保育士のひきだし

2020.10.07

中卒者でも保育士になれる？保育士に必要な資格やお仕事事情を紹介

保育士として働きたいという夢を持ちながらも、「自分は高校を出ていないから、保育士にはなれないのでは？」と思っている方に向けた記事です。中卒の場合でも保育士を目指すことは可能なのか？結論から言いますと、中卒でも保育士は目指せます。

本記事では、中卒者が保育士になるために必要な手順・資格などについて詳しく紹介していきます。さらに、中卒者が保育士として働き始めた後のリアルなお仕事事情についてもご紹介いたします。

中卒でも保育士になれる！資格取得に必要な実務とは？

冒頭でもお伝えしたとおり、中卒でも保育士資格を取得することは可能です。保育士試験を運営している「一般社団法人全国保育士養成協議会」によると、中卒の場合でも5年以上かつ7,200時間以上、児童福祉法第7条に基づく児童福祉施設に従事した経験があれば、保育士試験の受験資格があると定められています。それでは、具体的にどんな施設で勤務すべきなのか、実務経験のほかに必要なものはあるのか、という部分をチェックしていきましょう。

【参考】一般社団法人全国保育士養成協議会

パターン① 実務経験を積んで受験資格を得る

大学・短大・専門学校を卒業した場合は、実務経験がなくても保育士試験の受験が可能ですが、中卒の場合は一定の実務経験が必要です。それでは、保育士試験の受験資格に該当する施設をご紹介いたします。

児童福祉法第7条に基づく「児童福祉施設」で働く

「児童福祉施設」とは、主に次のような施設を指します。

保育所（利用定員20名以上）
保育所型認定こども園
幼保連携型認定こども園
児童厚生施設（児童館）
児童養護施設
助産施設
乳児院
母子生活支援施設
障害児入所施設
児童発達支援センター
児童心理治療施設
児童自立支援施設
児童家庭支援センター

中卒の場合、上記の施設にて5年以上かつ7,200時間以上勤務すれば、保育士試験の受験資格が得られます。つまり、1カ月で120時間勤務（1日6時間シフトを週5）を5年以上継続すればOKということです。「将来は保育園で働きたい」という場合は、アルバイトやパート、派遣として保育園で働けば、受験資格が手に入るだけでなく、保育士見習いとしてたくさんのことを学べます。

【参考】一般社団法人全国保育士養成協議会

特定の実務経験があればOK

児童福祉施設以外の施設に勤務した場合でも、受験資格認定(知事認定)の申請をすれば受験資格が獲得できるケースもあります。

【受験資格認定基準に該当する施設】

認可外保育施設（認証保育園、認定保育園など）
小規模保育事業（小規模認可保育所など）
幼稚園型認定こども園
地域裁量型認定こども園
幼稚園（特別支援学校幼稚部を含む）
家庭的保育事業（保育ママ等）
居宅訪問型保育事業
事業所内保育事業
放課後児童健全育成事業（学童クラブ・放課後児童クラブ・学童保育など）
一時預かり事業
へき地保育（特例保育）
小規模住居型児童養育事業（ファミリーホーム）
障害児通所支援事業（保育所訪問支援事業を除く）
一時保護施設
放課後等デイサービス（児童デイサービス）
院内保育
企業主導型保育事業など

受験資格認定は各都道府県知事が行うので、対象施設であれば必ず認定を受けられるとは限りません。上記の施設に勤務している場合、その施設が受験資格認定基準に該当するかどうかは、施設が位置する都道府県に問い合わせてください。

【参考】一般社団法人全国保育士養成協議会

パターン② 高校卒業認定試験に合格する

保育士資格の取得方法は、保育士試験を受験するだけではありません。「高等学校卒業程度認定」を取得してから、保育系の大学・短大・専門学校に通うという方法もあります。高等学校卒業程度認定を取得するには、文部科学省が行う高等学校卒業程度認定試験を受験し、合格することが必須です。高等学校卒業程度認定試験に合格すれば、「学歴が高校卒業と同等」としてみなされるので、中卒よりも進学に有利になります。

保育士資格取得にための学習方法3つ

中卒から保育士資格取得を目指す場合、どんな学習方法があるのでしょうか？ここでは、3つの学習方法の特徴やメリット・デメリットを解説します。

① 教材を買って独学で勉強をする

できるだけ費用をかけずに勉強したいなら、教材を買って独学で勉強するのがおすすめです。通信教材やスクールとは違い、月額料金が発生しないので、コストを抑えながら勉強できます。ただ、教材選びを自分でしなければならないこと、そして実技や演習などのスキルが自己流になってしまうというデメリットもあります。とはいえ、一時的に保育関係のセミナーに通ったり、実技試験に向けてピアノ教室やアトリエに通ったりすればその部分も解消できるでしょう。

② 通信教育で勉強をする

通信教育では、一定の料金さえ支払えばオンライン上で講義が受けられます。保育士試験に向けた教材が渡されるので、自分で教材を選ぶ手間もありません。スクールに足を運ばずとも、自宅で勉強できるので、自分のペースで勉強をしたい方にはおすすめです。

