保育士のひきだし
2020.05.15
伝承遊びのねらいとは?保育の現場で積極的に取り入れたい伝承遊び
伝承遊びは、古くから日本で親しまれている子どもの遊びのことです。外遊びでは鬼ごっこやかくれんぼ、缶蹴りなど。室内の遊びでは折り紙、おはじき、かるた、あやとりなどが代表的です。今でも子どもが夢中になる遊びがたくさんありますね。
本記事では伝承遊びのねらいを解説し、おすすめの伝承遊びを年齢別、室内/屋外別にご紹介いたします。
伝承遊びって何?代表例や特徴
伝承遊びとは、日本の伝統的な遊びのことです。代表的な例としては、鬼ごっこやかくれんぼ、折り紙などが挙げられます。多くの保育現場や子ども同士の遊びの中で親しまれている伝承遊び。その特徴は、複数の人数で行う遊びが多いことです。もちろん、中には一人遊びができるものもありますが、ほとんどは2~10人でも遊べるような内容になっています。
伝承遊びの種類
伝承遊びは3つの種類に分かれており、それぞれ違った魅力があります。
- 体を使った遊び…鬼ごっこ
- 道具を使った遊び…あやとりやおはじき
- 言葉遊びや歌を使った遊び…かるた、わらべうた
上記のほかにも、「缶蹴り」のように道具を使いながら体を動かす遊びや、「はないちもんめ」のように歌いながら体を動かす遊びもあります。このように、運動・道具・言葉や歌など、あらゆる要素を含んでいるのも、伝承遊びの魅力です。
伝承遊びのねらい!どんなことが学べる?
伝承遊びは子どもにどんな影響を与えてくれるのでしょうか?伝承遊びのねらいや、学べる事柄についてまとめていきます。
子ども主体で遊び方をアレンジできる
伝承遊びは子どもが自分自身で考えながら遊べるのが魅力です。例えば、「氷鬼」「色鬼」「手つなぎ鬼」など、基本の遊びに独自のアレンジを加えたり、折り紙で自分だけのオリジナルの作品を作ったり。こうした「遊びを工夫する力」は、子どもの創造力や発想力に役立つでしょう。
友だちとコミュニケーションを取れる
伝承遊びは複数人で遊ぶものが多いため、友だちとのコミュニケーションが増えるというメリットもあります。特に氷鬼やドロケーなど、敵と味方に分かれて遊ぶ場合、味方を助けるために動いたり、力を合わせて敵を捕まえたりします。遊びの中でチームワークを身につけることができるでしょう。ときには子ども同士が衝突し合う場面もありますが、こうした体験も子どもの成長には欠かせません。
地域の文化や伝統に触れて親しむ
伝承遊びは地域によって名称やルールが異なります。例えば、北海道ではアイヌ民族の「輪突き」という伝承遊びが有名です。輪状にした枝を投げて木の棒でキャッチするという伝承遊びです。沖縄県では、クワーディーサやモモタマナの葉を使ってお面を作る「葉っぱ遊び」が古くから親しまれています。このように、地域の伝統文化に親しみを感じられるのも大きな魅力です。
伝承遊びの種類を年齢別に紹介
ここでは0~1歳児向け、2~4歳児向け、5歳児向けの伝承遊びを取り上げていきます。担当しているクラスの年齢に合った遊びをチョイスしてみてください。
分かりやすくて簡単!0~1歳児向けの伝承遊び
0~1歳児は言葉や体の発達がまだまだ成長途中のため、大人と一緒に遊べる遊びや、簡単な動きの遊びがおすすめです。
一本橋こちょこちょ
「一本橋こちょこちょ」はわらべうたの一種です。わらべうたとは、古くから歌い継がれてきた「伝承童謡」です。代表的なものとしては、「絵描きうた」「数えうた」「遊びうた」が挙げられます。「一本橋こちょこちょ」の場合は遊びうたに分類されます。
一本橋ばしこちょこちょの歌詞
いっぽんばーし こーちょこちょ(子どもの手のひらをこちょこちょくすぐる)
すべって たたいて つーねって(人差し指をすべらせて、優しく叩いてつねる)
かいだんのぼって こーちょこちょ(人差し指と中指で腕を駆け上がって首元やお腹をくすぐる)
子どもとスキンシップを取れる伝承遊びです。子どもをあやしたいときにもぴったりです。
あぶくたった
「あぶくたった」は子どもの想像力を刺激する伝承遊びです。
- 保育士と子どもが手をつないで輪になる
- 輪の中心に鬼役の子どもを配置する
- 鬼役の子どもが顔を手で隠して、周りの子どもは輪になりながら歌う。
あぶくたったの歌詞
