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保育士のひきだし

2019.03.11

企業内保育とは?企業内保育の種類と保育士の働き方を紹介

子育て中の従業員のために企業が設置する企業内保育。保育園に入れなかったから職場復帰ができない…という従業員をなくし、安心して働くことができる環境を整えるというねらいがあります。また、優秀な人材を確保しやすいという企業側のメリットも。

そんな企業内保育で働く保育士には、一般の保育園で働く保育士とは違った仕事内容や特徴があります。

国の政策もあり注目されている企業内保育について、働く保育士のメリットやデメリットも含めてご紹介します。

企業内保育とは

企業内保育とは、従業員が子どもを預けるために企業が設置する保育施設です。従業員が就業時間中に施設を利用して子どもを預けることで、安心して働ける環境を整えるねらいがあります。

  • 職場復帰の際に保育園に入れないという状況がなくなる
  • 就業時間と送迎時間の兼ね合いがつきやすい
  • 企業内もしくは近くに設置されることが多く、子どもの様子が見えやすい

このように、子どもを預ける従業員にとってはさまざまなメリットがあります。

また企業にとっては、妊娠出産をへても働き続ける社員が増えるので、優秀な人材が確保しやすいことや企業のイメージアップにつながるというメリットがあるのです。

基本的には従業員が利用する施設ですが、政府の政策により地域に開放している施設もあります。

企業内保育所の特徴

企業が設置する保育施設である企業内保育所の特徴について、もう少し詳しく見ていきましょう。

企業内保育所ができた背景

企業内保育所ができた背景には、さまざまな時代の流れがあります。

女性の社会進出

女性の社会進出が進む中で、共働き家庭は年々増加しています。厚生労働省の調べによると、1980年、全国の共働き家庭数は614万世帯。年々推移は増加していき、2014年には1,077万世帯。35年で約460万世帯増えているという結果です。

【参考】厚生労働省 共働き等世帯数の推移

男女平等社会として、女性も男性と同じように社会の中で活躍することは望ましいことですね。女性が社会で働き続けるためには、子どもを預ける場所が必要です。企業内保育はそんな社会情勢を反映させ、子どもを持つ女性でも働き続けることができる環境を企業が自ら整えた結果という背景があります。

待機児童の増加

共働き家庭の増加に伴って、全国に多くの保育園が開設されています。しかしそれでも、保育園を必要とする家庭は保育園の数を上回り、保育園に入りたいけれど入れない…待機児童の増加が深刻な問題となっています。

厚生労働省の調べによると2014年の時点で待機児童数は26,275人。そこから徐々に減少していますが、2017年の待機児童数は26,081人とまた増加傾向にあります。これだけの子どもが保育園を必要としているにも関わらず、保育園に入れないという実態があるのです。

【参考】厚生労働省 保育所等関連状況取りまとめ(平成 29 年4月1日)

職場復帰の際に子どもが認可保育園に入所できない人もたくさんいます。保育園に入れず子どもを見てくれる人がいないという状況では、職場復帰を諦めるしかありません。そんな状況を回避するために、企業内保育を設立するという背景もあります。

政府による企業主導型事業の開始

企業主導型事業とは、企業が従業員のために設置する保育施設や複数の企業が共同で設置する保育施設に対して、国が整備費や運営費の補助を行う制度です。

多様な就労形態に対する保育サービスを行い、仕事と子育ての両立がしやすい環境を整えること。また、待機児童問題解消を目標に2016年に内閣府が開始しました。

認可外保育所の位置づけではありますが、認可保育所と同等程度の助成金が支給されます。

助成を受ける要件は2つ。

  • 一般事業者であること
  • 2016年以降に新たに保育施設を設置していること

2016年以前に設置した企業内保育施設であっても、定員を増やす場合には助成の対象となります。

今までの企業内保育との大きな違いは、他社との共同利用が可能なことと、地域枠として任意での地域住民の受け入れが可能となることです。地域枠が設定されている企業では、従業員だけではなく、地域で保育園を必要としている子どもを一定数受け入れます。

