保育士のひきだし
2020.05.25
保育で使える「運動遊び」を年齢別に紹介! ねらいとあわせて解説!
文部科学省の「幼児期運動指針」では、幼児はさまざまな遊びを中心にして、毎日60分以上体を動かすことが大切としています。
しかし、生活が便利になった現代社会では、子どもたちが思いきり体を動かす機会が減少しつつあります。その結果、子どもたちの基礎体力や運動能力の低下につながり、さらには、心の発達にも影響が及ぶと懸念されています。
体を動かして遊ぶ「運動遊び」は積極的に保育に取り入れましょう。運動機能が著しいスピードで発達する幼児期に運動遊びを取り入れることで、子どもたちの健やかな体と心の成長をサポートできるのです。
今回は、一日の多くの時間を保育園で過ごす子どもたちのために、早速取り入れていきたい「運動遊び」を年齢別にご紹介いたします。「運動遊び」のねらいや取り入れる際のポイントもあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
運動遊びのねらい
子どもたちが思いきり体を動かして遊ぶ場所や機会が減りつつあります。だからこそ、生活の中で積極的に運動遊びを取り入れることが大切なのです。
まずは、保育で運動遊びを取り入れるねらいを理解しましょう。
体の動かし方・コントロールする力を養う
幼児期は神経機能の発達が著しく、タイミングに合わせて体を動かしたり、力の加減をコントロールするといった能力が向上し、児童期以降の運動能力の基礎を形成するとても大切な時期です。
この、体の動かし方・コントロールする力を育むことが保育で運動遊びを取り入れるねらいのひとつです。
これらの能力は、新しい動きを習得するときや、周りの状況に合わせて的確な判断をし、予測に基づいた行動をするために重要な働きをするもので、ケガや事故などの危険から身を守るための感覚を養うことにもつながります。
瞬発力や柔軟性など身体能力を高める
早く走る、すばやく動くなどといった、子どもたちの身体能力を高めることも運動遊びを取り入れるねらいのひとつです。
身体能力は、運動経験によって差が生じてしまうものです。
積極的に運動遊びをすることにより、「行動体力」と呼ばれる、筋力・柔軟性・瞬発力・バランス・持久力・敏捷性などの体を動かす機能が自然とはぐくまれ、身体能力を高めることができます。
運動の楽しさや意欲を育てる
運動は、とても気持ちがよく楽しいものですが、身体能力が高まると、さらに楽しく、おもしろいものになっていきます。
さまざまな運動遊びを通して身体能力を高め、運動の楽しさや喜び、意欲を高めることも、保育に運動遊びを取り入れる重要なねらいです。
友だちと遊ぶことで社会性をはぐくむ
運動遊びは、社会適応力を高めるためにも重要な役割を果たします。
友だち同士でルールを守り、コミュニケーションを取り合いながら楽しく運動遊びをすることによって、協調性や社会性が培われていきます。
年齢別の運動遊び
運動遊びのねらいを理解したところで、ここからは、積極的に保育へ取り入れたいおすすめの運動遊びを年齢別にご紹介いたします。
0~1歳
0~1歳は、はいはい・たっちと、子どもの視野が広くなり、好奇心やさまざまなモノへの興味関心が芽生える時期です。タオルやボール、マットなども使って楽しく運動遊びしましょう。
床遊び
子どもを床に仰向けにして寝かせ、両足をもってやさしく前後に行ったり来たりと動かします。最初は膝を曲げてしまう子もいますが、だんだん自分でつっぱろうとし始めます。慣れてきたら、左右の動きも取り入れて遊びましょう。
タオルひっぱりっこ遊び
子どもを仰向けに寝かせ、棒状にしたタオルを子どもの目の前で揺らします。子どもが手を伸ばすのに合わせてタオルを逃がしたり、子どもがタオルをつかんだら軽い力でひっぱりっこしたりして遊びましょう。
マット運動
クルクルと丸めたマットの上に、もう1枚のマットをかけて山を作ります。横から転げ落ちることのないようしっかりと見守りながら、ハイハイで山を登ったり下りたりと繰り返して遊びましょう。
保育士が足でトンネルをつくり、下をハイハイでくぐらせたり、ボールやダンボールで障害物を加えても楽しく遊べます。
ボール遊び
保育士と子どもが向かい合って座り、ボールを転がして遊びます。ボールはやわらかい素材を使ってくださいね。バスタオルを2回ほど結んで作るタオルボールや風船を使うのもおすすめです。
なお、1歳は周囲の大人のまねを始める時期です。保育士のまねをしながら繰り返し遊んでいるうちに、子どもも上手にボールを転がして返せるようになりますよ。
2~3歳
2~3歳は、言葉の理解力がついてきて、言葉と動きのつながりが深まっていく時期です。また、3歳頃になると、簡単なルールの集団遊びや目で見て同じ動きをまねる模倣ダンスなども楽しめるようになります。
