳になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないことが条件です。

男性の育児休業取得率

厚生労働省が令和元年7月に発表した「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取り組みについて」によると、平成 30 年度の育児休業取得率は、女性が82.8 %、男性が6.16 %です。 女性はここ数年同じくらいの割合が続いています。男性は微増を続けていますが、低水準であることには変わりありません。

【参考】厚生労働省「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について

男性の育児休業取得期間は?

平成27年度の雇用均等基本調査によると、育児休業の取得期間は女性の9割が6ヵ月以上であるのに対し、男性は 5 日未満が56.9 %、5 日〜2 週間未満が17.8 %で、8 割以上が1 ヵ月未満しか取得していません。 育児休業を取得できたとしても、わずかな期間しか取得できない人が大多数のようです。

【参考】厚生労働省「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について

男性が育児休業を取得しにくい理由

育児休業を利用しなかった理由について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが調査しています。男性・正社員に多い回答は、「業務が繁忙で職場の人出が不足していた」が27.8%、「会社で育児休業制度が整備されていなかった」が27.5%、「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」が25.4%です。育児休業制度が整備されていない会社も多いみたいですが、取得しづらい雰囲気のため、諦めてしまう人も多いようです。

【参考】三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成29年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書 労働者アンケート調査結果

パタハラの例

パタハラとは、実際にどのようなハラスメントなのでしょう。パタハラにありがちな例を挙げますので、次のような嫌がらせを受けたときは、相談窓口などへの相談を検討しましょう。

  • 男性社員が育児休業を申請したら、他の社員に迷惑がかかるといって断られた
  • 保育園の送り迎えのために時短勤務を申請したら、嫌がらせを受けたり降格させられたりした
  • 育児は女性がするものだから、奥さんに任せろと言われた
  • 育児休業が明けたら異動や降格など、不利益な人事がおこなわれた

パタハラが起こる原因

育児に積極的に参加したくても、パタハラに遭って育休などの制度を利用することを断念する人もいます。パタハラはなぜ起こるのか、原因を探っていきましょう。

上司・同僚の理解や協力が不足している

日本労働組合総連合会が「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)に関する調査」をおこなっています。その中で「職場で『パタハラ』が起こる原因はなんだと思うか」という質問に対し、最も多い回答が「上司や同僚の理解不足・協力不足」 でした。職場の男性社員が育児休業を取ることで労働力が減るため、できるだけ休みを取らせたくないという気持ちがパタハラにつながってしまうのです。

性役割意識がある

男性も子育てしやすい社会を作るため、2009年に育児・介護休業法が改正されました。「パパ・ママ育休プラス」制度の導入や、厚生労働省の委託事業「イクメンプロジェクト」の発足など、男性が育児休業を取得しやすくなるための取り組みもおこなわれています。

しかし、「男は仕事、女は家庭を守る」という古い価値観を持つ人はいまだ多く、パタハラを招く原因になっています。 「育児は妻に任せておけばいい」という考え方が無意識のうちに根付いていることがパタハラの原因になっています。

パタハラを防ぐためには

育児休業の取得には、男性も女性も関係ありません。子育て中の方が利用できる制度は育児介護休業法に制定されており、労働者が利用を申し出たことで不利益な取り扱いをしてはならないと規定されています。

しかし、男性が育児休業を取ることは、まだ一般的とはいえないため、法律で認められているといっても取りづらいのが現実です。パタハラを防ぐためにも、職場で理解を得られるように、次のことを心得ておきましょう。

なぜ育児休業を取得したいか説明する

育児休業を申請する前に、なぜ育児休業を取得したいか具体的に説明できるようにしておきましょう。1歳になるまでの子どもを育てる従業員は、男女に関係なく育児休業を取れます。たとえ妻が専業主婦や、育児休業中であっても夫は取得できるのです。

しかし、妻が育児できるなら、夫まで育児休業を取る必要はないという考えが依然として多いのが現実です。 そのため「なぜ育児休業が必要か」ということを具体的に説明できるようになっておくことで、育休の必要性を理解してもらいやすくなるでしょう。 上司だけでなく、周りの人にも説明して理解を得ておきましょう。