(1)あぶくたった にえたった にえたかどうだか たべてみよ(歌いながら鬼の周りを回る)
(2)むしゃむしゃむしゃ(鬼の方を向いて食べるふりをする)
(3)まだにえない(首を左右に振る)
※上記を3回繰り返したら、(3)のところで
もうにえた(うなずく)
以下略
言葉と動きがリンクしているため、1歳児の言葉の発達にも役立ちます。動画のように後半の「何の音?」をアレンジしてみるとさらに楽しめますよ。
友だちと一緒にできる!2~4歳児向けの伝承遊び
2~4歳になると、体を動かす遊びや、簡単なルールがある遊びや、友だちと一緒に楽しめる遊びがおすすめです。
なべなべそこぬけ
「なべなべそこぬけ」はわらべうたの中の「遊びうた」の一種です。2人組になって、向かい合い合ったり手をつないだりするなど、子ども同士がスキンシップを取れる遊びです。
- 2人組になって向かい合う
- 手をつなぐ
- 歌に合わせながら両手を揺らす
- 反り返って背中合わせになる
- ①~③を繰り返して向かい合わせに戻る
なべなべそこぬけの歌詞
なべなべそこぬけ(向かい合ってつないだ両手を揺らす)
そこがぬけたら かえりましょ(手をつないだまま反り返り、背中合わせになる)
なべなべそこぬけ(背中合わせのままつないだ両手を揺らす)
そこがぬけたら かえりましょ(手をつないだまま腕の間を通って、向かい合う)
体の柔軟性も鍛えられるのも大きなポイントです。
いろはにこんぺいとう
「いろはにこんぺいとう」はゴムひもを2本使って行う遊びです。
- ゴムひもを持つ役を2人、鬼役を1人決める。残りはゴムを跳ぶ役。
- 持ち役がゴムひもを持って「いろはにこんぺいとう」と歌いながら、ゴムひもをクロスさせたり高さを変えたりする。鬼役はゴムの動きを見ないように後ろを向く。
- 持ち役がゴムひもの動きを止める。
- 鬼役が後ろを向きながら「上」「下」などゴムひもの跳び方を決める。
- 跳ぶ役は鬼が言った跳び方でゴムひもをくぐったり跳んだりする。
- ゴムひもに触れてしまった子どもが鬼役になってゲームを再開。
「人間」「カエル」「ナメクジ」など、跳び方をアレンジしても楽しいでしょう。
ハンカチ落とし
「ハンカチ落とし」はハンカチやタオルが1枚あればすぐに遊べる人気の伝承遊びです。
- 鬼を1人決める
- ほかの子どもは輪になって座る
- 鬼はハンカチを持ってほかの子どもの後ろをぐるぐると回る
- 鬼が1人の子どもの後ろにハンカチを落とす
- 鬼が後ろを通り過ぎたら、自分の背後にハンカチがないか確認する
※振り返るのは禁止
- 鬼にハンカチを落とされた子どもはハンカチを持って鬼を追いかける
- ハンカチを落とされた子どもが座っていた場所に鬼が座れば鬼を交代。ハンカチを落とされた子どもが鬼となってゲーム再開。
※鬼が子どもに追い付かれてしまったらもう一度鬼をする
※ハンカチを落とされて気付かない子どもがいた場合、鬼は輪を一周した後にその子どもの肩を叩く。肩を叩かれた子どもが鬼役になる。
ハンカチを1枚足して鬼を増やすと難易度が上がりますよ。
ルールが守って楽しくできる!5歳児向けの伝承遊び
5歳児になると、チームに分かれた遊びやルールが複雑な遊びもできるようになります。
缶蹴り
「缶蹴り」は、鬼の目を盗んで鬼が見張っている缶を蹴るという、昔ながらの屋外遊びです。
- 鬼を1人決める。
- 鬼以外の子どもが缶を強く蹴る。
- 鬼が缶を定位置に戻すまでの間、鬼以外の子どもは隠れる。
- 鬼は隠れている子どもを見つけたら、缶のところへ行って「○○ちゃんみっけ!」と言って缶を踏む。
- 見つかっていない子どもは隠れながら、鬼が缶から離れたすきを狙って缶を蹴る
- 缶を蹴ったら、捕まった子どもは解放される。
- 鬼が缶を立てて、ゲーム再開。
遊びが長引いてしまい、鬼がなかなか交代できない場合には、3~5分にタイマーが鳴るように設定して、鬼を交代させると子どもが飽きずに遊べますよ。
あんたがたどこさ
「あんたがたどこさ」は、わらべうたの中の「てまりうた」の一種です。歌いながらボールを手でついたり、足と足の間にボールをくぐらせます。歌のリズムに合わせてボールを扱うのがなかなか難しい遊びです。
あんたがたどこさの歌詞
あんたがたどこさ ひごさ ひごどこさ
