保育士のひきだし
2019.04.22
0歳から2歳児の乳児保育。その特徴や子どもとの接し方について
働く女性が増えてきている現在、保育園の需要はますます高まっています。特に、0,1,2歳児の待機児童問題は深刻で、職場復帰をしたいけれど保育園に預けられないという保護者の方も少なくありません。国としても乳児保育を専門に行う保育園の設立支援を進めています。幼児保育とは違った特徴もある乳児保育。そこで働く保育士に求められる役割や仕事内容についてご紹介いたします。
乳児保育とは?
児童福祉法によると、乳児期とは新生児期を含めた満1歳未満の子どもであるとされています。しかし保育園では、0,1,2歳児が乳児クラス。3,4,5歳児が幼児クラスと呼ばれています。そのため、乳児保育を専門に行う保育園とは、0,1,2歳児のみを預かる保育園のことを指します。
乳児と幼児では国の基準で定められた保育士の配置基準が大きく違うことが特徴。乳児を見てみると、0歳児は子ども3人につき保育士1人。1,2歳児は子ども6人につき保育士1人です。一方幼児は、3歳児は子ども20人につき保育士1人。4,5歳児は子ども30人につき保育士1人です。自治体や園によっては、この基準以上の保育士人数を定めている場合もあります。乳児と幼児では、それだけ保育士の手助けを必要とする場面が違うということですね。
そのため、多くの保育士を必要とする乳児クラスの園児定員は幼児クラスと比べると少なく、0,1,2歳児の待機児童問題にもつながっているのです。
そこで、2015年に国の新たな取り組みとして始まったのが、小規模保育事業です。0歳児から2歳児を対象とした保育施設を新たな認可基準のもと、「小規模認可保育園」として国の認可保育所に指定するというこの制度。園児定員は6名から19名と少人数。この制度によって、今までは20名以上でなければ認可を受けられなかった小規模保育園が、認可を受けられるようになりました。これによって全国に小規模認可保育園が設立され、乳児保育を専門に行う保育士は今まで以上に求められています。
乳児保育の特徴
多くの子どもと保護者の方から必要とされている乳児保育。その特徴を見ていきましょう。
0歳児から2歳児を預かる
乳児保育では、0歳児から2歳児の子どもを預かります。一般の保育園でも0歳児から預かる園は多くありますが、保育士や保育室の確保、安全面への配慮などから生後6カ月以上としている場合が多く見られます。また0歳児クラスの設置がなく1歳児からとしている保育園も。
一方乳児保育園では、産休明けの生後57日からの乳児を預かる園が多くあります。園児定員20名以上の認可保育園であっても、一般の保育園と比べると少人数の場合がほとんどですので、低月例児も安全に保育ができるのです。
乳児保育園では、近くに園庭の代わりとなる公園などの施設がある場合には、園庭の設置が義務付けられていません。園庭がない施設では、戸外活動は近隣の散歩をしたり、近くの公園に遊びに行くなどして過ごします。また、行事では子どもができることが少ないので、一般の保育園と比べて小規模であったり、保育士が主導で行うことが多いことも特徴です。
乳児の親がわりとなって関わる
0,1,2歳児は、大人との関わりが最も重要な時期です。この時期に信頼できる大人と愛着関係を築くことは、その後の子どもの成長にとって大きな意味を持ちます。そのため、乳児保育園で働く保育士には、保護者の方と離れている間は親がわりとなって子どもと関わる必要があるのです。
乳児保育の第一歩は子どもとの信頼関係を築くことから。初めて保護者の方から離れて過ごす子どもたちは、不安を抱え泣くことがほとんどです。そんな不安を受け止め信頼関係を築き、第2のおうちとして安心して過ごせる環境作りが求められます。
乳児保育に関わるには
乳児保育の仕事に就くためには、乳児保育専門の資格などは必要ありません。必要な資格は保育士資格のみ。求められることは、子どもと丁寧に関わる姿勢と乳児期の子どもの発達を理解することです。乳児期は月齢差や子どもによって発達の差が大きいことも特徴。同じ0歳児であっても4月生まれの子どもは入園した時点で歩いていることも多いですが、2月生まれで入園してきた子どもはまだ首が座っていません。この月齢差は1,2歳児でも大きいので、しっかりと配慮した関わりが必要です。