早めに相談する

育児休業中は、誰か他の人に仕事を補ってもらわなくてはなりません。育児休業の申請が直前では、十分に引き継ぎができないでしょう。ただでさえ、休んでいる間は周りにしわよせがいくのに、引き継ぎが十分でなければ、迷惑がられても仕方がありません。育児休業の取得は当然の権利だとしても、できるだけ周りに迷惑をかけないための配慮が必要です。

育児休業は少なくとも1ヵ月前までには申請が必要ですが、なるべく早く相談しておく ことで引き継ぎに十分な時間を確保でき、周りへの負担を最小限に抑えられます。

日頃から信頼関係を築いておく

日頃から職場の人とのコミュニケーションを心がけ、仕事ぶりもまじめであれば、周りの人たちに信頼されます。信頼関係が築けていれば、サポートが必要なときは助けてもらえるものです。 職場で良好な人間関係を築いておくことで、育児休業を取得するときも周りが気持ちよくサポートしてくれるでしょう。

周りが困らないように引継書を作成しておく

育児休業の取得が決まったら、誰にどの仕事を引き継ぐか、上司と相談して決めます。休んでいる間に他の人が困らないよう引継書を作成し、どこに何があるかわかるように整理しておきましょう。 休んでいる間に迷惑をかけないよう、できるだけ配慮しておくことで、職場の人の反感を買わずにすみます。

周りには感謝の気持ちを伝える

育児休業は「育児・介護休業法」で定められている制度なので、誰でも取得できるものですが、休んでいる間は他の人に仕事を引き継いでもらわなくてはなりません。育休を取得することで周りの人に負担をかけてしまうことは意識しておきましょう。取得するのは当然の権利という態度を取っていては、反感を買ってしまうこともあるでしょう。育休を取得する前に「ご迷惑をおかけします」という一言があるのとないのとでは大違いです。 また、育休から復帰したときは「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えましょう。

こういったことを意識せずとも育児休暇を取得できるのが社会の目指す姿ではありますが、現時点での社会においてはそのようになっていないのが現実とも言えます。周囲の人に感謝の気持ちを伝えるなど、復帰後も気持ちよく迎えてもらうことを考えて行動するのがよいでしょう。

パタハラを受けたときの対処法

パタハラを受けないように配慮したとしても、不当な扱いを受ける可能性がゼロではありません。もしトラブルに発展した場合の相談先をご紹介いたします。

社内の相談窓口に相談する

パタハラの防止は企業の義務なので、社内に相談窓口が設置されている可能性があります。 パタハラを受けたときは、社内の相談窓口に相談して、適切な処置をお願いしましょう。もし社内で相談しても状況が変わらない場合は、外部機関に相談しましょう。

都道府県労働局の雇用均等(部)室に相談する

社内で相談できない場合は、都道府県労働局の雇用均等(部)室に相談しましょう。プライバシー厳守で、匿名でも相談に乗ってもらえます。こちらに相談すれば、会社に対して法律や制度を説明してもらえます。 また、行政指導をおこなってくれるケースもあります ので、解決に向けて力になってもらえるでしょう。

弁護士に相談する

弁護士に相談すれば、会社との間に入って交渉してもらえるため、一人で交渉するよりも負担が軽くなるでしょう。たとえ交渉が解決に結びつかなくても、法的手続きの代理人になってもらえます。

まとめ

男性の育児休業取得率は少しずつ上昇中ですが、男性が育児休業を取得することは、まだまだ一般的とはいえません。性別に関係なく育児休業を取ることは認められていますが、前例がないなど取得しにくい職場もあるでしょう。

パタハラを防いで育児休業や時短勤務などの制度を利用するためには、会社の都合も考えてしっかりと準備しておく必要があります。 上司には早めに相談し、周りの人たちには育休を取得する必要性を説明しておきましょう。育休を取得することで、できるだけ迷惑をかけないように配慮しておけば、周りの理解を得られやすくなります。しかし、パタハラに遭わないための努力をしても、嫌がらせや不利益な人事がおこなわれた場合は、社内や社外の相談機関に相談してください。


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