保育士のひきだし
2019.06.25
【ケース別】保育士の転職で押さえておくべきポイントを解説
保育園の需要が高まる中、保育士は常に求められています。保育士として働いているけれど他の園への転職を考えている。他業種で働いているけれど保育士への転職を考えているという方にとってはうれしい時代の流れですね。しかし、転職の際のポイントを押さえていないと、転職後に後悔する可能性も。満足できる転職を実現させるために、保育士の転職で押さえておくべきポイントをご紹介いたします。
保育士の現状
まずは保育士が置かれている現状を見ていきましょう。
人材不足
共働き家庭が増えている現在、多くの保育園が新たに設立されています。そんな中で
必要なのが保育士の存在。保育園を設立しても、保育士がいなくては保育はできません。
保育士不足に悩まされている保育園も多く、保育士は常に求められている状態です。
求人が多い
保育士が求められている中で、保育士の求人はとても多い状況です。どの園も保育士を確保しようとさまざまな工夫を凝らし、給与面などの待遇も以前に比べると充実している園が増えてきました。保育士にとっては求人が多いことで選択肢が広がり、より良い条件で働ける状況にあるということですね。しかし一方、選択肢が多すぎてどの園を選べば良いのか分からないという方も少なくありません。
国を挙げての処遇改善が進められている
多くの保育士を確保するために、保育園だけではなく国を挙げての処遇改善が進められています。2017年には、経験年数や研修受講によってキャリアアップすることで、処遇改善が受けられるキャリアアップシステムが構築されました。これにより、今までは園長、主任保育士だけであった保育士の役職に、副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーという役職が生まれ、最大4万円の処遇改善を受けられることに。昇給率が低いと言われている保育士にとっては、うれしい制度ですね。
【参考】厚生労働省 保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について
保育士から保育士への転職
保育士として働いているけれど、他の保育園への転職を考えている。そんなときに、押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
現在の職場を見直してみる
転職に踏み切る前に、まずは現在働いている職場について見直してみましょう。自分がどんな部分を不満に感じているのか、今の状況で改善できることはないか、ということをあらためて考えることは、満足できる転職活動にもつながります。
仕事量
保育士の仕事は子どもとの関わり以外にも多岐に渡ります。そのため、仕事量に対する不満を持つ方は少なくありません。
- 仕事量が多すぎて子どもと十分に関わることができない
- 勤務中に仕事が終わらず残業ばかり
- 明らかにオーバーワークだと感じている
そんなときには、減らせる仕事はないかを考えてみましょう。子どもとの関わりや保護者対応は絶対に減らせない部分ですね。減らせるのは事務仕事や壁面制作などです。例えば壁面制作では全てを自分で作るのではなく、子どもの絵や製作を飾ると活動時間内に作ることができます。子どもと保護者の方も喜んでくれますよ。
事務仕事の1つである週案や月案作成では、通勤時間などにある程度の活動内容を考えておくと、作成時間の短縮に。時間がないときには、過去のものを参考にしても良いですね。
給与面等の待遇
給与面の待遇は、保育士の退職理由の上位に上がります。それだけ不満を抱いている人が多いということですね。
給与面の待遇を改善するために自分自身でできることは、保育士経験を積み主任保育士や副主任保育士などの役職を目指すことです。仕事ぶりを周囲にも認められる必要がありますので、新しい仕事にも積極的に挑戦し、取り組む姿勢をアピールしましょう。
園の方針
園の方針は保育園によってさまざまです。働き始めてみたら園の方針が自分には合わなかったということも少なくありません。その園で働くということは、ある程度園の方針に沿って保育をする必要があります。しかし、子どもの立場に立って考えるとこれは曲げられない、という部分については意見として周囲に伝えるようにしましょう。
大事なことは子どもにとって良い環境を作ることです。子どもにとって明らかにマイナスとなる方針ややり方については、勇気を持って伝えてくださいね。
同僚との関係
先輩や同僚との関係に悩みや不満を抱いているときには、まずは歩みよる努力をしてみましょう。
- 笑顔で接する
- 積極的に話しかける
- 意見交換の場を設ける
自分が苦手意識を持っているだけで、話してみると意外と仲良くなれることも。それでも関係が改善できない場合には、主任や園長に相談することをおすすめします。
保護者との関係
子どもとの関わり以上に難しいのが保護者対応です。良い関係を築きたいけれどうまくいかない、という悩みを抱えることも。
保護者の方との関係作りの第一歩は笑顔であいさつ。そして子どもの様子を丁寧に伝えることです。保護者の方が保育士に1番求めていることは、我が子を良く見てくれてかわいがってくれることです。保育の中で子どもの様子をよく把握し、良い面やかわいらしい姿などを伝えるように心がけましょう。
転職での注意点
現在の職場を見直してみたけれど、自分の力では改善できない。そんな場合は、いよいよ転職に向けて動き出します。転職の際のポイントを見ていきましょう。
転職時期
保育士は3月末での退職が基本です。卒園、進級のタイミングでの退職が、1番子どもと保護者の方への負担が少ないからです。保育士にとっても新年度が始まる4月から働き始めることは、子どもや保護者の方、同僚との関係が築きやすいというメリットも。そのため、保育士の求人は4月入社が多くなります。
運動会などの行事が終わった10月頃に退職の意思を確認して求人を出す園が多いので、秋ごろが保育士の求人が増えるタイミングです。
しかし年度途中であっても、どうしても働き続けることができないという場合には、年度途中での転職も可能です。年度途中であっても求人を出している園は少なくありません。
特に新規園は4月オープンとは限りませんので、年度途中で多数の保育士求人を出すことも。転職を決意したら、時期に限らず求人情報を確認することで転職先の選択肢が広がります。
年齢に制限はある?
