保育士のひきだし
2020.04.02
保育士を悩ませる腰痛!おすすめの予防方法を紹介
保育士にとって腰痛は「職業病」といわれるほどで、普段の仕事で腰痛に悩んでいる方は多いのではないでしょうか?本記事では腰痛の原因になりやすい作業や、腰痛の防止方法についてご紹介いたします。
保育士が腰痛になりやすい理由TOP5
東京都が発表した「東京都保育士実態調査」によると、退職理由に「健康上の理由(体力含む)」と答えた保育士経験者の割合は20.6%でした。保育士の仕事は体を動かす作業がほとんどなので、腰を痛めてしまうと仕事にならないと感じてしまうかもしれません。
それでは一体、日中のどんな動きが腰痛の原因になっているのでしょうか?腰痛につながりやすい、保育士の日常的な動作をチェックしましょう。
【腰痛になりやすい理由1】子どもの抱っこやおんぶ
保育士の腰痛の大きな原因でもある、子どもの抱っこやおんぶ。生後1~2カ月の赤ちゃんでも体重は4㎏以上、1歳になると8~10㎏になります。保育士にとって、子どもをあやしたすときや寝かしつけたりするときに抱っこをしたり、お散歩のときのおんぶは日常茶飯事です。中には、2人の子どもを同時におんぶや抱っこするときもあります。この頻繁な抱っこ、おんぶが保育士が腰を痛めやすい最大の原因です。
頻繁に抱っこやおんぶをすることで、背中から腰のあたりにある「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」という筋肉に負荷がかかり、腰を痛めてしまいます。さらに、子どもを持ち上げる際に、勢いをつけて「よいしょ!」とのけ反ると、腰あたりにある「椎間関節(ついかんかんせつ)」がぶつかり合って、痛みが起こることもあります。
【腰痛になりやすい理由2】オムツ替えや着替えの介助で前かがみになる
オムツを替えや着替えを手伝うときも、実は腰に負担がかかっています。0~1歳児のオムツを替えでは、まずしゃがんで子どもオムツをチェックした後、子どもを抱っこしてオムツ台へ連れて行き、前かがみになってオムツを替えるという流れが基本でしょう。この一連の動きの中で、「しゃがむ」「抱っこする」「前かがみになる」という動きが、腰痛につながる可能性があります。「前かがむと腰が痛い」という状態が続くと、背骨の骨と骨の間にある「椎間板」が痛む「椎間板ヘルニア」につながるリスクがあります。着替えの援助の際も、しゃがんだり前のめりの姿勢が多く、腰に負担がかかってしまいます。
【腰痛になりやすい理由3】子どもの食事のサポートで重心が下になる
離乳食が始まったばかりの0歳児や、食事の援助が必要な1歳児に付き添うときも要注意です。食事の援助は、基本的に正座で行う保育園がほとんどでしょう。その際、子どもにスプーンの持ち方を教えたり、どれぐらい食べ進めているかのぞいたりするために、上半身をひねります。この「重心が下を向く中で上半身をひねる」という動作が、腰にダメージを起こす大きな原因です。特に、1人で数人の子どもの食事を手伝うときは、上半身を上下左右に動かすことになるため、腰への負担も大きくなるでしょう。
【腰痛になりやすい理由4】テーブルやなどを運ぶ作業
重いものを運ぶ動作も腰痛につながります。保育士は、机やいすの移動、遊具など重たいものを運ぶ作業が多々あります。重いものを運ぶだけでも腰に負荷がかかりますが、もっと気を付けるべきなのが重いものを持つときの姿勢です。かがまずに重いものを持とうとしたり、片方の腕だけで持ったりすると、骨盤がゆがんでしまいます。骨盤がゆがむと、腰痛だけでなく次のような症状につながる恐れがあります。
- 頭痛
- 肩こり
- 冷え性
- 生理痛が重くなる
二次的症状を避けるためにも、腰に負担がかかる姿勢を取らないよう、注意しましょう。
【腰痛になりやすい理由5】デスクワークや作業中の姿勢が悪い
腰痛の原因は「動き」だけではありません。「姿勢」も大きな原因です。保育士は日中、動いていることがほとんどですが、子どもの午睡中や降園した後に事務作業があります。デスクワークで猫背になったり、足を組んだりすると、姿勢が悪くなり腰を痛める可能性があります。また、保育室で子ども用の机といすを使って作業をするのも、体とサイズが合っていないため、体がゆがみやすくなるリスクがあります。休憩中に、姿勢が悪い座り方をするのもNGです。
健康に保育を続けるためには?腰痛の予防方法
腰痛を防ぐには、日々の心がけが必要です。ここでは、すぐに実践できる腰痛の防止方法を5つピックアップします。
前かがみ&ひねりはNG!姿勢を工夫する
「前かがみはNG!」とはいえ、保育士である以上、子どもの食事や着替えの援助など、前かがみになるときは必ずあります。そんなときは、「前かがみになったら、体を後ろへ反らせリセットすること」を意識しましょう。体を反らせることで、「椎間板」の中にある「髄核(ずいかく)」の位置が正しくなります。時間がある場合は、前かがみになる前に一度体を反らせておくのもおすすめです。また、食事の援助の際は、上半身だけをひねって対応するのではなく、できるだけ体全体を子どもの方向に向けましょう。視線と体の向きを合わせることで、ひねりが少なくなり、腰への負担も減らせます。