また、月齢だけではなく子ども一人ひとりによっても発達には違いがあります。同じ月齢であっても首の座りもハイハイも自立歩行も、離乳食も言葉も排泄も。全て子どもによって進み方が違うのです。月齢のみで決めつけるのではなく、子どもによって違う発達状況を把握することが大切です。
乳児保育の仕事内容
乳児保育には多くの仕事内容があります。どれも子どもにとっては大切な保育ですので、丁寧におこないたいですね。主な仕事内容をご紹介いたします。
ミルクや離乳食、幼児食の援助
生後5,6カ月までの赤ちゃんは母乳やミルクのみで成長します。保育園にいる間はミルクでの授乳となりますね。保育士は月齢や成長に合ったミルクを調乳し、決まった時間に授乳をします。
5,6カ月になると始まるのが離乳食。保護者の方や栄養士と相談しながら、離乳食を始める時期や進め方を決めていきます。調理は保育士の仕事ではありませんが、離乳食を食べさせるのは保育士の仕事。子どもの発達を見極めながら適切な援助が必要です。
離乳食が進み、1歳頃には幼児食へと移行します。手づかみ食べから、スプーンを使った食事へと。子どもの様子を見ながら楽しく食事ができるような援助をします。2歳児クラスになると箸の練習を取り入れている園もあります。
オムツ替え、トイレトレーニング
乳児のお世話で授乳と同じくらい大切なのがオムツ替えです。園によって紙オムツ場合もあれば布オムツを取り入れている場合もあります。
1,2歳児クラスになり排泄の間隔が空いてきたら、トイレトレーニングが始まります。トイレトレーニングはタイミングを見てトイレに誘うことから始め、子どもが自分でトイレで排泄ができるようになるまで根気強く行います。保育園だけでは行えませんので、家庭との連携も必要です。
トイレトレーンングについては、「トイレトレーニングはいつからする?時期・進め方を知って焦らずに進めよう! 」でも詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
発達に合った遊びの提供
子どもたちは遊びの中でさまざまなことを学び、成長していきます。発達に合った遊びを提供することは、保育士の大切な仕事。おもちゃを出すだけではなく、保育士自身が一緒に遊ぶ中で遊び方や遊びの楽しさを子どもに伝える必要があります。遊びの中では子ども同士のトラブルもありますので、けがのないように関わりながら人間関係を築く手助けもしましょう。
お昼寝の援助
0,1,2歳児の子どもたちの成長にとって、お昼寝は大きな意味を持ちます。保育士は子どもが安心して眠れるような寝かしつけ方法を身につけることが大切です。また、お昼寝中のSIDS(乳幼児突然死症候群)などの事故を防ぐためにも、徹底した睡眠チェックが求められます。
事務作業
乳児保育園でも一般の保育園と同じように、連絡帳の記入やおたより作成、週案や月案の作成などの事務作業があります。子どもはまだ自分で園の様子を保護者の方に伝えることができませんので、より丁寧な連絡帳の記入が必要。
これらの事務作業は、基本的にはお昼寝中に行います。睡眠チェックや休憩回しと並行して行いますので、計画的に進めることが大切です。
環境整備
乳児保育では、保育室の清掃やおもちゃの消毒などの環境整備がとても大切です。0,1歳児はおもちゃを口に入れる時期ですので、おもちゃの消毒は特にこまめに行いましょう。また、壊れたおもちゃや室内でけがをしそうな場所がないか、戸外遊びでも危険なものが落ちていないかという面にも目を配る必要があります。活動に使用するものも、誤飲やけがの心配のないものを選んでくださいね。
乳児保育の魅力
多くの仕事内容や注意点があり、大変な面も多い乳児保育。しかし、それ以上の魅力が乳児保育にはあります。乳児保育の魅力について、いくつか見ていきましょう。
乳児の成長を支えている実感
