保育士のひきだし
2020.07.08
保育士の「家賃補助・住宅手当」を解説。園独自の手当から自治体の補助まで詳しく解説
保育士の一人暮らしをサポートするために、園独自の家賃補助制度や、自治体ごとの補助があります。本記事では、「一人暮らしがしたい」「上京して働きたい」など、一人暮らしを検討している保育士に向けて、さまざまな補助・制度をご紹介いたします。
※自治体の補助制度は首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)についてご紹介いたします。
知らなきゃ損!一人暮らしがしたい保育士向けの家賃補助
保育士向けの求人で「家賃補助あり」「住宅手当あり」などのワードを見かけたことはありませんか?保育士の給料は一般職に比べると低く、通常の給料だけでは、なかなか一人暮らしできないのが現実です。
しかし近年、保育業界では人員確保のために、「家賃補助・住宅手当」などの支援を福利厚生として取り入れられています。 これらは、給料とは別に、家賃の全額もしくは一部を保育園や自治体が負担し、保育士を支援する制度です。
ここでは「家賃補助・住宅手当」にフォーカスして、その種類や支援の内容について解説していきます。
保育園が持つ「寮・社宅」の家賃補助
保育士が保育園の所有する「寮」や「社宅」に割安で住めるという家賃補助制度です。家賃の相場は1~3万円程度。一般的に 寮や社宅は、保育園が所有もしくは契約しているため、敷金・礼金・更新料などの費用もかかりません。駅に近い場所や、保育園の近い場所に指定されることが多く、余裕を持って通勤できます。
一方で、寮や社宅に入居する場合は、「実家から勤務先が90分以上」「地方から上京する場合」などの一定の条件をクリアしなければならない場合もあります。事業所によっては、共同スペースや、交代で掃除当番があるところも。ただ、生活コストを下げられ、物件を選ぶ手間もかからないため、「すぐに一人暮らししたい」という人にはおすすめです。
【寮・社宅の家賃補助のメリット】
- 1~2万円程度の家賃で住めることもある
- 敷金・礼金・更新料などの費用がかからない
- 駅チカ、保育園に近い場所が多い
【寮・社宅の家賃補助のデメリット】
- 利用の際は条件を満たす必要がある
- トイレやお風呂が共有の場合がある
- 掃除当番などがあるケースも
保育士が借りた物件への家賃補助
保育士が自分で選んだ物件に住む場合、保育園が家賃の一部を補助するシステムです。転職サイトでは、「家賃の〇割負担、上限○万円」という条件付きの求人が多く見られます。寮や社宅とは違い、敷金・礼金・更新料がかかるため、費用を抑えたい人はデメリットに感じるかもしれません。
ただ、事業所から規定が提示されない限り、自分で自由に部屋を選べるメリットもあります。また、寮や社宅では門限があったり、友達や恋人を自宅に泊まらせたりするのが難しいのですが、この家賃補助ならその心配はありません。プライベートを自由に楽しめるでしょう。
【保育士が借りた物件への家賃補助のメリット】
- 家賃の一部を保育園が負担してくれる
- 自分で物件が選べる
- 友達や恋人、家族を自宅に招ける
【保育士が借りた物件への家賃補助のデメリット】
- 事業所によって地域や物件、不動産会社などが規定されていることも
- 家賃の全額負担にはならない
- 敷金・礼金・更新料がかかる
国からの補助!「借り上げ社宅制度」
保育士宿舎借り上げ支援事業、通称「借り上げ社宅制度」とは、国や自治体が保育事業に対して、保育士の宿舎を借り上げる際の費用を負担する制度です。簡単に言えば 「保育園側が国から補助してもらったお金で保育士の家賃を補助する」という内容です。
保育園が借り上げた社宅に保育士が住み、家賃の一部を補助してもらう点では、通常の家賃補助と大きな違いはありません。ただ、「勤務歴5~10年の常勤職員のみ」「継続利用は○年まで」と対象者が限られていたり、事業所や自治体によって条件や負担額が違ったりするため、要注意です。
また、賃借料や共益費(管理費)のみの補助で、敷金・礼金・更新料、火災費用などが自己負担となる場合もあります。とはいえ、多くの事業所はこの制度で8万2000円を上限額に掲げているため、ハイグレードな物件に入居できる可能性も高くなります。
【借り上げ社宅制度のメリット】
- 上限額が8万2000円に設定されている場合が多い
- ハイグレードな部屋に入居できる可能性も
- 家賃の負担額が1~2割に抑えられる
【借り上げ社宅制度のデメリット】
- 事業所や自治体の条件を満たす必要がある
- 敷金・礼金・更新料、火災費用などが自己負担となるケースあり
- 自分で部屋を選べない
自治体独自の住宅支援制度
「寮・社宅」「保育士が借りた物件」の家賃補助は、保育園からの援助。「借り上げ社宅制度」は国と自治体からの援助です。そして最後にご紹介するのが、自治体独自の住宅支援制度です。