事務作業をするときは大人用の机やいすを使って
書類作成や製作は、子ども用の机やいすではなく、体に合ったものを使いましょう。子ども用の机や机は位置が低く設定されているため、作業をするにはかなり前かがみになる必要があります。これを続けてしまうと、体への負担は溜まっていく一方です。体への負担を回避するため、体に合った高さの机といすで作業するようにしてください。事務作業の際は、ほかの保育士に断りを入れてから、事務室や作業ができる部屋に移動し、きちんと机について作業をするのがベストです。
ただ、保育園によっては、事務室が小さかったり、なかなか保育室から出られなかったりするため、子ども用の机を使わなければならないケースもあります。そんなときは、いすを使わずに、床に毛布やクッションを置いて座りましょう。
まめなストレッチや体操を心がけて
腰痛を緩和させるためには、小まめなストレッチが効果的です。体を支えている腰回りの筋肉をほぐすことで、筋肉のコリや疲労を緩和できるでしょう。今回は、効果的なストレッチを2つピックアップしてみました。
ストレッチ方法① 猫背や前かがみの姿勢を正す
- 肩幅より広めに脚を開く
- 両手をお尻の上の位置(腰・骨盤があるあたり)に当てる
- 骨盤を押し込むようにして、3秒間息を吐きながら姿勢をキープ
- 1~2回繰り返す
ストレッチ方法② 太ももの裏側の筋肉をほぐして骨盤矯正
- いすに座って、背もたれもしくは座面をつかむ
- 息を吐きながら片方の足を伸ばして、かかとを浮かせたまま3~5秒キープ
- かかとを浮かせた状態で、つまさきを2~3回上下に振る
- 左右1回ずつ
しゃがんでから重いものを持ち上げる
重いものを持つときは、しっかりしゃがんでから持ち上げましょう。膝を曲げず立ったまま重いものを持つと、腰に負荷がかかってしまいます。重いものを持つときは、まずしっかりとひざを曲げて対象物に体を近づけることが重要です。持つときも、なるべく荷物と体を密着させると、腰への負担が少なくなります。また、持ち上げるときや立っているときは、腹筋を意識するとなおよいでしょう。
この痛みをどうにかしたい!腰痛を感じたときの対処法
保育士は力仕事であるため、どんなに気を付けていても腰痛になってしまうこともあるでしょう。正しい姿勢やストレッチでは解消できない「腰の痛み」を和らげる方法を解説します。
コルセットや湿布など腰痛改善グッズを活用する
「保育中の腰の痛みをどうにかしたい」という場合は、腰痛改善グッズを活用してみてはいかがでしょうか?
- コルセット
- 骨盤サポートチェア・座布団
- 温感湿布
コルセットは腰回りをしっかり固定し、保護してくれるため、腰痛が一時的に緩和されます。
骨盤サポートチェアや骨盤矯正用の座布団は、長時間座っても腰が痛くなりにくく、正しい姿勢をサポートしてくれるアイテムです。温感湿布は腰回りを温めて血行を促す効果があります(急性の腰痛の場合は冷感湿布)。ただ、これは腰痛を根本から解決する手段ではないため、どうしても痛みが治まらない場合は、病院へ行くことをおすすめします。
病院や整体に通って根本から改善
慢性的な腰痛に悩まされているなら、病院や整骨院に通いましょう。病院では、次のような治療を行います。
- 牽引(けんいん)療法
- マッサージ
- 理学療法
- 鍼治療
病院では医師や理学療法士による治療が受けられます。場合によっては、飲み薬などを処方させることも。一方、整骨院では「柔道整復師」「鍼灸師」の資格を持った整体のプロによる施術が受けられます。ただ、整骨院はスタッフの力量の差が大きいため、しっかり吟味して選ぶ必要があります。スタッフの資格の有無や口コミを調べて、信頼性をしっかりチェックしておきましょう。
どうしても辛いときは
「腰が痛くて保育がままならない」という場合は、思い切って休暇を取るのも1つの方法です。腰が痛むのに無理して保育を続けてしまうと、より症状が悪化してしまいます。そうなると、周りの保育士にも迷惑がかかってしまうでしょう。また、保育士は子どもの安全を守る職業です。調子が悪いままでは、子どもの危険に素早く対応できない可能性があります。腰痛が続くなら、悪化する前にきちんと病院や整骨院に通い、体をきちんと休ませましょう。
まとめ
保育士は腰に負荷がかかる動きが多いため、日常から意識して作業環境を整えたり、こまめにストレッチして、姿勢を正しく保ちましょう。腰が痛いときは、腰痛改善グッズや医療機関を利用し、適度に休息を取ってくださいね。元気に働き続けるために、今できる対策から始めていきましょう。
【参考】厚生労働省「腰痛の防止のために」