保育士のひきだし
2019.08.16
保育園のお昼寝(午睡)はどのくらいが良いのか?また何歳くらいまで取り入れる?
保育園で長い時間を過ごす子どもたちにとって、お昼寝は大きな意味を持ちます。だからこそ、安心できる環境の中で気持ちよく寝かせてあげたいですよね。しかし、全員の子どもがスムーズに眠ってくれるわけではありませんし、必要なお昼寝の時間は同じではありません。
眠くてもなかなか寝付けない子、お昼寝が必要ではない子など、子どもの様子は一人ひとり違います。まずは、お昼寝の持つ意味を、保育士がしっかりと理解することが大切です。子どもの成長と健康を支えるお昼寝について。寝かしつけのコツや注意点も含めてご紹介いたします。
保育園のお昼寝とは?
保育園のお昼寝の1番の目的は、子どもたちが安全な環境の中で適度な休息をとることです。そのためには、子どもが安心して身体を休めることができる環境を作る必要があります。保育士もその環境の1つ。子どもが安心して眠れる寝かしつけを行い、安全に眠れる環境を整えることが求められるのです。
保育所保育指針においても、「子どもが適度な休息を取れるようにすること」「安全な睡眠環境を確保すること」との記述があります。
【参考】保育所保育指針 平成二十九年三月三十一日厚生労働省告示
長い時間を保育園で過ごす子どもたちにとって、保育園は自宅の次に安心できる生活の場です。しかし、やはり保護者の方と離れて過ごすことで、身体は緊張や疲れを感じています。お昼寝はその疲れを癒し、午後の活動を意欲的に取り組む原動力になります。
子どものお昼寝に最適な時間
保育園で過ごす子どもたちにとって、お昼寝は大切な時間です。しかし、年齢によって必要な時間は変化していきます。小学校に進学するとお昼寝の時間はありませんので、進学を見越した時間の調節が求められることも。年齢ごとの適切な時間を見ていきましょう。
0歳児
0歳児は、月齢によって発達の差が大きい時期です。そのため、お昼寝の時間も月齢や発達状況に合わせる必要があります。
産休明けの生後2ヵ月の子どもが在籍している場合、1日の半分以上を眠って過ごします。まだ、昼と夜の区別はできていません。ミルクを飲むと眠り、2〜3時間で起きる。少しすると、またミルクの時間という繰り返しです。
3〜4ヵ月になると、徐々に夜は長い時間眠れるようになります。そのため、保育園でのお昼寝は午前、午後の2回。保育時間が長い場合は、夕方も眠って3回のリズムができていきます。登降園時間にもよりますが、午前中は1時間程度、午後は2時間程度というように、午前中のお昼寝を午後のお昼寝よりも短くすると、午後1回のお昼寝に移行しやすくなりますよ。夕方は、夜の眠りに影響が出ないように30分から1時間程度に調節すると良いでしょう。
1歳を迎える頃には、午前のお昼寝はなくなり、午後のお昼寝だけになっていきます。時間は2時間程度。しかし、午後1回のお昼寝に切り替えたばかりの時期は、眠たくて昼食が食べられないことも少なくありません。そんな時は、30分だけでも午前のお昼寝を取り入れてみましょう。突然リズムを変えるのではなく、徐々に時間を調節することで、スムーズに午後1回のお昼寝に移行できますよ。
1〜2歳児
1歳児になると、午後の決まった時間にお昼寝をするリズムができてきます。時間は2時間程度が最適です。しかし、月齢が低い子どもや活動量が多い日などは、昼食の途中で眠たくなってしまうこともあります。そんな時は、少し早めに昼食をとり、2時間半程度ぐっすりと眠ると、すっきりと目覚めることができますよ。
2歳児では、お昼寝のリズムが確立していることが理想です。時間は1時間半から2時間程度。保育時間が長く疲れが見られる子どもは、午睡時間を長くする。夜の眠りに影響し、なかなか眠れない子どもは短くするなど、子どもの様子に合わせて臨機応変に対応しましょう。
3歳児
3歳児になると、休日はお昼寝をしないという子どもが増えていきます。保育園でも、布団に横になって身体を休めるけれど、眠らなくても良いという対応をする場合も。しかし、夕方に疲れが見られて午後の活動に支障が見られる、自宅に帰ってから眠たくて食事や入浴もままならないという場合には、2歳児までと同様に寝かしつけを行い、お昼寝を取り入れましょう。
時間は1時間から1時間半程度で十分です。少し眠るだけでも、頭と身体を休めることができますよ。
4〜5歳児
4〜5歳児になると、休日にはお昼寝をしない子どもがほとんどです。保育園でも、静かに絵本を読む時間や小学校に向けての勉強の時間に当てることも。ただ、保育時間が長い場合など、お昼寝を必要とする子どももいます。疲れている時には、子どもが安心して眠れるように、お昼寝専用の部屋を作っておくと良いでしょう。
