保育士のひきだし
2019.11.20
慣らし保育のねらいと進め方のポイントを解説
4月は新入園児にとって試練の時期。
これまでずっと一緒だったお父さんやお母さんと初めて離れて、新しい環境での生活が始まります。不安や寂しさを抱え、登園時から降園時までずっと泣き続ける子どもも中にはいるでしょう。
この不安を少しずつ軽くする目的で行われる慣らし保育ですが、子どもたちにスムーズに保育園に慣れてもらうためには、どのように進めていけばよいのでしょうか。
この時期は、保育士にとっても踏ん張りどころですよね。
そこで、慣らし保育のねらいと進め方のポイントを徹底解説します。
子どもたちの不安や寂しさを受け止めつつ、『保育園は楽しい場所』と感じてもらうためのコツを探っていきましょう。
慣らし保育とは
まずは、慣らし保育の目的と内容をみていきます。
慣らし保育とは、保育時間を数時間から通常保育まで、時間をかけて段階的に伸ばしていく短時間保育のこと。
子どもにとって、初めてお父さんやお母さんと離れること、新しい環境で生活することは、心身ともに負担がかかるものです。
そこで、いきなり保育園で一日を過ごすのではなく、数時間から少しずつ保育時間を延ばしていくことで、少しずつ保育園に慣れてもらうことを目的として行われています。
期間
預かり保育の期間は各保育園の方針などによって異なりますが、短くて数日、長くて2週間程度が一般的。
ただし、慣らし保育が終わっても、子どもの様子によっては延長した方がよい場合もあります。子どもは、成長とともに新しい環境への適応力を身につけていきますが、特に0~2歳児はその経験が少なく、保護者の方と離れた環境がかなりのストレスに。
子どもの様子をしっかりと把握し、場合によっては、保護者の方へ相談の上、慣らし保育を延長することも必要です。
スケジュール
慣らし保育は、2時間程度のごく短い時間からスタートし、数日かけて通常の保育時間まで伸ばしていくスケジュールが一般的。
主に、次のような流れで進めていきます。
- 2時間保育
- 午前中まで
- 給食まで
- お昼寝まで
- 午後のおやつまで
- 通常(終日)保育
なお、保護者の方の勤務状況によって、早朝保育や延長保育が必要となる場合には、慣らし保育期間にその時間帯も組み入れ、環境に慣れておくようにしましょう。
また、慣らし保育は、子どもがスムーズに保育園に慣れることを目的としているため、スケジュール通りに進まないこともあります。
給食が食べられない、お昼寝ができないなど、子どもがなかなか園生活に適応できない場合には、保護者の方と相談し、慣らし保育のスケジュールを調整し、柔軟な対応をしていきましょう。
慣らし保育を実施する3つのねらい
これまでみてきた通り、慣らし保育は、主に子どもたちが新しい環境に慣れ、保育園生活を楽しんで過ごしていくための準備期間です。
しかし、慣らし保育のねらいは、実はそれだけではありません。保護者の方、さらに保育士のためにも、慣らし保育には大きな意味があるのです。
そこでここからは、慣らし保育のねらいをあらためて確認していきましょう。
① 子どもが保育園に慣れる
慣らし保育の一番のねらいは、子どもが保育園に少しずつ慣れていくことです。
- 親元を長時間離れて生活することに慣れる
- 新しい環境での生活に慣れる
- 保育士に慣れる
子どもにとって、ずっと一緒だったお父さんやお母さんと離れることは大きな試練となることでしょう。また、保育士や友だちとの生活も、かなりの負担です。
できる限りストレスをかけることなく、スムーズにその状況に慣れていくことが大きな目的とされています。
② 子どもと離れることに親が慣れる
就職や復職などが決まったものの、子どもと離れることに、寂しさや不安、罪悪感を抱えている保護者の方も多くいます。
そんな保護者の方が、子どもと離れた生活に慣れていくことも慣らし保育のねらいのひとつ。
- 子どもと離れることに慣れる
- 仕事と保育園の生活リズムに慣れる
- 保育園での生活を把握し、預けることの不安を解消する
これまでずっと一緒だった子どもと離れることの寂しさ、子どもの園生活に関する不安など、保護者の方もさまざまな気持ちを抱えながら子どもを保育園へ送り出しています。
保育園での生活を知り、保育士との信頼関係を築くことが大切です。保護者の方が安心して子どもを預けられるようにしていくためにも、慣らし保育は重要な意味を持っています。
③ 保育士が子どもに慣れる・保護者との関係を築く
保育士にとっての慣らし保育は、これからどんな子どもと毎日を過ごしていくのか知ることが大きなねらい。また、保護者の方と良い関係を築くことも大切なねらいです。
- 子どもに慣れる
- 保護者と良い関係を築く
