保育士のひきだし
2019.10.17
【保育園の英語教育について】保育士も英語必須の時代に?
グローバル化を受け、英語力向上のための改革が国を挙げて進められています。その代表が、2020年から始まる、小学3年生からの英語教育の導入です。小学3,4年生では、英語を「話す、聞く」を中心に小学校で授業が行われます。
そんな流れを受け、英語教育に力を入れる保育園も増えてきました。保育園での英語教育に興味があるけれど、導入にはどんなメリットやデメリットがあるの?保育士にはどの程度の英語力を求められるの?という疑問を抱いている方へ。保育園での英語教育について、保育士の英語力を向上させるための資格である「幼児教育・保育英語検定」も含めてご紹介いたします。
幼児期に英語教育を行う意味
幼児期に英語教育を行うことには、さまざまな意味があります。
小学校英語教育の導入
2020年より、小学3年生からの英語教育が始まります。3,4年生は英語を「聞く」「話す」を中心に年間35時間。5,6年生になると「書く」「読む」も加わり、年間70時間の授業が必修となります。5,6年生では他の授業と同じように、教科として成績がつくことも特徴です。
【参考】文部科学省 今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~
また2020年以前より、低学年、中学年から英語教育を取り入れている学校も少なくありません。英語教育に力を入れている地域では、小学1年生から取り入れている学校もあるのです。
そこで保護者の方は、小学校に入学して突然、英語に親しむことができるのかという不安を抱えます。幼児期に英語教育を取り入れることは、小学校の早い段階から始まる、英語教育導入の対策としての意味があるのです。
語学教育は早期から始めると有利
語学教育は特に、早期教育が効果的であると言われています。
- 子どもは音を聞きとる能力が大人よりも高い
- 勉強というくくりではなく、楽しみながら英語に親しめる
- 幼児期はまねをすることが得意
- 英語教育にかけられる時間が増える
保育園での英語教育は、勉強というよりは遊びの中で英語に触れる時間です。その中で、英語の音を自然と聞き取り大人のまねをすることで、英語が身に付いていきます。また、英語に触れる時間が長いほど英語力は向上しますので、早期から始めることは有利と考えられています。
異文化理解の一つとして取り入れる
現在日本では、さまざまな国の人々が生活しています。保育園や小学校にも、外国籍を持つ子どもたちも多く通っていますね。また、グローバル化が進む中、海外で活躍する人もたくさんいます。
そんな中で必要なのが、異文化への理解です。子どもの頃から、他の国の文化に親しむことで、近くにいる外国籍の人々とコミュニケーションがとりやすくなったり、大人になってから世界で活躍したいという目標が生まれることも。英語教育も、異文化理解の1つです。幼児期から英語教育を受けることは、先入観や苦手意識を抱かずに異文化に触れるきっかけとなります。
英語教育導入のメリット・デメリット
幼児期から英語教育を行う意味についてご紹介いたしましたが、メリットばかりという訳ではありません。デメリットも知っておくことで、幼児期の英語教育についてより深く理解できますよ。保育園で英語教育を導入する、メリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
まずは、英語教育を取り入れるメリットをご紹介いたします。
英語への抵抗がない
幼児期の子どもには、見るものや聞くもの、触れるものを抵抗なく受け入れる柔軟さがあります。大人になってから英語を習おうとすると、苦手意識を持つ方も少なくありません。しかし、子どもは「英語が難しい」という意識を持っていないのです。
英語への抵抗がないので、スムーズに英語を受け入れます。「英語」という分野ではなく、日本語と同じ「言葉」として受け入れることができるのです。受け入れた英語を日本語と同じようにまねをします。まねをすることは、学習の第一歩。聞き取る力も強いので、日本語にはない英語の音の聞き分けもスムーズに行えます。
英語への抵抗がない幼児期に、英語教育を始めることには大きなメリットがあると言えるでしょう。
遊びの中で自然に学べる
保育園での英語教育は、勉強というよりは遊びの中で行います。歌ったりダンスをしたり、絵本やカードなど子どもの興味のある教材を取り入れたりと、子どもが楽しめることに重点をおくのです。だからこそ、子どもたちは英語の時間が好きになります。英語に対して「楽しい」というポジティブな印象を持つことができれば、小学校以降の英語教育に対しても、積極的に取り組むことができるでしょう。
また、歌のリズムに合わせたり、ダンスで身体を動かしながら英語に触れることは、言葉として英語を覚えるよりもスムーズに英語が身に付きます。小学校で授業として取り入れる以前に、遊びの中で英語に触れることで、楽しみながら自然と英語を学べるのです。
英語教育の時間が増える
語学は、聞いたり話したりと触れる時間が長ければ長いほど上達します。海外に行くことが、英語を上達させる1番の近道だと言われることも多いですが、その理由としては英語に触れる時間が圧倒的に増えるからです。
英語教育の改革が進められている日本ですが、それでも他の国に比べると英語教育の時間が少ないのが現状です。小学校では、英語以外の教科を学ぶ時間も必要ですので、英語に充てられる時間は限られてしまいます。中学校、高校でも同様ですね。