お昼寝の環境作りと寝かしつけのコツ
安心できる環境の中で気持ちよく眠らせてあげたいけれど、なかなか眠ってくれない。そんな悩みを抱える保育士は少なくありません。適切な環境作りとコツをつかんだ寝かしつけで、子どものお昼寝をサポートしましょう。
子どもが安心できる環境作りと寝かしつけのコツをご紹介いたします。
適切な室内温度と湿度
子どもは大人以上に、温度や湿度に敏感です。大人よりも体温が高いので、暑くて眠れないということも。エアコンを適度に利用しながら、夏は28度前後に保つと良いでしょう。また、湿度が高いと汗をかき寝苦しくなります。梅雨など湿度が高い時期には、除湿器を利用しても良いですね。
反対に、冬の乾燥している時期には加湿器を利用し、乾燥から子どもを守りましょう。大人が寒く感じる時期だからといって、衣類の着せすぎや布団のかけすぎはNG。寝入るときは、特に体温が上がりますので、汗をかいていないか、寝苦しそうな様子はないかという子どもの様子を見て調節することが大切です。
カーテンで明るさをさえぎる
お昼寝をする時は、カーテンを閉めて光をさえぎるようにしましょう。光の刺激を取り除いてあげることで、頭も身体もしっかりと休めることができます。
また、普段は明るい保育室のカーテンを閉め暗くすることで、子どもたちに「お昼寝の時間」を自然と理解してもらえるというメリットも。遮光カーテンを使って、真っ暗にする必要はありません。カーテンを閉めて電気を消し、薄暗い程度の室内がお昼寝にはおすすめの環境です。
いつも同じ場所で寝かせる
お昼寝の部屋は、常に同じ保育室を利用しましょう。子どもは少しの変化でも、落ち着かなくなります。できれば、保育室内で眠る場所もある程度決めておくと良いですね。両脇に友だちがいても眠れる子ども。近くに友だちがいると気が散ってしまう子どもなど、眠りやすい場所は子どもによって違います。子どもの様子を把握して、場所を決めることが大切です。人が出入りする出入口付近は避けましょう。
音楽・オルゴール・子守唄で気持ちの良い空間作り
寝かしつけには、オルゴール調の静かな音楽をかけたり、子守唄をうたうことも効果的。子守唄は、声の抑揚をつけずに歌うことがポイントです。昔から歌われ続けてきた単調なリズムは、子どもの眠りを誘います。オルゴールなどの音楽は、静かでゆったりとしたメロディーのものを選びましょう。音楽が流れたらお昼寝の時間、というリズム作りにも役立ちますよ。
背中トントンと眉間をなでる
背中やおなかをトントンする寝かしつけ方法は、保育園での王道の寝かしつけです。ポイントは一定のリズムでトントンをすること。しかし、トントンで眠れない場合には、その寝かしつけ方法が子どもに合っていないのかもしれません。そんな時には、背中や足をなでたり、眉間をなでることも効果的です。特に眉間をなでる寝かしつけ方法はおすすめ。優しくなでることで子どもの眠りを誘います。
他にも、耳をさわる、頭をなでる、手を握るなど、子どもによって気持ちよく眠れるポイントは異なります。子どもの様子を見ながら、さまざまな寝かしつけ方法を試してみましょう。
添い寝は保育士も眠たくなる雰囲気作りがポイント
自宅での寝かしつけでは、添い寝をする人は少なくありません。保育園では、子どもと一緒に横になることが難しい場面もありますが、他の寝かしつけ方法で眠ってくれない時には、試してみる価値があります。ポイントは、保育士自身が眠たくなるような雰囲気を作ること。
保育士も目をつむり、話をすることは控えましょう。子どもから話しかけられても、うなずく程度に留めておきます。「寝てくれない」という焦りがあると、子どもは余計に眠ってくれません。ゆったりとした気持ちで添い寝をすれば、安心して眠ってくれますよ。
抱っこやおんぶ
布団でのお昼寝に慣れていない子どもは、抱っこやおんぶで寝かしつけをしてから、布団に降りられるように対応しましょう。ポイントは、段階をへて布団で眠れるようにすること。まずは、保育士が立った状態で抱っこやおんぶをして、ゆっくりと身体を揺らしながら寝かしつけを行います。ぐっすり眠ることができたら、そっと布団に降ろしましょう。布団に降ろすと泣いてしまう子どもも多いので、布団に降ろすぎりぎりまで身体を密着させることが重要です。
立っての寝かしつけから布団に降りられるようになったら、座って膝の上に抱っこをした状態での寝かしつけに挑戦します。ここでも身体をしっかりと密着させることがポイント。眠ったことを確認したら、布団に降ろします。
そしていよいよ、布団での寝かしつけに挑戦です。初めは嫌がるかもしれませんが、子守唄やトントンなど、さまざまな寝かしつけを駆使して、「布団で眠る」リズムを作りましょう。
寝たがらない子はどうする?