0,1,2歳児の子どもたちは成長が目に見えて分かりやすい時期です。昨日までは歩けなかった子どもが歩くことができた。少し前までは自分で着替えができなかったのにできるようになった。泣いて自分の気持ちを伝えるだけだった赤ちゃんが言葉を話せるようになったなど、からだも心も大きく成長していく時期なのです。
そして、その成長には大人の手助けが不可欠。大人との関わりの中でできることが増え、成長していきます。そんな子どもたちの様子は、自分の関わりが子どもの成長を支えているという目に見える実感を保育士に与えてくれるのです。
保護者からの育児相談
乳児保育を担当する保育士は、保護者にとって心強い味方です。特に初めての育児は手探り状態。保育のプロである保育士に、相談したいことがたくさんあります。
信頼して相談してくれる保護者と出会い、自分の助言によって保護者が安心してくれる様子は、保育士としての大きな自信につながりますよ。
子どもと丁寧に信頼関係が築ける
乳児保育は保育士1人に対する子どもの人数が少ないことが特長です。そのため、子ども一人ひとりとじっくりと関わることが可能で、丁寧に信頼関係を築くことができます。また、園全体の園児定員も少ないので、家庭的な雰囲気の中で保育ができるというメリットも。自分のクラスだけではなく園全体で保育をしているという環境の中で、保育士同士の関係が築きやすいという魅力もあります。
乳児保育の大変な点
乳児保育ならではの仕事内容や魅力がある中で、大変な点ももちろんあります。乳児保育だからこそ感じる大変さと対処法をご紹介いたします。
突発的な病気や事故への注意
子どもは急な体調の変化が多いですが、乳児は特に注意が必要です。例えば、登園時は平熱だったのに急に熱が上がり熱性けいれんになってしまう場合もあります。だからこそ体調面には特に気を配る必要があります。朝や午睡明けの視診や検温をしっかりと行い、子どもの変化にすぐに気付けるようにしましょう。
また、突発的な事故やけがが多いのもこの時期です。歩行が安定しない時期には転倒によるけがが多いですし、友達との関わり方がわからない時期にはかみつきやひっかきといったけがも増えます。子どもの発達を理解し、けがを未然に防ぐ危機管理能力が求められます。また、友達との関わり方を学んでいる大切な時期でもありますので、けがにつながらないように配慮しながら子ども同士の関わりを見守ることも大切です。
コミュニケーションが取りづらい
まだ言葉で自分の気持ちを伝えられない時期には、泣き声や様子から子どもが求めていることを読みとる力が必要です。また、友達同士の関わりの中で言葉で伝えることが難しくトラブルになることも。そんなときには保育士が代わりに伝え、仲立ちをする必要もあります。言葉でのコミュニケーションが取りづらい時期だからこそ、子どもの様子をよく見て察する技術が求められます。
園の様子を子ども自身が保護者の方に伝えることもできませんので、保育士から詳しく伝えることも大切です。
生活リズムが一定ではない
0歳児クラスでは特に、生活のリズムが一定ではありません。特に離乳食が始まる前は、眠たくなる時間もおなかが空く時間も違いますので、子どものリズムに合わせた対応が必要です。その状態から徐々に離乳食、幼児食に向けて、昼食の時間、お昼寝の時間といった生活リズムを作っていきます。子どものリズムを大切にしながらも、集団保育である園のリズムを作っていく過程は、乳児保育を担当する保育士の腕の見せどころです。
まとめ
幼児保育とは違った魅力や大変さもある乳児保育。小規模認可保育園設立の影響もあり、今後ますます需要が高まっていくと予想されます。乳児保育を専門におこないたいと考えたときには、まずは0,1,2歳児の発達を理解することから始めましょう。大変さにもしっかりと向きあうことで、乳児保育の本当の楽しさが見えてきますよ。
子どもたちにとっては保護者の方の次に身近な大人が保育士です。自分の関わりが子どもの成長を支えているという実感を持って、子どもだけではなく保護者の方とも信頼関係を築きながら、楽しんで保育をしてくださいね。