保育士のひきだし
2020.07.13
乳児の室内遊びを紹介。ねらいと室内で簡単にできる運動・ゲームを紹介
保育園では0歳、1歳、2歳までが乳児クラスです。この時期の子どもは保育士の声や動き、音や物の感触などを楽しみながら、さまざまな遊びに触れ合います。本記事では乳児の室内遊びのねらいと乳児たちが楽しめそうな室内遊び(体を動かす遊びやゲームなど)をご紹介いたします。
保育園乳児の室内遊びのねらい!年齢別に紹介
0~2歳児は成長が著しく、発達の「基盤」が作られる大切な時期です。室内遊びはこの時期の子どもにどのような意義をもたらしてくれるのでしょうか?乳児の室内遊びのねらいについて、0歳、1歳、2歳の年齢別に分けて解説します。
0歳児のねらい
0歳児の室内遊びの大きなねらいは、 保育者との愛着関係形成や身体の発達、五感の刺激です。
- 保育者とスキンシップを取る中で、愛着関係を形成していく
- 這う、立つ、つかむ、引っ張るなど積極的に体を十分に動かす楽しさを味わう
- おもちゃや手遊び歌、童謡を通して五感を育む
乳児クラスの中でも、0歳児は特に成長が著しい時期です。ハイハイやつかまり立ちなど、昨日できなかったことがいつの間にかできるようになります。しかも0歳児は主に室内での保育が中心となるため 「いかに室内での活動量を増やし成長を促せるか」という部分が重要になります。
1歳児のねらい
1歳児の室内遊びのねらいは、 全身や手先の運動、言葉の発達です。
- 歩く、走る、投げる、転がるなど全身を動かす
- おもちゃ遊びをお通して手先を動かす楽しさを味わう
- 保育者との言葉のやりとりを通じて言葉を学ぶ
1歳児になると歩いたり走ったりできるようになるため、活動範囲も広がります。さらに「ワンワン」「ママ」など簡単な言葉も話せるようになります。そのため室内遊びでは、 運動やゲーム、おもちゃ遊びや歌などを通じて、「身体活動」「言語」の領域を重点的に刺激することが大切です。
2歳児のねらい
2歳児の室内遊びのねらいは、 他者とのコミュニケーションや模倣です。
- 友だちに関心を抱き、一緒に遊ぶ楽しさを味わう
- ごっこ遊びの中で日常生活の体験を反芻したり、誰かになりきったりする
- 保育者や友だちとの会話や集団遊びを通してコミュニケーション能力を身に付ける
2歳児になると、情緒面においてもかなり成長が見られます。自我が芽生えてくると同時に、友だちの気持ちが理解できるようになり、葛藤が生まれる頃です。 室内遊びの中で、子どもが自分の気持ちを相手に伝えたり、友だちと遊ぶ楽しさを味わったりできるよう、保育士は仲介者となりサポートしていきましょう。
乳児保育におすすめの室内遊び4選【運動編】
室内遊びと言っても種類はさまざま。ここからは、0~2歳児におすすめの室内遊びを運動、ゲーム、わらべうたの3つのカテゴリーに分けてご紹介いたします。まずは、室内でできる運動遊びを4つピックアップします。
① マットで上下にハイハイ
0~1歳児向けの定番の室内遊びです。
- ぐるぐると丸めたマットの上に、もう1枚のマットをのせて坂を作る
- 保育者はマットの脇に座ってマットを固定
- 子どもがハイハイして坂を上ったり下ったりする
0歳児の場合は坂をなだらかに、1歳児の場合は坂を急にして、年齢ごとに難易度を上げていきましょう。また、子どもがマットから落ちたときのことを考えて、 マットの周りに別のマットや布団などを敷いておくのがおすすめです。
② ボールプールで遊ぶ
たくさんの保育現場で愛用されているボールプール。サークルの中にボールを入れるだけですので簡単に準備できます。ボールはやわらかいため、乳児が触れても安全です。ボールの上に寝そべったり、ボールを投げたり、さまざまな動作も身に付きます。
2歳児が遊ぶ場合は、 ボールプールの中に宝物を仕込んで宝さがしをしたり、「〇色のボールを多く集めた人が勝ち」とルールを決めて遊んだりすると盛り上がるでしょう。
③ ロープを使った運動遊び
ロープや縄が1本あれば、数種類の遊びが楽しめます。
- ヘビさんジャンプ…ロープを床に置き、子どもがジャンプして飛び越える
- 1本橋…真っ直ぐ伸ばした1本のロープを床において、その上を子どもが歩く
- ぐねぐね道…ぐねぐねと曲がったロープの上を子どもが歩く
- ロープくぐり…ロープの両端を保育者が持って、上にあげる。その下を子どもたちがくぐる
2歳児なら「電車ごっこ」や「ヘビにょろにょろ」などもおすすめです。
④ フラフープ遊び
フラフープの輪の中をくぐる遊びです。0~1歳の場合は、保育士がフラフープを持って、子どもがくぐるように促します。2歳児の場合は、複数人が輪になって手を繋ぎ、フラフープをくぐって隣の子どもへ渡す「フラフープ送り」がぴったりです。 十分なスペースがあるなら、フラフープを転がして遊ぶのもおすすめです。
乳児保育におすすめの室内遊び4選【ゲーム編】
続いては、0~2歳児向けの室内ゲームを4つピックアップします。準備が簡単なものばかりですので、すぐに実践できますよ。主活動のほか、梅雨の時期や延長保育の時間にも生かしてみてくださいね。
① 風船集めゲーム
