保育士のひきだし
2019.07.09
お泊まり保育のねらいや内容、保育士が気をつけるべきことを解説
保育園や幼稚園の5歳児クラスで行われることの多い「お泊まり保育」。家族と離れて友だちや先生と一緒に過ごす、夏の一大イベントです。家族と離れての外泊が初めての子どもも多く、楽しみな気持ちと不安な気持ちの両方を抱えています。
そんな子どもたちが安心して楽しく過ごすためには、保育士がねらいをしっかりと理解し、適切な配慮をする必要があります。
子ども達にとって楽しい思い出となるように、お泊まり保育のねらいや気を付けるべきこと、子どもが喜ぶイベントも含めてご紹介いたします。
お泊まり保育とは?
まずは、お泊まり保育がどんなものなのかを詳しく見ていきましょう。
お泊まり保育のねらい
お泊まり保育は夏の楽しみというだけではなく、子どもの成長に適したねらいがあります。
- 家族から離れて外泊することで自信をつけ、自立心を育む
- 友だちと協力することで協調性を身に付ける
- 友だちや保育士との絆を深める
- 規則正しい生活の中で身の回りのことを自分で行う習慣をつける
- 保育園での思い出をつくる
家族と離れて外泊ができたという経験は、子どもにとって大きな自信につながります。その自信は自立心を育んでくれるのです。お泊まり会前は不安そうな表情が見られた子どもたちも、お泊まり会が終わるころには自信にあふれた表情を見せてくれますよ。
また、来年から小学生という中で、友だちとの協調性や自分のことは自分で行うという習慣を身に付けることは、大きな意味があります。
お泊まり保育の時期と日数
お泊まり会は、7月もしくは8月に行われることがほとんどです。日数は、一泊二日のスケジュールが一般的。5歳児クラスで開催する場合が多いですが、中には4歳児クラスで取り入れている園もあります。
お泊まり保育の場所は?
お泊まり保育の場所は、園内に宿泊する場合と園外の施設に宿泊する場合があります。
園内の場合は、園庭や近くの公園、プール遊びなどを日中行い、夜になったら園で夕飯。お風呂が園内にない場合には、近くの銭湯などを利用することも多いようです。また、宿泊は園内だけれど、日帰りで動物園や水族館などに出かける場合もあります。
園外の場合には、ログハウスなどの宿泊施設を利用して自然の中で過ごしたり、公共の宿や民宿などに宿泊する場合もあります。園ならではのねらいとして、「自然の中で過ごす」という目標を設定している園も少なくありません。
お泊まり保育の費用
お泊まり保育の費用は、園内か園外かによって大きく異なります。
園内の場合は2,000円から3,000円程度。園外の場合は、8,000円から15,000円程度。園外の場合は、宿泊する場所によって金額に開きがありますので、高い所では3万円というケースもあるようです。
毎月、お泊まり保育の積み立てをしている保育園もあります。
お泊まり保育の内容
お泊まり保育では、普段の保育とは違った準備や保育内容を考える必要があります。子どもが楽しめるイベントも含めて見ていきましょう。
事前準備
お泊まり保育の準備は、早めに始めると安心です。事前の準備を万全に整えて、当日を迎えましょう。
計画を立てる
まずは、お泊まり保育のスケジュールや時間配分、活動内容などの計画を立てましょう。開催するクラスの担任が中心となって計画を立てますが、当日は園全体でサポートする必要があります。
保育士が援助する部分や役割分担も事前に決めて、保育士全員で話し合うことが大切です。個別の配慮が必要な子どもがいる場合には、必ず事前に共有しておきましょう。
保護者の方へ連絡
お泊まり保育は、子ども以上に保護者の方が不安を抱えていることも少なくありません。保護者の方の不安は子どもにも伝わりますので、詳細を丁寧に伝えて安心してもらうことが大切です。
スケジュールやねらい、食事やお風呂についてなど、決定したことの詳細を手紙でお伝えしましょう。心配なことがある場合には、個別に相談に乗る必要もあります。おねしょや生活習慣についての相談は多く聞かれますので、心配ごとがある場合には気軽に声をかけてください、という一文を添えると親切です。
子どもたちと保護者に心の準備をしてもらう
お泊まり会を控えると子どもたちも保護者の方も、期待とともに不安を抱きます。そんな気持ちを受け止め、まずはどんな部分が不安なのかについてじっくりと話を聞いてみましょう。保育士の対応で解消される不安は、その都度解決策を見つけていきます。
特に理由は分からないけれどなんとなく不安…という場合には、お泊まり会で計画しているイベントを伝え、子どもたちが「楽しそう!」と感じられるような関わりを心掛けましょう。子どもが楽しみにしている様子を見れば、保護者の方の不安も軽減されます。
お泊まり会当日までに、不安よりも楽しみな気持ちが大きくなるように、保育士も一緒に心の準備をしていきましょう。