保育士は資格を持っていればいくつになっても働ける仕事です。特に経験年数が長い場合には、転職を機に主任や園長を目指すこともできます。40代、50代で転職をすることも十分に可能なのです。
反対に経験年数が浅い場合には制限があることも。即戦力を求めている園では、「経験年数3年以上」「保育士経験のある方優先」という求人もありますので、要注意です。
転職先の場所
勤務地は転職をする際の大きなポイントとなります。どんなに良い条件であっても、自宅から遠い勤務地では通勤が難しいからです。どのくらいの通勤時間ならば通うことができるのか。どんな通勤手段を希望するのかということを把握しておきましょう。また、系列園が多くある保育園では、異動の有無も確認しておくと安心です。
園によっては住宅手当の支給や社宅制度もありますので、転職を機に勤務地近くへの引っ越しを希望する方は利用する方法もありますね。
新しい園の体制
新しい園の方針は必ず確認しておきましょう。働き始めてから、園の方針が合わないという悩みを持つ可能性が軽減されます。また、保育士の勤務体制も重要なポイント。子どもの人数に対して保育士が何人働いているのか。そのうち正規保育士とパート保育士の割合はどのくらいなのかという保育士の体制は、仕事量や残業の多さ、子どもとの関わり方に大きく影響します。
保育士人数が充実している園は保育士がゆとりを持って働けるため、雰囲気が良いという特徴も。安心して働くためには欠かせないチェックポイントです。
園見学は必須
どんなに良い条件であっても、求人情報だけで転職を決めるのは避けましょう。園見学を行い、自分の目で見て園や保育士の雰囲気をつかむことが大切です。
- 保育士は笑顔で子どもと接しているか
- 気持のよいあいさつを返してくれるか
- 園内は清潔に保たれているか
- 園長の雰囲気が自分に合うと感じられるか
保育士に笑顔が少なかったり、園内の掃除が行き届いていない場合には、仕事量が多くて保育士に余裕がない状態のことも。また園の責任者である園長の雰囲気は、園の雰囲気を作りますので、実際に園長と会って話ができると良いですね。
園見学をして自分に合っていない気がする場合には、どんなに条件が良くても避けた方が無難です。
スキルアップのための資格取得
保育士がより良い条件での転職を目指すためには、保育士資格以外の資格を取得することも1つの方法です。保育士の転職に役立つ資格をご紹介いたします。
リトミック指導員
歌やダンス、楽器遊びなどを通して音楽の楽しさを子どもに伝えるリトミック。保育カリキュラムの一環として、多くの保育園で取り入れられています。
リトミック指導員とは、子どもにリトミックを教える専門家です。民間資格であるこちらの資格は、通学講座や大学で指定されたカリキュラムを修了することで取得できます。
リトミック指導員の育成に力を入れている施設の1つが「リトミック研究センター」。教員養成校や月齢研修会など、自分に合った学び方で資格が取得できます。
音楽が好きで子どもに楽しさを伝えたい、という方がさらにスキルアップするためにおすすめの資格です。
絵本専門士
絵本専門士とは「国立青少年教育振興機構」が定めた民間資格で、絵本の知識と技能を備えた絵本の専門家です。応募資格を満たす人が、計30コマの講座を受講、修了することで資格が取得できます。応募資格の1つに、「子どもや絵本に関連する資格を有する者」という条件がありますので、保育士資格を持っている人は応募条件を満たしていますね。
絵本の読み聞かせに力を入れている保育園はとても多いので、専門家としての資格を持っていると転職に有利になることも。
絵本を通して子どもの心の豊かさや成長の手助けをしたい、という方におすすめの資格です。
【参考】国立青少年教育振興機構
絵本専門士については『保育士に人気の「絵本専門士」の資格を紹介。資格のメリットと活かし方』で詳しく解説していますので、合わせてご覧下さい。
認定病児保育スペシャリスト
小さな子どもはよく体調を崩します。突然の発熱で保育園に登園できない。でも仕事は休めない。そんなときに、親に代わって病気の子どもの保育をする施設が病児保育です。病院や保育園に併設されている施設と、「病児保育施設」として単独で設立されている施設があります。
病児保育施設を利用する子どもは、発熱や風邪などで元気な子どもとは違ったケアが必要です。急激に体調が悪化する可能性も。そんな病児保育の専門家が「認定病児保育スペシャリスト」です。日本病児保育協会が認定する民間資格で、web講座の受講と施設実習をへて認定試験に合格することで取得できます。