対象者の条件や支援の内容は自治体によって異なりますが、 中には借り上げ社宅制度よりも充実した内容の支援を実施している自治体もあります。「通常の家賃補助よりもお得に家賃補助を受けたい」という人にはぴったりです。
【自治体独自の住宅支援制度のメリット】
- 自治体によっては借り上げ社宅制度対象外の保育士に向への家賃補助あり
- 月額最大10万円の家賃補助をする自治体も
- 雇用年数の制限なしの家賃補助が受けられる可能性あり
【自治体独自の住宅支援制度のデメリット】
- 自治体によって支援の内容が異なる
- いつ廃止されるか分からない
- 独自の制度を行う自治体が限られている
上京&一人暮らししたい保育士必見!首都圏の自治体による家賃補助一覧
首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の自治体による家賃補助の事例をご紹介いたします。地方から首都圏に上京する予定の保育士や、一人暮らししたい保育士はぜひチェックしてみてください。
東京都の家賃補助
東京都の自治体が実施している保育士向けの家賃補助制度をピックアップしてみました。今回ご紹介するのは、 「千代田区」と「足立区」です。
千代田区の家賃補助は最大13万円
【対象者】
- 認可保育園、認定こども園、認証保育園、小規模保育園ほか
- 1日6時間以上、月15日以上継続して勤務する常勤
- 保育従事者(保育士、保育補助者、栄養士、調理師、看護師ほか)
【条件】
- 平成24年以前から事業所の借り上げ宿舎に住んでいる
- 通勤が1時間半以上かかる
【家賃補助額】
- 千代田区内在住の保育士は最大月額13万円を援助
- 千代田区外に住む保育士でも最大月額8万2000円の補助
【参考】
千代田区「広報千代田 平成29年(2017年)4月20日予算特集号」
足立区の家賃補助は
【対象者】
- 足立区内の認可保育園、認定こども園、認証保育園、小規模保育園ほか
- 常勤の保育士、看護師、栄養士
【条件】
- 足立区内の借り上げ宿舎に住む保育従事者(世帯主)
【家賃補助額】
- 一戸あたり月額上限8万2000円の7/8を補助
【参考】足立区「保育士を目指すあなたをサポート!「足立区保育士等支援制度」」
神奈川県の家賃補助
神奈川県の自治体が実施している保育士向けの家賃補助制度をピックアップしてみました。今回ご紹介するのは、 「横浜市」と「藤沢市」です。
横浜市の家賃補助は6万1500円
【対象者】
- 市内の認可保育所、認定こども園、認可保育所への移行計画の承認を受けた保育室、小規模保育事業
- 市内の保育事業施設に務める常勤の保育士
- 1日6時間以上かつ月20日以上勤務していれば雇用形態は問わない
【条件】
- 事業所が指定する借り上げ宿舎に住む保育士
【家賃補助額】
- 一戸当たり月額8万2000円の3/4(6万1500円)を上限とする
藤沢市の家賃補助は6万1500円
【対象者】
- 補助金の交付対象となる保育事業所
- 常勤の保育士(保育士資格取得者)
【条件】
- 事業所が指定する借り上げ宿舎に住む保育士
- 本人または同居者が住宅手当を受けていない
【家賃補助額】
- 保育士一人当たり月額上限6万1500円(1施設5人まで)
【参考】藤沢市「藤沢市法人立保育所保育士宿舎借り上げ支援事業補助金交付要綱」
千葉県の家賃補助
千葉県の自治体が実施している保育士向けの家賃補助制度をピックアップしてみました。今回ご紹介するのは 「千葉市」です。
千葉市の家賃補助は8万2000円の3/4の額
【対象者】
- 市内に所在する保育園、認定こども園、小規模保育事業、事業所内保育事業、家庭的保育事業、企業主導型保育事業ほか
- 保育士、看護師、准看護師、保健師
- 1日6時間以上かつ月20日以上勤務していれば雇用形態は問わない
【条件】
- 事業所が指定する借り上げ宿舎に住む保育士
【家賃補助額】
- 月額8万2000円の3/4の額、残りの1/4は事業所負担
埼玉県の家賃補助
埼玉県の自治体が実施している保育士向けの家賃補助制度をピックアップしてみました。今回ご紹介するのは 「さいたま市」です。
さいたま市の家賃補助は保育園の開設時期によって違う
【対象者】
- 1日6時間以上かつ月20日以上勤務している常勤保育士
- 採用されてから10年以内
【条件】
- 事業所が指定する借り上げ宿舎に住む保育士
【家賃補助額】
- 新設園の場合、一戸当たり月額上限8万円の7/8の額
- 既設園の場合、一戸当たり月額上限8万円の13/16の額
【参考】さいたま市「保育士宿舎借り上げ支援事業を実施しています」
まとめ
保育士向けの家賃補助・住宅手当は、保育園や自治体によって、額や内容が異なります。転職の際は、 保育士の宿舎借り上げ支援を積極的に実施している地域や、支給額が高い大手の保育園がねらいめです。
一人暮らししたい保育士は、ぜひ今回ご紹介したポイントを参考に、自分に合った職場を見つけてくださいね。