そのことで、待機児童問題解消につなげるというねらいもあるのです。

【参考】内閣府 企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット

企業が自己資産で設置していた企業内保育所。政府からの助成金が得られるようになったことで、より多くの企業が企業内保育所を設置するようになっています。

企業内保育所の種類

企業主導型事業が開始したことで、企業内保育所はさまざまな形態の施設を運営できるようになりました。それぞれの施設形態をご紹介します。

単独設置単独利用型

1つの企業が単独で保育施設を設置し、企業で働く従業員が施設を利用します。従来までの企業内保育と同じ形態ですね。

設置は単独の一般企業が行いますが、運営を保育のプロである保育事業者に委託することが可能です。

共同型

共同型には3つの種類があります。

  • 単独設置・共同利用型

1つの一般企業が保育施設を設置し、他企業との利用契約を結びます。設置した企業と利用契約を結んだ企業、両方の従業員が施設を利用できます。

単独設置単独利用型と同様に、運営を保育事業者に委託することが可能です

  • 共同設置・共同利用型

複数の企業が共同で1つの保育施設を設置します。利用者は設置した全ての企業の従業員です。

一般企業が共同で施設を設置しますが、保育事業者に運営委託することが可能です。

  • 保育事業者設置型

保育事業者である企業が保育施設を設置し、他企業と利用契約を結びます。利用者は施設を設置した企業の従業員と利用契約を結んだ企業の従業員です。

保育事業者が施設を設置しますので、他の保育事業者に運営を委託することはできません。

地域開放型

企業主導型保育事業では、単独設置単独利用型、共同型の両方において、地域枠として従業員の子ども以外の地域の子どもの受け入れが可能です。地域枠の定員は全園児の50%以内。設定は任意ですので、地域枠を設定している企業内保育所は地域開放型の施設であるといえますね。

地域住民にも施設を開放することで、近隣地域の待機児童問題解消に貢献できるだけではなく、企業としても安定して利用者が確保できるというメリットもあります。

企業内保育士の働き方

企業内保育所で働く保育士は、一般の保育園で働く保育士と同じ仕事内容もありますし、異なる特徴もあります。

企業内保育士はどんな働き方をするのか、働く保育士について見ていきましょう。

仕事内容は一般の保育園と同様

企業内保育士の仕事内容は一般の保育所とほとんど変わりません。

  • 1人ひとりの子どもに合わせた関わりや援助
  • 子どもの発達に合ったカリキュラムの設定やおもちゃの選定
  • 保護者対応
  • 連絡帳やお便り作成などの事務作業
  • 行事の計画実行
  • 環境整備

園庭がない施設が多いですが、天気の良い日には近隣の公園に散歩に行ったりと戸外活動の見守りも行います。

ただ園児定員が少ない施設が多いので、一般の保育園と比べると大規模な行事が少ないという特徴もあります。行事に向けた活動というよりは、子ども1人ひとりに寄り添いながら、ゆったりとした保育が中心です。

企業のスケジュールに合わせて勤務をする

企業内保育所は従業員の勤務時間に合わせて開園します。夜間勤務がある企業では夜間保育を実施することも。また夜間保育ではなくても、認可保育所と比べると早朝や夜遅くまで開園している施設もあります。

働く保育士は、各施設の開園時間に合わせて勤務することに。夜勤があったりと、勤務スケジュールが一般の保育園と違うことも企業内保育士の特徴です。

利用する子どもの人数が変動することも

企業内保育所は働く従業員の子どもを預かりますので、従業員の勤務体制や有休取得などによって、日々の利用人数が変動することもあります。

また企業がシフト勤務の場合には、子どもの登園、降園時間も大きく変わります。

曜日や日にち、時間帯によって変動する子どもの利用人数。その人数と子どもの様子に合わせた保育や、受け入れ態勢が企業内保育士には求められます。

企業内保育所で働くメリット・デメリット

一般の保育園とは違った特徴もある企業内保育士の仕事。就職を考えたときには、働く保育士のメリットやデメリットも気になるところですよね。

どんなメリット、デメリットがあるのかをご紹介します。

企業内保育所で働くメリットとは?