追いかけっこ
歩行と走りができるようになったら、追いかけっこがおすすめです。
「まてまて~」と言って追いかけると、子どもたちは大喜びで逃げ回り、とてもよい運動になります。
ティッシュをキャッチ
2枚重ねのティッシュを1枚ずつに分けて、息を吹きかけたりうちわで風をあてたりして空中に浮かべます。子どもたちには、ゆらゆらと変則的な動きをしながら落ちてくるティッシュをタイミングよくキャッチしてもらいましょう。慣れてきたら、使うティッシュの枚数を増やしたり、距離や高さを変えるとより楽しめます。
臨機応変に体を動かす運動遊びで、バランス感覚や瞬発力が育まれます。
クライミングタオル
保育士が丈夫なタオルの端を両手で持って、胸のあたりでしっかりと動かないように固定します。子どもがそのタオルの下端を持ち、大人の体を足場にしながらタオルをたぐり寄せてよじ登ります。
ちなみに身近にあるタオルは、さまざまな運動遊びに使える便利アイテムです。タオルを丸めてボールにしたり、バスタオルの上に子どもを乗せてソリのように引っ張ったりと、いろいろな遊びに活用してみてください。
脚ジャンプ&V字バランス
保育士は、足を大きく開いて座ります。子どもには伸ばした足にひっかからないように、ジャンプで足を飛び越えてもらいます。
飛び終えたら、今度はV字バランスのように足を上にあげ、その下を子どもにくぐってもらいましょう。
保育士も子どもと一緒に筋力トレーニングができる運動遊びです。
4~5歳
4~5歳児は、体力面・精神面ともに著しく発達する時期です。脚力や腕力、上半身の筋肉もついてくるので、全身を使って楽しめる運動遊びがよいでしょう。
また、競争心も芽生えてくるので、リレーや鬼ごっこなどの競争やチームで勝ち負けがあるような運動遊びもおすすめです。
だるまさんがころんだ
「だるまさんがころんだ」はみんなで楽しめる定番の運動遊びです。
鬼は、後ろを向いて「だ~る~ま~さ~ん~が…」と大きな声で叫びます。その間に、鬼以外の子どもたちは少しずつ鬼のもとへの近づき、鬼が「転んだっ!」と言いながら振り返ったときに、ピタッと動きを止めます。
動いてしまった子の負け。鬼の動きを予測しながら、バランス感覚や瞬発力を養える運動遊びです。
鬼ごっこ
鬼ごっこも、子どもの遊びの定番。鬼が他の子を追いかけるというシンプルなルールも魅力の運動遊びです
鬼の動きを予測しながら元気に走り回るため、持久力や瞬発力などが養えますし、ルールを守って楽しく遊ぶため、社会性も身につきます。
みんなで独自のルールを作って、オリジナルの鬼ごっこするのも楽しめますよ。
スキップリレー
チーム対抗戦のスキップリレーは、みんなで盛り上がれる運動遊びです。スキップをしながら園庭を回り、バトンをつないでゴールを目指しましょう。
スキップは片足で飛んだり、飛びながら前に進むことを意識するので、頭と体を使う動きです。全身のバランス感覚やリズム感も養えます。
新聞雑巾がけリレー
ホールや教室で運動遊びをする際には、新聞紙を使った雑巾がけリレーもおすすめです。
新聞紙を雑巾くらいの大きさに折りたたみ、ホールや教室の雑巾がけをして次の人へタッチ。新聞紙雑巾をバトン代わりにして競いましょう。
雑巾がけは下半身や腕を強化でき、バランス感覚を養えますよ。
運動遊びの導入ポイント
最後に、安全に楽しく運動遊びを取り入れるためのポイントを確認していきましょう。
必ず安全点検をする
マットやタオルなど道具を使う際には、けがや事故を防ぐために必ず事前に安全点検をするようにしましょう。
また、遊んでいるうちにフードやボタンなどが引っかかってしまうことのないよう、子どもの衣服も危険がないかしっかりチェックしてください。
ルールや役割を決める
集団で運動遊びをする際には、楽しく遊ぶためのルールや役割を事前にしっかりと決めておきましょう。
なお、特定の子どもがいつも鬼にならないよう注意し、チーム対抗の場合には力量が均等になるよう配慮することも大切です。
周囲の子どもに注意する
引っ張ったり投げたり、走り回ったりする際には、周囲に子どもがいないかを必ず確認しましょう。思わぬところからの接触は大きなけがにつながります。
とくに室内のような狭い場所や、他のクラスの子どもたちも一緒にいる場所で運動遊びをする際には、遊びの範囲を決めるなどの工夫が必要です。
まとめ
子どもの体と心の健やかな成長をサポートする、運動遊び。
思いきり体を動かして遊ぶ機会が減りつつある現代だからこそ、積極的に保育へ取り入れていきたいものです。
ぜひ、子どもたちとたくさんの運動遊びをして、さまざまな能力を養いつつ、運動する楽しさを経験させてあげましょう。
【参考】