しかし、保育園は基本的に遊びを中心としたカリキュラムですので、英語の時間を取り入れることは十分に可能です。保育園で英語教育を導入することで、子どもたちが英語に触れる時間を増やせるというメリットがあります。
【参考】文部科学省 諸外国における外国語教育の実施状況調査結果
デメリット
メリットの多い保育園での英語教育導入ですが、デメリットもあります。
二つの言語が混ざって混乱する
英語の早期教育のデメリットとして挙げられることの多い、日本語と英語が混ざることでの混乱。日本語を確立できていない幼児期に英語教育を受けることで、日本語も英語も中途半端な状態になってしまう恐れがあるということです。
幼児期は、母国語である日本語を習得する大切な時期でもあります。英語ばかりにならず、日本語での絵本の読み聞かせやコミュニケーションも大切にしながら、日本語を母国語として習得できる環境作りが大切です。
卒園後に英語を忘れる可能性がある
保育園で英語教育を取り入れ、きれいな発音や英語に自然と親しむ力が身に付いても、卒園後に英語に触れていなければ、あっという間に忘れてしまいます。いざ小学3年生から英語の授業が始まったときには、全く英語が分からないということも…。
卒園後の教育には保育士は関与できませんが、保育園で楽しく英語に親しんでいる姿を保護者の方に伝えることが大切です。
子どもの負担となってしまうことも
幼児期の英語教育は、遊びの中で楽しみながら行うことが前提です。しかし、読み書きや質問にしっかりと答えられること、などそれ以上のものを求めてしまえば、子どもの負担となることも。楽しんで取り組めることがメリットの1つですが、反対に英語を嫌いになってしまう可能性もあります。
また、乳児クラスでは特に、外国人講師に対して人見知りをして、泣き出してしまう子どもも少なくありません。外国人講師を招く場合には、子どものペースで触れ合えるように、配慮しましょう。
保育士に求められる英語力のレベル
保育士が、保育園での英語教育に携わりたいと考えたとき、どの程度の英語力があれば良いのでしょうか?保育士に求められるレベルを見ていきましょう。
英語で歌とダンス
保育園での英語教育は、椅子に座って授業の様に行うのではなく、歌やダンスを取り入れながら子どもが自然と英語に触れることが一般的です。歌やダンスも保育士が歌うのではなく、CDに合わせて歌ったり踊ったり…。そのため、歌詞を聞き取るスキルが求められます。
歌詞を理解し、保育士がダンスをする、その保育士の動きをまねて子どもがダンスをする、という保育内容です。しかし、簡単な歌はCDを使わずに保育士が歌う場合もあります。子どもは耳から英語を覚えますので、保育士自身が繰り返し歌を聞いて、発音に気を付けながら歌うようにしましょう。
簡単な日常会話
英語教育に力を入れている保育園では、外国人講師を招いてレッスンを行うことも少なくありません。保育士の役割は、レッスンを行う外国人講師の補助です。外国人講師のレッスン内容も、歌やダンス、絵本の読み聞かせなど、子どもが楽しめる内容が用意されています。
レッスン中の会話は、基本的には全て英語。そんな中で、英語が分からずにレッスンに入れない子どもがいたら、外国人講師の言葉を通訳してレッスンに参加できるようにサポートします。外国人講師を招いたレッスンがある保育園では、講師と園児の橋渡しをするために、簡単な日常会話レベルの英語ができると良いでしょう。
保育士のスキルアップ『幼児教育・保育英語検定』
高度なレベルの英語力がなくても、英語教育を導入している保育園で働くことは可能です。しかし、英語のスキルを身に付けることで、歌やダンスをCDに頼らずに子どもと楽しむことができたり、英語の絵本の読み聞かせができたりと、英語教育の幅が一気に広がります。英語教育を専門に行う保育士を目指すこともできるのです。
保育士が英語のスキルを身に付けるためにおすすめの方法として、「幼児教育・保育英語検定」の受験があります。一般社団法人幼児教育・保育英語検定協会が行っている民間資格で、2019年より「保育英語検定」から名称が変更されました。自分のレベルに合った段階からの受験が可能で、受験資格は特にありません。他の英語の資格とは違い、保育に必要な英語を学べるという、保育士にとってはうれしい特徴も。
試験は、入門レベルである4級から専門レベルである1級まで用意されています。4級はリーディングのみ。3級、2級はリーディングとリスニング。準1級と1級は、一次試験にリーディングとリスニング。二次試験にスピーキングパフォーマンスがあります。
スピーキングパフォーマンスとは、実際の保育の一場面が課題として出題され、英語で対応する試験です。各級に合わせたテキストも販売されていますので、利用しても良いでしょう。
各級に合格すると、幼保英語士資格証が付与されます。英語のスキルアップを目指し、自信を持って働くためには、資格取得を目指すという方法もありますね。
まとめ
保育園の英語教育、そして保育士に求められる英語力についてご紹介いたしました。グローバル化が進み、子どもへの英語教育の関心はますます高まっています。保育園選びでは、英語教育の有無を選択基準の1つとして考える保護者の方も少なくありません。
そんな時代の流れに取り残されないためにも、まずは幼児期から英語教育を取り入れる意味、そしてメリットやデメリットを理解することから始めましょう。保育士自身が幼児期の英語教育について理解していれば、保育園での英語教育がより充実したものとなりますよ。
自分自身の英語力を伸ばしたいと考えたときには、資格取得という方法もあります。スキルアップを目指すことで、就職や転職の選択肢を広げることも可能です。