風船を集めるだけのシンプルなゲーム遊びですが、風船をつかんだり、投げたり、蹴ったりするなど、さまざまな動作が促せます。風船と手のひらがこすれる音や、ふわふわと宙を舞う様子に、0歳児さんも大興奮。 1~2歳児の場合、ボックスや段ボール箱を用意して、風船をそこに集めるように声をかけると、よりゲームらしさが出ます。
② 紙コップでボーリング
並べた紙コップ目がけて、やわらかいボールを投げる遊びです。実際のボーリングのピンのように並べてもよいですが、ピラミッド型に並べると倒れたときに迫力が出るためおすすめです。 紙コップに動物のイラストを描いたり、画用紙やマスキングテープで装飾したりすると、華やかさが出ますよ。
③ 新聞紙の玉入れゲーム
丸めた新聞紙をかごやビニール袋に入れて遊ぶゲームです。 0歳児にはまだルールが分からないかもしれませんが、1歳児なら「お片付け」の要領で遊べるでしょう。2歳児なら、簡単なルールの遊びができるため、2つのチームに分けて遊んでも楽しめます。
④ 画用紙でできる!絵合わせカードゲーム
1歳後半~2歳児向けのカードゲームです。準備するものは画用紙とカラーペンとはさみだけです。
- 画用紙にカラーペンで動物や果物、乗り物の絵を描く(10枚程度)
- 絵が描かれた画用紙を半分に切る
- 切った画用紙をシャッフルして床に置く
- 子どもはイラストがつながる画用紙を見つけ出す
「絵合わせカードを多く見つけた人が勝ち」とルールを決めると、さらに楽しめるでしょう。
乳児保育におすすめの室内遊び3選【わらべうた編】
0~2歳児向けの手遊び歌やわらべうたを3つピックアップします。
① うえから したから
布やスカーフなどを使ったわらべうたです。
うえからしたから
こい こい こい
うえから したから おおかぜこい
こい こい こい
「こい こい こい」のところで布を揺らしたり、子どもにかぶせたりして遊びます。
② おふねが ぎっちらこ
子どもを膝に乗せた触れ合い遊びです。
おふねが ぎっちらこ
ぎっちらこ ぎっちらこ
おふねが ぎっちらこ
ぎっちらこ ぎっちらこ
歌いながら体を前後に揺らします。 「落ちちゃう~」と声をかけて大きく揺らすと、さらに盛り上がるでしょう。
③ かみなりどんがやってきた
2歳児向けの手遊び歌です。かみなりにおへそを取られないように、体の一部を隠すゲームです。
かみなりどんがやってきた どんどこどん どんどこどん
かくさないととられるぞ どんどこどんどんどん
かくすのは おへそ
おへそだけでなく、「おみみ」「おしり」など、毎回違う部分を隠すように声をかけましょう。
乳児保育で室内遊びをする際の注意点
保育園で0~2歳児が室内遊びをする際に、気を付けるべきポイントを4つ取り上げていきます。
ケガや誤飲がないように環境を整える
0~1歳児は危機管理能力が発達途中で、歩行も安定していないため、ケガや誤飲がないように、保育室の環境を整えることが大切です。 使わないおもちゃや、子どもがぶつかりそうないすや机、そのほか床に転がっている小さなごみなども片付けましょう。
ケンカがないよう子ども同士の接触に注意する
室内の狭い空間で遊ぶと、子ども同士の距離が近くなり、おもちゃや道具の取り合いが始まったり、噛みつきやひっかきなどのトラブルに発展したりする可能性もあります。噛みつきぐせのある子どもや、トラブルが多い子どもには特に目を光らせておきましょう。
子ども同士の距離が近くなりすぎないよう、遊ぶスペースを広げたり、仕切りを使って空間を区切ったりするのもポイントです。
活動量や季節に合わせた室温に設定
室内遊びでも、活動量が増えれば子どもたちも汗をかきます。そのまま何もせずに放っておくと、熱中症になることも。活動量や気温に合った温度調節を行いましょう。 活動量が多いときや夏場は、小まめにお茶を出して、子どもが水分補給をできるよう援助しましょう。
その子に合ったペースで保育を進める
同じ「乳児クラス」の子どもでも、発達のスピードは子どもによって違います。そのため、みんなと同じ室内遊びをしても、ほかの子どもと比べて体を上手く動かせなかったり、逆に簡単にできてしまったりするケースもあります。大切なのは、同じ遊びの中でも「子ども一人ひとりに合った援助をすること」です。
例えばまだハイハイを身に付けたばかりの子どもが「マットで上下にハイハイ」をする際は、マットの坂を緩やかにしたり、坂の向こう側にお気に入りのおもちゃを置いたりして、やる気を引き出します。 ほかの子どもと同じことを無理に促すのではなく、「この子はどれぐらいならできそうかな?」と子どもの発達スピードを考えて、声かけや援助をしていきましょう。
まとめ
0~2歳児向けの室内遊びをする際は、 身体運動を引き出し、五感を刺激するもの。そして他者とのコミュニケーションが楽しめる内容を選ぶことが重要です。加えて、子どもの安全に配慮しながら、一人ひとりにあった援助を心がけましょう。
【参考】
サンライズ保育士キャリアスクール「福祉教科書 ゴロ合わせでらくらく暗記!保育士完全合格要点ブック 第2版」
兵庫大学短期大学部研究集録№54 石川恵美「乳児保育における現状と課題 保育者のアンケートを手がかりに」