③ 保育士資格取得の対策スクールに通う

一人で勉強するのが苦手な方は、保育士資格取得に向けた専門的なスクールに通うという方法がおすすめです。スクールでは、保育士資格取得を目指す生徒と一緒に授業を受けるので、モチベーションが上がるでしょう。ただ、独学や通信よりも費用がかかるので、時間とお金に余裕を持ってから始めましょう。

保育士試験の内容！試験に必要なスキルとは？

国家試験である「保育士試験」。保育士試験の内容は主に「筆記試験」と「実技試験」の2つに分かれています。ここでは、保育士試験の具体的な内容や、必要なスキルをご紹介いたします。

筆記試験

筆記試験では、主に「保育原理」「教育原理」などの専門分野9科目の中から160問出題されます。

【筆記試験の内容】

保育原理
教育原理及び社会的養護
子ども家庭福祉
社会福祉
保育の心理学
子どもの保健
子どもの食と栄養
保育実習理論

マークシート形式で、100点満点のうち60点以上を取れば合格です。

【参考】一般社団法人全国保育士養成協議会

実技試験

実技試験では音楽表現・造形表現・言語表現の中から2つを選択します。

音楽表現に関する技術
造形表現に関する技術
言語表現に関する技術

音楽表現ではピアノ・ギター・アコーディオンなどの楽器を用いて童謡や子ども向けの歌の弾き語りをします。造形表現では絵画、言語表現では素話や絵本の読み聞かせをします。実技試験はそれぞれ50点満点です。ただ、合格ラインは30点以上なので、得意な表現方法を選んで着実に点数を上げていきましょう。

【参考】一般社団法人全国保育士養成協議会

保育士試験合格後の流れ

登録機関から「保育士登録手引き」を取り寄せる

保育士試験に合格したら、「保育士登録」が必要です。まず都道府県知事から委託された保育士登録機関「登録事務処理センター（社会福祉法人日本保育教会）」に問い合わせて、「保育士登録の手引き」を取り寄せましょう。保育士登録の手引きとは、申請書や記入例などがセットになった手引きのことです。取り寄せ方法は、日本郵便による郵送のみです。

登録料を郵便局で支払う

登録事務処理センターから保育士登録の手引きが手元に届いたら、手数料を支払いましょう。手数料は登録一人あたり4,200円です。手引きの中に同封されている専用の払い込み用紙に氏名と住所を記入したら、郵便局の窓口にて払い込み手続きをしてください。ATMでの払い込みはできないので要注意です。

【参考】登録事務処理センター（社会福祉法人日本保育教会）

必要書類を提出する

必要書類	書類の内容
保育士登録申請書	・手引きに同封されている申請書・氏名、住所、電話番号やそのほか必要事項を記入する
振替払込受付証明書	・手数料支払いの際に郵便局でもらう証明書・保育士登録申請書の裏面にのり付けする
・保母資格証明書・指定保育士養成施設卒業証明書・保育士養成課程修了証明書・保育士試験合格通知書・保育士試験一部科目合格証明書（平成15年度まで交付）・保育士試験一部科目合格通知書（平成16年度より交付）	・左のうちいずれか1つを提出・コピーではなく原本を提出する

必要書類は登録事務処理センターへ提出します。住所と宛名は以下の通りです。

〒102-0083 東京都千代田区麹町1-6-2 アーバンネット麹町ビル6階　登録事務処理センター

郵送する際は、そのままポストに入れないように注意してください。不着等の郵便事故が起こる可能性もありますので、必ず郵便局の窓口にて「簡易書留郵便」として郵送してもらいましょう。

【参考】登録事務処理センター（社会福祉法人日本保育教会）

保育士証が届いて完了

申請書類を提出した後は、都道府県による審査を経て、登録事務処理センターから簡易書留郵便が郵送にて届きます。提出から保育士証交付までの期間は2カ月程度です。3カ月以上経過しても交付されない場合は、書留郵便物受領書と振替払込請求書兼受領証をそろえてから問い合わせてみましょう。

【参考】登録事務処理センター（社会福祉法人日本保育教会）

中卒保育士のお仕事事情！採用状況はどう？

中卒から保育士を目指す人の中には、「中卒の保育士でも雇ってもらえるのかな？」「就職のときは学歴が重視されるのかな？」と不安に思っている方もいるでしょう。そこで今回は、中卒から保育士になった方のお仕事事情についてまとめてみました。採用状況や、就職にまつわる実情をチェックしていきましょう。

実務経験が豊富なら即戦力として歓迎される

結論から言うと、保育業界は未経験者でも比較的に採用されやすい業界です。近年、保育業界は深刻な保育士不足という問題を抱えています。多くの保育園が職員を募集している状況なのです。中卒から保育士になるためには、保育施設にて5年以上の実務経験が必須です。つまり、中卒保育士は現場経験が豊富な人材として重宝される存在と言えるでしょう。

学歴は関係ない

保育士に求められることは、学歴ではありません。就職の際に、面接官が重視しているのは、豊富な専門知識と経験、そして人柄のよさです。いくら学歴が高くても、モラルにかけていたり、保育への熱意が足りていなかったりすると、面接で落とされる可能性があります。面接の際は、あなたの保育への熱意やあなた自身の長所を存分にアピールしましょう。