保育士のひきだし
2019.08.09
【年齢別】保育指導案(月案・週案・日案)のねらいと作成ポイント
子どもたちの育ちや興味に合った保育を考えるために、欠かせないものが保育指導案です。保育園では、月ごとに作成する月案や週ごとに作成する週案など、いくつかの種類の保育指導案を保育士が作成します。保育のために必要なものではあるけれど、ベテラン保育士であっても作成が大変な保育指導案。新人保育士にとっては、さらに大変な仕事です。どんな指導案を作れば良いのかわからないという方へ、保育指導案のねらいや作成のポイントを年齢別にご紹介いたします。
保育指導案とは
保育指導案とはどういったものなのでしょうか。厚生労働省が発表している保育所保育指針解説書では「一人ひとりの子どもが、乳幼児期にふさわしい生活の中で、必要な経験が得られるよう見通しを持って作成するもの」であると定められています。
保育指導案では、子どもが充実した保育園生活の中で健やかに育つための、ねらいや活動内容、保育士の援助などを取り入れ作成します。
現在の育ちや興味を把握し、1年をかけてどんな保育を目標とするのか、その目標に向けて1カ月、1週間、そして日々具体的に、どんな活動や働きかけをするべきなのかという、計画を立てます。
重要なことは、常に子どもを主体として考えるということです。一度作成した計画でも、子どもの姿に合わせて柔軟に発展させる必要があります。ただ、途中で大幅に保育の方向性が変わってしまうと、子どもたちは戸惑います。園の保育方針も取り入れながら、一貫性のあるものにしましょう。
【参考】厚生労働省 保育所保育指針解説書
保育指導案に含まれる内容
保育指導案に含まれる内容は、どの保育園でも保育所保育指針をもとに作成されています。書式は各園によって異なりますが、共通する内容を見ていきましょう。
ねらい
1年、1カ月、1週間、1日単位で、どんな子どもの成長をめざすのか、ということが指導案におけるねらいです。
保育所保育指針ではねらいについて、「子どもが保育所において、安定した生活を送り、充実した活動ができるように、保育を通じて育みたい資質・能力を、子どもの生活する姿から捉えたものである。」との記載があります。
【参考】保育所保育指針
まずは、現在の子どもの姿を把握することから始めましょう。子どもの姿には、年齢や発達、興味などが含まれます。
例えば、1歳児クラスの年間指導計画、4,5月のねらいにおいて、「友だちと積極的に関わり、やりとりを楽しむ」と書いても、なかなか実現はできません。反対に、5歳児クラスの年間指導計画、4,5月において、「保育士との関わりの中で、安心して過ごす」というねらいは、年齢や発達に合っていませんね。
ポイントは、週案や月案では、子どもが現在取り組んでいることや興味のあることから、一歩発展させて実現可能なねらいを立てること。年間指導計画では、現在の様子から子どもの姿を予測し、保育の中で育ってもらいたい部分をねらいとすることです。
しかし、新人保育士や初めて担当する学年の場合は、予測してねらいを立てるということは難しいことも。そんな時には、保育所保育指針や過去の指導案を参考にして作成すると良いでしょう。子どもの姿から、4月の時点で立てたねらいが合っていないと感じたときには、年度途中であっても柔軟に変更してくださいね。
内容
保育指導案における内容は、ねらいを実現させるための具体的な保育内容です。保育内容には活動内容だけではなく、活動における保育士の働きかけや子どもの姿も記載します。
例えば、4月の0歳児クラス月案において、「保育士と関わり安心して過ごす中で信頼関係を築く」というねらいを定めたとします。そのねらいを実現するために「保育士に抱かれることで安心し、気持ちよく生活する」「保育士との関わりを喜び、ふれあい遊びを楽しむ」というのが内容にあたります。保育士が抱く、触れ合い遊びを行うことことで、子どもは安心して信頼関係の築きにつながるということですね。
保育園によっては、1歳以上児の指導案において、保育所保育指針に記された、「養護」「教育」という区分に分けて内容を記載する場合もあります。養護とは、子どもの生命の保持と情緒の安定に関わること。教育は子どもが健やかに成長するために必要な内容です。
教育はさらに「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5領域が定められています。園の書式が5領域に分かれていなくても、迷った時には5領域を意識すると、内容を考えやすいですよ。この中でも「環境」は分かりづらい領域ではありますが、人間以外の周囲の環境との関わりに関する領域になります。例えば、身近な自然や絵本、おもちゃ、遊具などとの関わりは「環境」の領域です。