くまもとさ くまもとどこさ せんばさ
せんば山には たぬきがおってさ
それを りょうしが
てっぽうでうってさ
にてさ やいてさ くってさ
それをこのはで ちょっとかぶせ
スピードを上げたり、突然ゆっくりしたり、アレンジを加えて難易度を上げてみるのも楽しいでしょう。
こま回し
「こま回し」は保育園でお正月遊びとしても取り入れられています。基本的にはコマの軸を指でひねったり、ひもを使ったりしてコマを回します。既存のコマのほか、次のような素材でコマを作って遊ぶことも。
- どんくり
- ペットボトルキャップ
- 牛乳パックの底
いろいろな素材を使って、どれが一番長く回るのか試してみてもよいでしょう。
天候に合わせてチョイス!室内と屋外でできる伝承遊び
晴れの日や雨の日など、天候に合った伝統遊びもたくさんあります。
室内でできる伝承遊び3選
保育室や自宅でできる伝承遊びを3つ紹介します。
折り紙
「折り紙」は伝承遊びの代表です。指先を使うため、脳の発達にも非常に効果的だといわれています。「鶴」「風車」のように造形が美しいものから、「風船」「カメラ」などおもちゃとして遊べるものまで、形や難易度がたくさんあります。子どもの好みに合わせてお題を選んであげましょう。
おはじき
「おはじき」はガラス製でコインのような形をしています。
- おはじきをテーブルの上に散らす
- おはじきとおはじきの間に指で線を引く
- 指がおはじきに触れずに線を引いたら、お目当てのおはじきの対角線上にあるおはじきをはじいて、お目当てのおはじきにぶつける
- お目当てのおはじきにぶつけたら、ぶつけたおはじきとお目当てのおはじきの2つをゲットできる
※お目当てのおはじきにぶつけられなかったり、線を引くときに指がおはじきに触れたりしたら、次の人の番。
⑤最後に、おはじきの数を数えて、多い人が勝ち
おはじきは小さいため、誤飲の危険があります。乳児の近くでは行わないようにしましょう。
あやとり
「あやとり」は輪にした毛糸を両手に通し、いろいろな形を作って遊びます。「はしご」「ほうき」などの1人でできるものから、「川」「つり橋」などは2人交代で遊びます。「うでぬき」といった“マジック”まで、種類が豊富です。大人数というより、少人数向けの遊びのため、早朝保育や延長保育など、子どもの人数が少ない時間に行うとよいでしょう。
屋外でできる伝承遊び3選
外遊びにぴったりな定番の伝承遊びを紹介します。
鬼ごっこ
伝承遊びといえば「鬼ごっこ」。鬼を1人決めて、ほかの子どもは鬼にタッチされないように逃げる遊びです。遊びがマンネリしたら、アレンジした鬼ごっこもおすすめです。
- 氷鬼
- 色鬼
- 隠れ鬼
- 高鬼
- 手つなぎ鬼
子どもがオリジナルで考えたルールを追加しても楽しめますよ。
だるまさんがころんだ
「だるまさんがころんだ」は、屋外でも屋内でもできる簡単な伝承遊びです。
- 鬼を1人決める
- 鬼が壁に顔を向けながら「だるまんがころんだ」と唱える
- 鬼が唱えている間、ほかの子どもは鬼の近くへ寄る
- 鬼が「だるまんがころんだ」と言い終えたら振り返り、ほかの子どもは鬼が振り返った瞬間に動きを止める
※動いた子どもは鬼になる
- 鬼が「だるまんがころんだ」と唱えている間に、鬼にタッチした子どもは、鬼から逃げる
- 鬼が「ストップ」と言ったら、動きを止める
- 鬼にタッチした子どもは鬼に向かって「○○歩」と歩数を指定して、鬼がその歩数でタッチした子どもにタッチできなかったら、鬼を続行。タッチできたら、タッチされた子どもが鬼になる。
鬼が「だるまさんがころんだ」のセリフを「だるまさんが○○した」と言い換えて、ほかの子どもたちは鬼に言われた通りのジェスチャーをする、というアレンジ方法もあります。
かくれんぼ
鬼を1人決めて、鬼に見つからないように隠れるというシンプルな遊びです。時間制限をつけて遊べば、緊張感がありますね。人数が多い場合は、鬼を増やしたり、鬼に見つかった子どもを鬼に加えたりするなどのルールを追加してもよいでしょう。
まとめ
伝承遊びは子どもの発想力を育むだけでなく、友だちとのコミュニケーションをはかったり、地域の文化に親しむきっかけにもなります。これを機に、伝承遊びを積極的に保育へ取り入れて、子どもたちの学びを増やしていきましょう。