基本スケジュールの例
お泊まり保育は、園内に宿泊する場合と園外に宿泊する場合とで、基本的なスケジュールが異なります。
両方のスケジュール例を見ていきましょう。
【園内宿泊の場合】
1日目
15:00 |
保護者と一緒に集合、集まりの会 |
15:30 |
昼のイベント(園庭遊び、買い物体験など) |
17:00 |
夕食作り、夕食 |
19:00 |
入浴(銭湯などを利用) |
20:00 |
夜のイベント(花火、夜の保育園探検など) |
21:00 |
就寝 |
2日目
6:00 |
起床、身支度 |
7:00 |
朝食 |
8:00 |
お散歩や園内活動 |
9:00 |
解散式 |
9:30 |
降園 |
午後集合の場合のスケジュール例をご紹介いたしましたが、日帰りで園外保育を行う場合には午前中の集合となります。午前集合の場合は、保護者の方が作ったお弁当を持参する園が多いようです。
【園外宿泊の場合】
1日目
9:30 |
園に集合、バスに乗って出発 |
|
目的地に到着、園外保育 (山登り、ハイキングなど) |
12:00 |
昼食(持参したお弁当) |
13:00 |
午後の活動(体験教室など) |
16:00 |
夕食作り、夕食 |
18:00 |
入浴(宿泊施設もしくは銭湯を利用) |
19:00 |
夜のイベント(キャンプファイヤーなど) |
21:00 |
就寝 |
2日目
6:00 |
起床、身支度 |
7:00 |
朝食 |
8:00 |
周辺探索など |
9:00 |
バスに乗って出発 |
|
到着後解散式、降園 |
園外宿泊の場合は、目的地によって活動が異なります。キャンプ場に宿泊する場合は、山登りやハイキングなどをメインの活動とする場合が多いようです。民宿などに宿泊する場合は、動物園や水族館で遊んだ後に宿泊場所に向かったり、そば打ちや陶芸体験などの体験教室をメインの活動とすることも。
子どもたちにどんなことを体験してもらいたいかという目標を立てた上で、スケジュールを決めると良いですね。
おすすめのイベント
園内に宿泊する場合、普段の保育とは違ったイベントを用意することで、より楽しいお泊まり会となります。お泊まり会におすすめのイベントをご紹介いたします。
保育園全体を使って宝探し
普段は自分のクラスや園庭で過ごすことの多い子どもたち。お泊まり会では、園内の他の場所も使って遊んでしまいましょう。卒園を控えた子どもたちにとって良い思い出となりますよ。
【遊び方】
- 事前に園のいろいろな場所に宝物を隠しておく
- 宝の場所を示す地図を作る
- 子どもたちは数人ずつのグループを作る
- グループで協力して、宝物を探す
友だちと協力して宝物を探すことで、団結力も強まります。簡単に見つかってしまうと面白くないので、推理要素も入れた地図を作ることがポイントです。
スタンプラリー
子どもは、何かを集めると景品がもらえるという遊びが大好きです。そんな子どもの気持ちをつかむのがスタンプラリー。園内のさまざまな場所に保育士が立ち、その場所に設置されたゲームにクリアするとカードにスタンプを押してもらいます。
スタンプが全部集まったらゴール。手作りのメダルやお菓子など、子どもが喜ぶ景品を用意しておきましょう。
ゲームはジャンケンや輪投げ、ボーリングなど簡単なもので十分です。保育士がいる場所を地図に記せば、保育士を見つける楽しさもありますよ。
料理に挑戦
お泊まり保育での夕食や朝食は、ぜひ子どもたちが自分で作ることができるメニューを考えましょう。夕食の定番はカレーライス。役割分担をしながら具材を切り、お米も自分で研ぎます。自分で作ったカレーライスは格別おいしく感じますよ。付け合わせにはサラダを作っても良いですね。
朝食は具材を切ることから始めていると時間が足りませんので、具材はあらかじめ保育士が用意して、サンドイッチやホットドックを作ってみましょう。自分が好きな具材を選んで作る楽しさが感じられます。果物にヨーグルトをかけて作る、フルーツヨーグルトもおすすめです。
買い物体験
夕食や朝食作りを取り入れる場合には、買い出しから自分たちで行うこともおすすめです。
近くのスーパーや商店で、料理に使う具材を購入します。保育士も付き添いますが、買い出しは子どもたちの役目。商品を探してお金を払って買い物をするという経験は、子どもにとって大きな自信につながりますよ。
花火やキャンプファイヤー
お泊まり保育の楽しみの1つが夜のイベントです。いつもは自宅にいる時間帯に、先生や友だちと一緒にいることに子どもたちは大興奮。楽しいイベントを企画して、さらに楽しさを盛り上げましょう。
おすすめは園庭で行うことのできる、花火やキャンプファイヤー。夏ならではの遊びを体験できる良い機会でもあります。安全面に留意して、楽しい思い出を作りましょう。