【参考】保育所保育指針
子どもの姿
子どもの姿は「内容」にも記載しますが、それ以外に予測される姿を記します。保育指導案は、クラスごとに作成することが基本ですので、全ての子どもが同じ反応や姿を見せる訳ではありません。
例えば、「保育士に抱かれることで安心し、気持ちよく生活する」という内容においても、まだ信頼関係を築く途中では、抱かれることを嫌がる子どもも少なくありません。そんな子どもの姿も記載する必要があるのです。そのため、子どもの姿の欄には、保育士の援助が必要な場面を記載することが多くなります。
保育士の援助
子どもの姿を記載する中で必要になるのが、保育士の援助です。0歳児の4月において、「抱かれることを嫌がり泣く子どももいる」という姿を予測したら、それに対する保育士の援助を考える必要があるのです。例えば、「子どもの好きな歌を歌うたい、子どもの気持ちが落ち着くように関わる」など、子どもが安心してくれるだろうと予測される援助を考えます。
また、内容に関する関わりも必要です。「身近な自然に触れ、生き物や植物に興味を持つ」という内容を書いた場合、「自然に興味を持てるような声かけを行う」というのは、保育士の援助です。子どもへの良い働きかけとなる、援助方法を記載しましょう。
保育指導案の種類
保育指導案には、大きく分けて4つの種類があります。詳しく見ていきましょう。
年間指導計画
年間指導計画では、1年をかけて子どもにどんな風に保育園で過ごしてもらいたいか、どんな経験をしてもらいたいか、そして、どんな成長を目指すか、という部分を中心に保育計画を立てます。
記載方法は、1期(4,5月)2期(6,7,8月)3期(9~12月)4期(1,2,3月)に分けることが一般的です。ねらい、内容、子どもの姿、保育士の援助に加えて、園の行事予定を入れる場合もあります。その理由としては、子どもが季節を感じられるような内容を取り入れることと、行事に向けての目標や練習を計画に組み込むためです。ただ、子どもの育ちや興味に適した計画が第一条件ですので、行事が主体にならないように気を付けましょう。
年間指導計画は、他の指導案のもととなります。複数担任の場合は特に、保育士同士が共通理解を持つためにも重要ですので、話し合いを行いながら作成しましょう。
月案
月案は、年間指導計画を元に毎月作成する指導案です。前月の子どもの様子を踏まえて作成しましょう。年間指導計画よりも細かく記載しますので、園によっては環境構成の欄を設けることも。環境構成には、内容や子どもの姿に適した保育室の環境、環境に関する援助などを記載します。0歳児クラスで「自立歩行に向けて、つたい歩きを十分に行う」という内容を立てたとすると、「安全につたい歩きをするために、柱や棚に保護クッションをつける」というのは、環境構成です。
現在の子どもの姿から、より具体的な計画を立てるようにしましょう。
週案
週案は、月案を元に1週間ごとに作成する指導案です。前の週の子どもの様子を踏まえて作成しましょう。週案では、より詳しい活動内容を記載します。ねらいを達成するために、どんな活動を取り入れると効果的かということを考えると良いですね。例えば、「散歩や絵本を通して、身近な自然に興味を持つ」というねらいを立てたとしたら、自然を感じられる散歩場所や読み聞かせをする絵本を選びます。週案を見れば、1週間の大まかな活動内容が分かることがポイントです。天気によっても活動内容は変わりますので、晴れた場合と雨の場合の両方を記載しておくと良いでしょう。
日案
日案は、週案と前日の子どもの様子を元に1日の活動内容や援助内容を記載します。週案で、身体を十分に動かして遊ぶ活動を取り入れていたとしても、風邪をひいている子どもが多い場合などは、活動内容を変更することも。時系列で記載することが多いので、より具体的に子どもの姿や保育士の動きが予測できます。
毎日作成する園もあれば、保育参観や行事の時のみ作成するという園もあり、さまざまです。
【年齢別】保育指導案のねらいとポイント
保育指導案を実際に作成する時には、年齢が大きな目安となります。子どもたちの年齢別の、ねらいと作成ポイントを例文を交えて見ていきましょう。
0歳児
安全な環境作り
0歳児保育において、安全な環境作りは第一優先です。まだ自分の身を自分で守ることのできない子どもたち。大人が整えてくれた安全な環境の中で過ごすことで、安心して成長できます。保育指導案を作成する時のポイントは、安全な環境の中で子どもが満足して過ごせる内容、保育士の援助を考えることです。
【年間指導計画】
- 安全な環境の中で大人との関わりを楽しむ
