保育士のひきだし
2020.08.05
リトミック保育とは?保育園で取り入れられるリトミックやリズム遊びも紹介
最近、保育士や保護者の方から注目されている「リトミック保育」。本記事ではリトミック保育の具体的な内容や効果をご紹介いたします。また、実際に保育園などの現場で取り入れられるリトミックやリズム遊びを年齢別にピックアップしていきます。ぜひ参考にしてください。
リトミックとは「音楽×身体表現」
リトミックとは、音楽に合わせて体を動かす音楽教育方法です。1800年代後半から1900年代前半にかけて活躍したスイスの作曲家兼教育家エミール・ジャック=ダルクローズ博士によって考案されました。その後、世界各国へと知れ渡り、やがて日本でも保育園や幼稚園の現場で取り入れられるようになりました。
タオルやフラフープ、ボールなどの身の回りの道具を使ったり、言葉遊びやまねっこを取り入れたりすることで、表現の幅は大きく広がります。音楽と身体表現を組み合わせたリトミックは、今後も保育業界においてますます注目が集まるでしょう。
【参考】リトミック研究センター
保育園にリトミックを取り入れるメリット
世界の保育・教育現場で取り入れられているリトミック。なぜ、リトミックはここまで支持されているのでしょうか。それは、保育する上で次のようなメリットがあるからです。
- 音楽を通じて子どもの感性を養う
- 想像力・集中力・思考力を育む
- 音楽を聞く・歌う楽しさを分かち合う
- 体で表現することの楽しさを知ってもらう
- ピアノや楽器などに親しみを持ってもらう
それでは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
音楽を通じて子どもの感性を養う
リトミックは「音楽」をベースにして、子どもの感性を養う教育方法です。ピアノや楽器の音を聞き分けたり、歌や踊りを通じてリズム感を養うことができます。年齢が上がれば、歌詞や曲調から「楽しい曲」「悲しい曲」「面白い曲」といった“印象”も感じ取れるようになるでしょう。
想像力・集中力・思考力を育む
リトミックは、子どもの想像力・集中力・思考力を育みます。音やリズムに合わせて「動物のまねっこ遊び」を例に挙げましょう。リトミック講師が子どもに「高い音は○○(動物)のまね」「低い音は○○(動物)のまね」とルールを決めてゲームを進めます。中には、音やリズムを聞いて「高い音は鳥さんの鳴き声みたい」「低い音はくまさんの足音かな?」と動物を連想する子どももいるでしょう。またゲームでは、音やリズムを集中して聴き判断する能力、「さっきは高い音だったから、次は低い音かな?」という思考力も重要です。つまり、リトミックはさまざまな側面において子どもに有効な影響を与える教育法なのです。
友だちと楽しさを分かち合う
リトミックでは、子ども同士が音楽を聴くことや、歌うことの楽しさを分かち合うことができます。リトミックの活動では、集団でできるゲームや遊びを取り入れています。子ども同士がペアを組んでゲームをすることもありますし、子ども全員で手をつないで動くこともあります。周りの子どもと一緒に活動をしていくことで、友情が芽生え、連帯感を意識できるのも大きなメリットです。
体で表現することの楽しさを知ってもらう
決まった動きだけを模倣する通常のダンスとは違い、リトミックでは子どもが感じたことを自由に表現します。音やリズム、曲の雰囲気などを感じ取って、走ったり踊ったりする中で、体で表現することの楽しさを味わえます。
ピアノや楽器などに親しみを持ってもらう
リトミックでは、ピアノやタンバリン、鈴やカスタネットなどの楽器を使います。子どもがさまざまな楽器に触れていく中で、楽器によって音質や扱い方が違うことに気付いたり、音を奏でる楽しさを味わうことができるのも大きなポイントです。リトミックを通じて音楽が好きになったという子どもも少なくありません。できるだけ多くの楽器と触れるように促し、子どもの感性や芸術性が養っていきましょう。
保育園でリトミックをするときに資格は必要?
リトミックに興味のある保育士の中には、「リトミックを保育に取り入れたい」「何も資格を持っていなくても教えていいの?」と思う人もいるでしょう。保育園でリトミックを教える際に資格が必要なのか、またどんなリトミックにまつわる資格にはどんなものがあるのか、まとめて解説します。
基本的に資格がなくても指導できる
リトミックにまつわる資格を持っていなくても、保育園で保育士が子どもにリトミックを教えることは可能です。リトミックの講習で学んだ内容をそのまま取り入れてもよいですし、リトミックの知識があるのなら、自分で活動内容を考えて実践するのもよいでしょう。ただ、基本的にリトミックはピアノを使うため、ピアノの技術は必要です。リトミックでは、講師がピアノを弾きながら子どもに声をかけたり、即興で伴奏したりするシーンが多々あります。保育でリトミックを取り入れたい保育士は、まずはピアノのスキルアップから始めていきましょう。
専門性を身に付けたいなら民間資格取得がおすすめ
専門性を身に付けたい方は、民間資格を取得するのをおすすめします。リトミックにまつわる民間資格が取得できる機関は、次の3つです。
- リトミック研究センター
- 国立音楽院
- リトピュア
それぞれの特徴や、資格取得に必要な費用は以下の通りです。
団体 |
資格 |
特徴 |
期間 |
料金 |
|
・ディプロマA資格 ・ディプロマB資格 ・初級/中級/上級指導資格ほか |
・教員養成校に通うor月例/研修会に参加 |
・養成校の場合:週2回で2年間(平日) ・月例研修会の場合:毎月1回(3時間)を4年間(休日) |