園内でできるイベントとしては、夜の園内探検もおすすめです。
緊急時の保護者への連絡
お泊まり保育中にけがをした、体調を崩した、などの緊急時には、保護者の方に連絡をする必要があります。必ずつながる連絡先を事前に確認しておきましょう。
夜遅い時間に連絡をする可能性があることも、伝えておくと安心です。
お泊まり保育の持ち物
お泊まり保育には、普段とは違った持ち物が必要です。事前に手紙でお知らせをするとともに、保護者の方が確認をしやすい様に、チェックリストも渡しておくと良いですね。
- パジャマ
- バスタオル
- タオル
- 歯ブラシ
- 着替え
- 下着
- 料理を行う場合はエプロン、三角巾
- 午前登園の場合はお弁当
- 水筒
保護者の方に用意をしてもらうと、お泊まり会当日にどこに何が入っているか分からないという状況になることも。用意をすることで子どもの心の準備にもなりますので、持ち物の用意は子どもと一緒にしてもらえるようにお願いしておきましょう。
お泊まり保育でよくある悩み
初めての家族と離れてのお泊まりに、子どもも保護者の方も心配ごとや悩みを抱えることも。保育士は悩みを解決して、安心してお泊まり保育に参加できるように対応する必要があります。よくある悩みと解決法を見ていきましょう。
持病がある子どもなどの体調管理
喘息やアレルギーなど、子どもに持病がある場合には保護者の方は大きな不安を抱きます。まずは、医師の診断や自宅でのケア方法をしっかりと聞いておきましょう。常備服用している薬がある場合には、医師の指示書を確認の上、保育士が直接薬を受け取ります。
不安やストレスを感じると持病が悪化する恐れもありますので、子どもに対しても安心して参加できるようなケアをしてあげてくださいね。
お風呂への悩み
入浴はお泊まり保育の楽しみの1つですが、入浴中は事故の危険性があります。そのため、保護者の中には不安を抱く方も。また、普段は自分で頭を洗うことができない子どもも多いので、しっかりと洗えるのだろうかという悩みもあります。
その両方を解消するためには、少人数ずつでの入浴がおすすめです。保育士の目が行き届きますので事故の危険性が軽減されますし、上手に洗えない場合には援助もできます。友だちと一緒に入浴することで、自分で洗おうという意欲が芽生えることも。
入浴方法をしっかりと伝え、保護者の方の悩みを解消しましょう。
寝かしつけへの悩み
お泊まり保育では、初めて家族から離れて眠る経験をする子どもがほとんどです。夜は、お母さんがいないと眠れないという子どもも。そのため、夜1人で眠れるかということは保護者の方にとって大きな悩みです。
実際にお泊まり保育では、夜になると寂しさが募り泣いてしまう子どももいます。しかし、保育士は寝かしつけのプロです。子どもの気持ちに寄り添い、子どもに合った方法で寝かしつけをします。
家族と離れても眠れたという経験が大きな自信となり、自宅でも1人で眠れるようになったという子どもも少なくありません。
寝かしつけに不安を抱いている保護者の方には、寝かしつけのプロですので任せてください、と自信を持って伝えましょう。
おねしょの悩み
日中はトイレを失敗することはないけれど、夜中はオムツをしているという子どもは意外とたくさんいます。また、オムツはしていないけれど、おねしょへの悩みを抱える家庭も少なくありません。そのため、「お泊まり保育の夜はオムツの対応をしてもらえるのだろうか」「おねしょをしてしまったらどうしよう」と多くの保護者の方から相談を受けることも。
オムツをしている子どもは、他の子どもに分からないようにオムツを着用することで、対応しましょう。友だちに知られてしまうと、恥ずかしいという気持ちを抱く子どもが多いからです。具体的な方法としては、寝る前は別室でオムツを着用します。朝は他の子どもよりも少し早く起こすようにしましょう。他の子どもが起きる前にオムツからパンツに履き替えてしまえば、友だちに知られることはありません。
オムツはしていないけれど、おねしょの心配があるという場合には、夜中に1度トイレに連れて行くようにしましょう。また、おねしょをする子どもの中には、朝目が覚めきっていない時に、出てしまうという場合もあります。朝目が覚めそうな時にすぐにトイレに連れて行くことで、解消できることも少なくありません。
具体的な対応方法を伝えることで、保護者の方は安心してくれますよ。
まとめ
お泊まり保育は夏の楽しみであるとともに、子どもが成長できる良い機会です。家族と離れて過ごす一晩で子どもたちは自信をつけ、お泊まり保育が終わる時には一回り大きくなった気がすると言う保護者の方も少なくありません。
そんなお泊まり保育をより有意義なものにするためには、保育士がねらいを理解し、準備を万端に整えることが大切です。子どもたちが楽しく過ごせる保育内容やイベントを考え、安全で楽しいお泊まり保育を実現させましょう。