さまざまな寝かしつけを試しても、どうしても眠ることができない、眠っても短時間で起きてしまうという場合は、お昼寝をしないという選択肢もあります。絵本などを読み、身体を休めながら静かに過ごす時間にすると良いでしょう。
しかし、お昼寝をなくす場合は、夜まで体力が持ち、午後の活動に支障が出ていない子どもに限ります。午後の活動や自宅に帰ってからの食事、入浴に支障が出ている場合は、やはりお昼寝を取り入れる必要があるのです。
そんな時には、保護者の方にも説明をして、協力をしてもらいましょう。保育園は登園時間が子どもによって異なりますので、起床時間が遅く、昼寝の時間に眠くならないという状況もあります。起床時間を少し早めてもらうことで、お昼寝の時間と眠くなるタイミングが合うことも。子どもの園での様子を伝え、家庭での様子も伺いながら、子どもにとって1番良い対応を一緒に考えていきましょう。
反対にお昼寝の時間が長すぎて、夜眠る時間が遅くなってしまうという相談を受けることも多くあります。3歳以上児クラスでは特に、実際にお昼寝をなくすことで、夜寝る時間が早くなることも少なくありません。そのため、子どもの様子に合わせて、お昼寝を短くする、お昼寝をなくす、という個別対応が必要な場合もあります。
寝かしつけの際の注意点
保育園で起こる事故の多くが、お昼寝中に起きています。うつぶせ寝による窒息や、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症などの危険性があるからです。そのため、お昼寝中は起きているとき以上に、注意深く子どもを見守る必要があります。
まずは、うつぶせ寝の禁止を徹底しましょう。中には、うつぶせでなければ眠れないという子どももいますが、寝入ってから必ず仰向けに直します。寝返りによってうつぶせになってしまった時にも、その都度仰向けに戻しましょう。
もう1点が、睡眠チェックの徹底です。東京都福祉保健局は睡眠中の事故防止の徹底として、0歳児は5分おき、1〜2歳児は10分おきに呼吸と体勢を記入する、「睡眠チェックリスト」の導入を推奨しています。この睡眠チェックリストの導入は、子どもの命を守るとともに、睡眠チェックを行っていたという証明として、保育士自身を守るためでもあるのです。
睡眠チェックを行う保育士は、他の業務には当たらないことが基本です。必ず睡眠チェックの担当者を決め、事務仕事や他の業務は担当者以外の保育士が行います。担当者が変更する場合には、引き継ぐ保育士を明確にした上で、他の業務に取りかかるようにしましょう。
【参考】東京都福祉保健局 乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防及び睡眠中の事故防止
また、保育士による睡眠チェックの補助的な役割として、ベビーセンサーを導入するという方法もあります。ベビーセンサーとは、子どもの呼吸や体動が感知されなくなると、アラームが鳴り注意喚起をしてくれる機器です。子どもが無呼吸の状態に陥った時に、いち早く対処できるため、子どもの睡眠を守るためには有効な機器であると言えるでしょう。しかし、アラームの誤作動が起こることもありますので、機械にだけ頼るのではなく、保育士が睡眠チェックを行う際の補助的な役割として考える必要があります。
まとめ
子どもの生活と成長にとって、重要な意味を持つお昼寝。適切な環境作りと寝かしつけで、子どもが安心して眠れるように関わりたいですね。そのためには、子ども一人ひとりの眠りやすい方法や必要なお昼寝の時間を把握する必要があります。
年齢が上がると特に、お昼寝が必要なくなる子どももいますので、子どもの様子と保護者の方との話し合いでお昼寝をなくすことも1つの方法です。また、お昼寝の際は起きているとき以上の危機管理が大切です。
子どもの命を守っていることを常に頭に入れ、徹底した睡眠チェックを実施していきたいですね。