・養成校の場合: 入学金5万4000円 年間授業料32万4000円〜37万8000円 教材費5万5350円 ・月例研修会の場合: 入会金1万1000円(初年度のみ) 本部会費7,700円(年間) 受講料 3万800円(年間) 教材費1万2430円 |
・幼児リトミック指導員 ・ベビーリトミック指導員 ・英語リトミック指導員ほか |
・1985年に日本で初めて幼児リトミックを開講 ・昼間部・夜間部 土・日コース |
・2年制 |
・昼間部:入学金20万 授業料54万 設備費22万 実技費16万 ・夜間部:入学金15万 授業料44万 設備費17万 実技費16万 |
|
・リトミックジュニアインストラクター(RJI)資格ほか |
・資格取得サポートだけでなく開業サポートも受けられる ・通信+実技 |
開業講座受講~開業までは約6カ月 |
・リトピュア加盟教室 開業講座 受講料:75万 ・加盟金20万 ・加盟月会費5万(/月) |
団体によって、資格やカリキュラム、学習スタイルは異なります。それぞれを比較して、あなたに合ったところを選んでください。
保育園でリトミックを指導するときのポイント
保育園でリトミックを指導するときは、主に3つのポイントがあります。
- 年齢に合った内容を選ぶ
- 見本を見せる
- ピアノや楽器を使う
それぞれのポイントについて解説していきます。
子どもの年齢に合った内容を選ぶ
子どもの年齢によって、リトミックの活動内容は異なります。例えば、0~1歳の子どもには、ゲーム性のある遊びは難しいため、簡単な楽器を使った活動や、保育士(または保護者の方)と一緒に楽しめる活動が向いているでしょう。3~5歳にもなれば、いくつかルールを定めた活動や、自由に表現する活動にも取り組めます。子どもが無理なく楽しめるように、子ども年齢に合った活動を選びましょう。
見本を見せる
リトミックに慣れていない子どもの場合、「自由に動いて」と言われてもどうすればよいか分からず固まってしまう子どももいるでしょう。そんな子どものためにも、まずは保育士が見本の動きを見せましょう。子どもが慣れてきたら、通常の動きにアレンジを加えたりして、「こういう動き方もあるよ」とそれとなく教えることで、子どもの表現の幅が広がります。
ピアノや楽器をさかんに使う
リトミックでは既存の音源を使うのではなく、極力生演奏を心がけましょう。目の前で奏でる音楽だからこそ、価値があるのです。リトミックを保育で取り入れる前に、即興演奏のスキルも身に付けておきましょう。
保育園でできるリトミックとリズム遊びを年齢ごとに紹介
保育園で実践できるリトミックの活動を年齢ごとにご紹介いたします。
0~1歳向けのリトミック・リズム遊び
0~1歳は保育士(または保護者の方)と一緒に取り組む活動がメインです。
大きなくりの木の下で
童謡の「大きなくりの木の下で」に合わせて体を動かすリトミックです。動画のような振り付けをしてもよいのですが、今回は保育士(または保護者の方)と子どもの「触れ合い遊び」をメインにした活動をご紹介します。
- 大人が子どもを膝に乗せる
- おおきなくりの…大人が両腕で「丸」のジェスチャーをする
- 木の…子どもの頭をタッチ
- 下…子どもの肩をタッチ
- で…子どもの膝をこちょこちょこすぐる
- あなたと私…大人が子どもを指さしてから自分を指さす
- なかよくあそびましょ…ハグや握手をする
- ②~⑤を繰り返す
バスにのって
保育士(または保護者の方)が子どもを膝の上に乗せて、「バスにのって」の歌に合わせて動く活動です。
- バスにのってゆられてる…運転するジェスチャー
- ゴーゴー!…腕を上げる
- ①~②繰り返し
- そろそろみぎへまがります…運転するジェスチャー
- 3,2,1…指でカウントダウン
- ウワー!…わざと転ぶ
わざと動きを大きくしたり、転ぶときに「ドカーン」と擬音を使ったりすると、さらに盛り上がります。
2~3歳向けのリトミック・リズム遊び
2~3歳は簡単な動きが覚えられるようになるため、簡単な動きを取り入れた活動がメインになります。
あくしゅでこんにちは
- てくてく てくてく…歩く
- あるいてきて…握手の相手を見つける
- あくしゅでこんにちは…握手をする
- ごきげん いかが…相手と向かい合い、肩をたたき合う
友だちと仲よくなるきっかけにもなります。できるだけ違う相手と組むように促しましょう。
もりのどうぶつさん
リトミックの中でもさかんに取り入れられる「模倣」をテーマにした活動です。歌がなく、ピアノの音やリズムを聴いて、それに合った動物の真似をします。保育士やリトミック指導員は、それぞれの動物を連想させるような音やメロディーを奏で、子どもの想像力を引き出しましょう。
4~5歳向けのリトミック・リズム遊び
4~5歳児には、想像力や表現力、集中力を高めるような活動がメインになります。
うみであそぼう
「水をパシャパシャする」「海で泳ぐ」「砂浜が熱い」という音やリズムに合わせて、体を動かす活動です。音を聴き分ける「判断力」が養われるほか、自己表現も身に付きます。
スカーフを使ったリトミック
ピアノの音楽に合わせて、スカーフを上に投げ、前のサークルに移動してスカーフをキャッチするという、高度な内容です。就学前の5歳児クラスにおすすめです。
まとめ
リトミックでは、子どもの感性や表現力だけでなく、想像力・集中力・思考力も育む音楽教育法です。今回ご紹介したリトミックの活動内容や、指導のコツを参考にして、ぜひ日常の保育に取り入れてみてください。より専門性を身に付けたい方は、各団体が実施している資格取得コースをチェックしてみましょう。