- 安全な環境の中で十分に身体を動かして遊ぶ
【月案・週案】
- 保育園を安全な場所であると認識し、安心して過ごす
- 安全な環境の中で、自ら大人と関わろうとする
- 安全な環境の中で、保育室の探索活動を楽しむ
情緒の安定
0歳児は子ども同士の関わりよりも、大人との関わりが大切な時期です。授乳や抱っこ、寝かしつけと言った、子どもの欲求を満たしてくれる大人との関わりの中で満足して過ごし、情緒が安定します。保育指導案にも、大人との関わりの中で形成される愛着関係や情緒の安定を取り入れると良いでしょう。
【年間指導計画】
- 保育士へ信頼感を抱き安心して過ごす
- 保育士の適切な援助のもと生活リズムを整える
【月案・週案】
- 保育士とのやりとりを喜び、自ら関わろうとする
- 安心できる環境の中で気持ちよく眠る
- 保育士の援助のもと授乳や食事のリズムを整える
心身の発達を図る
0歳児は身体と心の発達が目覚ましい時期です。寝ているだけの状態から、座る、はう、立つ、歩くという運動機能の発達が分かりやすいですよね。それだけではなく、泣くことで「快と不快」を伝えている状態から、表情やしぐさで気持ちを伝えられるようになります。これも心身の発達です。保育指導案は、月齢や現在の子どもの姿から予測して、ねらいや内容を作成すると良いでしょう。
【年間指導計画】
- 安全な環境の中でハイハイや伝い歩きなどの全身運動を十分に行う
- 表情やしぐさで保育士に気持ちを伝える
【月案・週案】
- ハイハイや伝い歩きで保育室を探索し、好きな遊びを見つける
- 表情やしぐさで気持ちを伝え、やり取りを楽しむ
- さまざまな感触のものに触れ、興味を持つ
1歳児
運動機能と身体機能の発達
1歳児になると、歩行が安定し長い距離が歩けるようになったり、指先の機能が発達することで細かなものでもつかめるようになるなど、運動機能と身体機能が発達する時期です。また、身体機能の発達から、自分でやってみようという気持ちも芽生えます。保育指導案には、運動機能の発達を促すねらいと、自分でやってみたいという姿を見守るねらいを取り入れると良いでしょう。
【年間指導計画】
- 興味のある遊びを通して十分に身体を動かして楽しむ
- さまざまなことに興味を持ち自分でやろうとする意欲を持つ
【月案・週案】
- 身体を動かして遊ぶことを喜び、十分に身体を動かして遊ぶ
- 保育士の模倣をしながら、指先を使った遊びに取り組む
- 保育士の援助のもと、食具での食事に挑戦する
言語表現のはじまり
1歳児は、本格的に言葉が出始める時期でもあります。「ワンワン」「ブーブ」と言った簡単な単語から、「ワンワンきた」などの2語文へと子どもの言葉は目覚ましく発達していきます。保育指導案には、子どもが言葉に興味を持てるような内容、保育士の働きかけを取り入れると良いでしょう。
【年間指導計画】
- 簡単な言葉で自分の気持ちを伝える
- 大人との言葉でのやり取りを楽しむ
【月案・週案】
- 簡単な言葉で自分の気持ちを周囲に伝え、伝わったことに満足感を持つ
- しぐさだけではなく、言葉でのやりとりを楽しむ
- 絵本に興味を持ち、繰り返しの言葉を模倣する
子ども同士の関わり
0歳児では保育士との関わりが主な活動であった子どもたち。1歳児になると、友だちに興味を持ち始めます。友だちが遊んでいるおもちゃに興味をもったり、一緒に追いかけっこをしたりと行動が広がっていくきっかけともなるのです。一方、おもちゃの取り合いなどでトラブルが増える時期でもあります。保育指導案には、人との関わり方を学ぶ過程としてのねらいや保育士の援助を入れるようにしましょう。
【年間指導計画】
- 友だちに興味を持ち簡単なやり取りを楽しむ
- 保育士の援助のもと友だちとの関わり方を知る
【月案・週案】
- 友だちと同じ空間や同じおもちゃで遊ぶことを喜ぶ
- 保育士の仲立ちのもと、おもちゃの貸し借りなどを通して友だちとの関わり方を知る
2〜3歳児
のびのびとした運動
2〜3歳児になると、自由に身体を動かせるようになり、走る、跳ぶ、ボールを投げるなどの運動機能が発達します。簡単なルールも理解できるようになるので、鬼ごっこなどの集団遊びを通して、全身を使って遊びも楽しむことができるのです。保育指導案にも、のびのびと身体を動かす中で、運動機能の発達が促されるような内容を取り入れましょう。
【年間指導計画】
- 走る、跳ぶなどの全身運動を喜んで行い、のびのびと身体を動かす
- 友だちとの関わりの中で、十分に身体を動かして遊ぶ
【月案・週案】
- 保育士や友だちと一緒に走ることを喜ぶ
- ボールを投げたり転がすことに興味を持ち挑戦する
- 簡単なルールを理解し、集団遊びの中で十分に身体を動かす