一人ひとりの性格や好きな遊びなどを把握しながら、子どもたちやその保護者の方との関係を築いていく重要な期間となります。
進め方のポイントと困ったときの対処法
慣らし保育の目的がわかったら、次に慣らし保育の進め方のポイントをご紹介いたします。さらに、慣らし保育中にトラブルが発生した場合の対処法についても探っていきましょう。
入園前に保護者からヒアリング
慣らし保育をスムーズに進めていくためには、入園前に次のような情報を保護者からヒアリングし、受け入れ準備をしておくことが重要です。
- 食事状況(アレルギーの有無・進み具合・好き嫌いなど)
- 睡眠状況(寝るときのクセ・寝かしつけ方法など)
- 好きな遊び
- 生活リズム、など
保育園に入ることで生活リズムが変わると、子どもたちは不安を感じてしまいます。家庭での子どもの様子を入園前にしっかりとヒアリングし、できるだけ家庭と同じように生活していける環境を整えておきましょう。
また、保護者の方が抱えている不安や悩み、就労状況なども入園前に確認し、慣らし保育の日程とスケジュールを話し合っておくことも大切です。
泣いて保護者から離れない場合の対処法
慣らし保育期間は、登園時に子どもが大泣きし、保護者から離れないというケースが多くみられます。
そんなとき、子どもはもちろん、保護者の方も不安と心配でいっぱいに。子どもを預けることに罪悪感を抱いてしまう方もいます。まずは、「しっかりとお預かりしますので大丈夫ですよ!」と声をかけて、保護者の方に安心して預けてもらいましょう。
そして、「泣いてもいいんだよ」と子どもの気持ちに寄り添い、抱っこしたり、おもちゃを見せたりして子どもの気持ちが切り替わるよう努めましょう。
子どもたちは、お父さんやお母さんが見えなくなると、次第に気持ちが落ち着いて楽しく遊びだすものです。なかには、一日中泣いてしまう子どももいますが、少しずつ慣れてくるので大丈夫。保護者の方と相談しながら、ムリなく進めてくださいね。
場合によっては、数日間保護者の方に保育園で子どもと一緒に過ごしてもらうのも良策ですよ。
また、「保育園でお友達がいっぱい待ってるよ!」、「早くお迎えに来るから大丈夫だよ!」と子どもが安心できるような前向きな言葉かけを、保護者の方にお願いしておくといいでしょう。
給食やおやつを食べてくれない場合の対処法
お父さんやお母さんがいない不安な環境の中、給食やおやつを食べてくれない子どもも少なくありません。
食事がしっかり摂れないと、保護者の方も心配になってしまいますよね。
これから保育園で健やかに過ごしていくために、「食べさせなければ…」と思ってしまいますが、子どもに無理やり食べさせるのはNG。
無理強いしてしまうと、子どもが食事そのものにストレスやトラウマを持ってしまうかもしれません。
慣らし保育の期間は、給食やおやつが完食できなくても大丈夫。食事の時間を楽しめることが最優先です。
まずは、「先生と一緒にひとくちだけ食べてみようか!」などと声かけをして、食べられたら思い切り褒めてあげましょう。
また、いつも使っているフォークやスプーンなどを保護者の方に用意してもらい、家庭の環境に近づける工夫をするものおすすめです。
子どもに合わせた柔軟な対応と保護者へのフォローを忘れずに
親から離れた集団生活にすんなりとなじめる子どももいれば、いつまでも慣れずに泣き続けてしまう子どももいます。
慣らし保育はある程度スケジュールを決めて行いますが、無理にその通りに進める必要はありません。
給食が食べられない、毎日泣き続けてしまう、お昼寝ができないなど、保育園での生活になかなかなじめないようであれば、保護者の方と相談して期間を延期するなど、子どもの様子に合わせて柔軟に対応していきましょう。
また、慣らし保育は、保護者の方と保育士がお互いに関係を深めていくための重要な期間でもあります。
「最初は泣いてしまったのですが、クラスに入ってからは楽しく遊べました」
「少しずつ給食を食べられるようになってきました」
「最初はみんな泣いてしまうものです。大丈夫ですよ」
など、子どもの様子を伝えたり、保護者の方の不安を取り除けるような言葉がけをして、子どもを安心して預けてもらえるような信頼関係を築いていきましょう。
まとめ
慣らし保育が始まる新年度は、子どもにとっても保護者の方にとっても、そして保育士にとっても試練の時期。
子どもも保護者の方も不安があり、最初はうまく進まずに悩んでしまうこともあるかもしれません。
慣らし保育で最も大切なことは、子どもたちに『保育園は楽しい場所』だとわかってもらうことです。
子どもたちが新しい環境に慣れるまで時間がかかるかもしれませんが、毎日笑顔で登園してくれる日が必ずやってきますよ。
子どもたちの寂しさや不安な気持ちをしっかりと受け止め、保護者の方と密にコミュニケーションを取りながら、慣らし保育を乗り越えていきましょう。