病児保育には必須となる資格がありませんので、保育士資格を持っていれば勤務が可能です。しかし、病児保育の専門知識を得て資格を取得することで、より安心して働くことができます。少人数の子どもとゆっくりと関わることができる病児保育は人気の職場でもありますので、資格の取得で希望の転職へと一歩近づけますよ。
他業種から保育士への転職
他業種で働いているけれど保育士として働きたいという場合には、保育士資格を持っているか持っていないかで転職への道のりが変わってきます。保育士資格を持っている場合には、保育士経験がなくても十分に保育士として働くことが可能です。
保育士資格を持っていない場合には、まずは保育士資格取得を目指しましょう。保育士資格を目指す方法は2つ。保育士養成学校(大学、短大、専門学校)を卒業するか、保育士試験を受験し合格することです。
社会人経験をへて保育士に転職する場合には、保育士試験を受験して合格を目指す人が多く見られます。合格率が高い試験ではありませんが、自分のペースで勉強ができるので、働きながらの受験も十分可能です。働きながら学校に通いたい場合には、夜間大学で学んだり通信制の大学を選ぶという方法もあります。
保育補助の仕事で経験を積む
働きながら保育士資格取得を目指したいと考えたときには、保育補助の仕事をしながら経験を積むことで、資格取得後に保育士として働きやすくなります。また保育士試験には受験資格がありますが、受験資格に当てはまらない場合でも実務経験を積むことで、受験資格を得ることができますので要チェックです。
保育補助として働く方法を見ていきましょう。
認可外保育園や託児所で働く
保育園には大きく分けて2つの種類があります。国の認可基準を満たしている認可保育園と満たしていない認可外保育園です。認可外保育園と言うと、基準がないようにも感じますがそうではありません。子どもの人数に対する保育に従事する人の人数などの基準はあります。認可保育園との違いは、保育に従事する人の3分の1が保育士資格を持っていれば運営が可能であるということ。
例えば、0歳児3人につき保育従事者が1人という基準は同じですが、認可保育園は必ず保育士資格保有者でなければなりません。一方認可外保育園は0歳児が9名のクラスであれば、3人の保育従事者のうち1人が保育士資格を持っていれば良いのです。そのため、認可外保育園では資格を持っていない職員も、数多く雇用しています。
また、商業施設内の託児所などでは、保育士資格を持っていなくても勤務が可能な場合も。
どちらの場合も保育士と名乗ることはできませんが、子どもの保育に携わり経験を積むことができます。
認可保育園で保育補助として働く
認可保育園でも資格を持っていない人を雇う場合があります。保育士人数にプラスして、忙しい時間帯に保育士の補助をしてくれる人材が必要だからです。基本的には保育士の指示を受けて働きますので、保育士の仕事内容を近くで見て学ぶことができます。
また、園によっては保育士資格取得を目指す人を雇い入れ、資格取得をサポートする体制を整えていることも。資格取得後は慣れ親しんだ園で働くことができますので、おすすめです。
働き方と園の特徴から選ぶ
保育士資格が取得できたら、いよいよ保育士としての第一歩を踏み出します。保育士と一言で言っても、働き方や園の特徴はさまざま。
正社員として働くのか、派遣社員や契約社員、パート勤務を選ぶのか、という雇用形態も重要なポイントです。自分の生活スタイルを考慮して選ぶようにしましょう。
また、保育園の種類は大きく分けて認可保育園と認可外保育園の2つですが、認可保育園の中にもさまざまな種類があります。
一般的な認可保育園の他にも、企業が従業員のために設置する企業内保育。園児定員19名以下の小規模認可保育園など、それぞれの園に異なる特徴があるのです。
納得できる転職を実現するために。自分がどんな環境の中で、どんな保育をしたいのかという思いを明確にして保育園を選ぶようにしましょう。
まとめ
新たな保育園も次々と設立されている中で、保育士の転職にはさまざまな選択肢があります。まずは、現在働いている園を見直すことから始めましょう。見直した結果、やはり転職しようと決断したとしても、今までの働き方を振り返ることは決して無駄にはなりません。
転職を決意したら、条件や園の環境を冷静に判断することが大切です。保育士資格を持っていないけれど保育士に転職したいという人も大丈夫。多くの保育士が求められている現在、保育補助として経験を積みながら保育士資格取得を目指すことは十分に可能です。
新たな園で働き始めたときに、「転職して良かった」と思えるように、ポイントを押さえた転職活動を実践してみてくださいね。