生活習慣と身体機能の発達
2歳児では、指先の細かな作業が可能となるため、着脱や食事などの身の回りのことが、ある程度できるようになります。また、身体機能の発達から排泄も自立へと向かいます。3歳児では、ほとんどの子どもが着脱、食事、排泄といった基本的生活習慣が自立している状態です。多くのことが自分でできるようになった経験から子どもは自信を持ち、さらなる成長につながります。保育指導案にも、そんな子どもの育ちを見守り、認める内容や関わりを含めるようにしましょう。
【年間指導計画】
- 身の回りのことに挑戦する意欲を持ち、自分でできた経験を自信とする
- 生活の流れを知り基本的な生活習慣を身に付ける
【月案・週案】
- トイレでの排泄に興味を持ち、排泄できたことを喜ぶ
- 保育士の手助けのもと、着脱や食事を自分でしようとする
- 生活の大まかな流れを知り、自ら進んで身支度をする
社会性の発達
保育士や友だちとの関わりの中で、社会性が身に付いていくのもこの時期です。ごっこ遊びを通して友だちとのやりとりを楽しんだり、集団生活のルールを少しずつ理解する中で、「待つ」ことや「我慢」することも覚えていきます。保育指導案にも、社会性の発達をサポートできるような内容を取り入れると良いでしょう。
【年間指導計画】
- 保育士の援助のもと、友だちとの関わり方や集団生活のルールを知る
- 自分の気持ちを言葉で伝え、人との関わりを楽しむ
【月案・週案】
- ごっこ遊びを通して、友だちとのやりとりを楽しむ
- 集団生活のルールを知り、おもちゃや遊具を順番に使えるようになる
- 自分の言葉で相手に気持ちを伝え、人と関わろうとする
4~5歳児
知的好奇心の始まり
4〜5歳児は、身近な自然や生き物、身の回りのことに興味を持ち、さまざまなことを知りたい理解したいという欲求が出てくる時期です。これが知的好奇心ですね。知的好奇心の始まりにより、探索活動に夢中になり、子どもの活動範囲はさらに広がります。子どもの興味を伸ばしてあげられるようなねらいを立てるようにしましょう。
【年間指導計画】
- 自然に触れる中でさまざまなものに興味を持つ
- 自分の好きなことや興味のあることを探求しようとする
【月案・週案】
- 自然の中で草花や生き物に興味を持つ
- 十分に探索活動をすることに満足する
- 興味のあることを、絵本で調べたり保育士に尋ねたりする
個と集団活動
友だちと協力して1つのことを成し遂げたり、誘い合って集団遊びを行うようになるのもこの時期です。子どもたちは、個として生活していた時期から、友だちとの関わりを好み、集団活動ができる時期へと成長しているのですよね。保育指導案にも、集団活動ならではのねらいや内容を組み込みましょう。ただ、自分の思いが強くなりすぎて衝突することも多いので、保育者の援助として、見守りと仲裁のタイミングを記載する必要もあります。
【年間指導計画】
- 友だちと力を合わせて1つのことを成し遂げることで協調性を身に付ける
- 相手の思いに気付き、自分の気持ちも伝えながら関わろうとする
【月案・週案】
- 友だちと誘い合って遊ぶことを楽しむ
- 友だちと一緒に1つの作品を作り上げることで仲間意識が芽生える
- 集団生活の決まりを理解し守ろうとする
想像力と判断力の発達
子どもは皆、想像力豊かですが、想像を言葉や形にして表現できるようになる時期です。想像したものを絵に描いたり、友だちとの会話に発展させることができるようになります。また、保育士に頼らなくても、自分で判断し、解決できる場面が増えるのもこの時期です。十分に想像力を発揮させて遊ぶことができる環境を整え、子どもが自分で判断しようとしているときには、見守ることを大切にしましょう。保育指導案にも、そんな子どもの姿を含めると良いですね。
【年間指導計画】
- 想像力を膨らませて自由な製作活動や会話を楽しむ
- トラブルが起きた時にも自分で判断し、解決しようとする
【月案・週案】
- 自由なイメージを膨らませながら、絵を描いたり作品を作る
- 自分の想像やイメージを相手と共有することを楽しむ
- 友だちとのトラブルが起きても、自分で判断し解決しようと努力する
まとめ
保育指導案は、保育計画を立てるだけではなく、子どもの育ちや姿を理解するためにも重要な書類です。まずは、現在の子どもの様子を把握することから始めましょう。
現在の様子が分かると、1年間の保育のねらいや内容も立てやすくなりますよ。年間指導計画の作成ができたら、月案、週案、日案を子どもの姿からかけ離れることのないように作成することが大切です。
年齢別の発達過程も参考にしながら、子どもにとって適切な保育環境作りに役立ててくださいね。