まずは、メリットから見ていきましょう。

少人数で比較的ゆっくりと保育ができる

企業内保育所は一般の保育園と比べて、園児定員が少ない場合がほとんどです。そのため、1人ひとりの子どもとじっくりと丁寧に関わることができます。

小規模な施設で、もっと子どもとゆっくり関わりたい保育士にとっては、ゆっくりと保育ができる企業内保育所は理想的な環境であると言えますね。

土日祝日に休める場合が多い

企業内保育所は、従業員の勤務日に合わせて開園します。そのため、日曜祝日だけではなく土曜日も休みという施設も少なくありません。

土日が毎週休みという勤務体制は、外出などの予定も組みやすく、プライベートを充実させられるというメリットがあります。

ただ、地域枠を設けている園や企業自体が土日祝日に稼働している場合には、土曜日や日曜祝日に開園している施設もありますので、事前に確認が必要です。

行事やイベントが少ない

企業内保育所は少人数保育の場合が多いので、大規模な行事やイベントが少ないことも特徴の1つです。

そのため、行事の準備に追われたり、行事の練習で忙しく子どもとゆっくりと遊ぶ時間がない、そんな悩みが少ない環境の中で保育ができます。

常に行事に追われていてつらいと感じている保育士にとっては、大きなメリットですね

保護者との関係が築きやすい

企業内保育士は、施設を設置する企業の社員として雇われることもあります。子どもを預ける保護者の方もその企業の社員です。

保育士も保護者も同じ企業の社員ということで、同じ会社で働く仲間として関係が築きやすいというメリットがあります。

また、企業内保育所は企業内かその近隣に設置することがほとんどですので、物理的にも距離が近く、連携が密に取れるというメリットもあります。連携を密に取ることができると一体感が生まれ、信頼関係へとつながります。

施設によっては、お昼休みの間に保護者の方が、子どもに会いに施設に来ることもあるようですよ。

子どもの急な体調不良の際も、連絡が取りやすいこともお互い安心ですね。

保護者の方との関係作りという面においては、良い環境が整っていると言えるでしょう。

企業内保育所で働くデメリットとは?

企業内保育所で働くメリットについてご紹介しましたが、メリットだけではなくデメリットももちろんあります。デメリットを知っておくことで、働き始めてから「こんなはずではなかった…」と後悔する可能性が減りますよ。

スケジュールが変動しやすい

企業内保育所は利用する従業員の勤務時間に合わせて開園します。そのため、開園時間に合わせて保育士の勤務時間も変動するのです。また、利用人数が日々変動する場合には、必要な保育士人数もその時々によって変わります。

保育士にとっては、勤務時間や勤務日が変動することでスケジュールが立てづらいことにデメリットを感じることも。また、土日祝日も利用者がいる場合には、勤務が入ることもあります。

設備面が不十分な場合がある

企業主導型保育事業の認定を受けている施設は、設備に関する基準が定められています。しかし、企業主導型保育事業の認定を受けていない場合には、認可外保育施設の基準が適用されます。

認可外保育施設にも設備面での基準は定められていますが、企業主導型保育事業の基準よりも緩く、部屋の広さといった設備面が不十分な場合もあるのです。

また、企業主導型保育事業の認定を受けていても、特別な事情がある場合には特例として基準が緩和されます。そのため、設備面が不十分な状態で運営されることも…。

例え施設に不十分な点があっても、その場の保育士が力を合わせて工夫していることもあります。求人応募の際には必ず施設内を見学して、設備面と現場の保育士たちの様子を確認しましょう。

企業の業績に左右される

企業内保育所は企業が設置する保育施設ですので、運営状態が企業の業績に大きく左右されます。企業の業績が下がれば企業内保育所に回す費用が捻出できなくなり、

また、利用する従業員がいなければ企業内保育所は運営できません。企業の業績と利用人数に運営が左右されることも頭に入れておきましょう。

まとめ

待機児童問題が深刻な現在。企業内保育所は、働く保護者の方から大いに注目されている保育施設です。企業としてもイメージアップにつながるとともに、企業主導型保育事業により助成を受けることができるので、設置する企業は年々増えています。

そこで必要なのが、企業内保育所で働く保育士です。企業によってはかなり良い条件で求人を出している場合もあります。

企業内保育所で働く保育士の特徴やメリット、デメリットを把握したうえで、勤務先候補の1つに加えてみてはいかがでしょうか。


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