保育士のひきだし
2019.01.18
保育参観に役立つアイデアを紹介【子どもの年齢別】
保護者に日頃の保育と子どもの様子を知ってもらうための保育参観。保護者は常に保育の様子を見れるわけではないので、保育参観の姿から安心感を持ったり反対に不安を抱いてしまうことも…。
だからこそしっかりと保育計画を立ててのぞみたいところですね。子どもが楽しんで参加できて、保護者にも安心してもらえる。そんな保育参観に役立つアイデアを年齢別にご紹介します。参観当日の服装やトラブル対処法も合わせてご紹介しますので、参考にしてください。
保育参観とは
保育参観とは、保護者が保育や子どもの様子を見るために園が設定する行事です。保育園に我が子を預けている保護者は園でどのように子どもが過ごしているのかが見えません。見えないことは不安につながるので、保育参観は保護者にとっても保育園にとっても貴重な時間です。
基本的には保育の様子を観察する場ですが、参観の内容によっては親子で一緒に製作を行ったりと親が活動に参加することもあります。また保護者が見える場所にいると、子どもが泣いてしまうなど普段の様子が見られない場合は、子どもからは姿が見えない場所で参観ができるような配慮をすることもあります。
保育参観のねらい
保護者が保育の様子を見る機会である保育参観。この貴重な時間には、保育の様子を見る以外にもさまざまなねらいがあります。ねらいを知っておくことで、活動内容も考えやすくなりますよ。具体的に見ていきましょう。
保護者に援助の仕方や遊び方を知ってもらう
保護者の中には、子どもとどう関われば良いのか分からない。遊び方や援助の仕方が分からない、といった子育ての悩みを持つ方も少なくありません。初めての子育てではなおさらのこと。
保育参観は、そんな保護者に子どもへの援助の仕方や遊び方を知ってもらう良い機会でもあるのです。
子どもの様子は大人の働きかけ1つで大きくかわります。例えば、1歳児で衣服の着脱に挑戦しているとき。まだ時間が掛かるからと全て大人が手助けをしてしまっては、いつまでもできるようになりません。子どもができる部分はゆっくりと挑戦する時間を設けて見守れば、身の回りのことを自分でしようという意識が持てるようになるのです。保育の一場面として行っている援助や働きかけも、子育てに悩む保護者にとってはとても参考になりますよ。
遊びの面でも同じです。保育士が子どもと遊んでいる様子を見ることは、自宅での子どもとの関わり方を知るうえで貴重な経験です。
保護者と子どもが一緒に過ごす時間を設ける
保育園を利用している保護者は多忙です。朝は限られた時間の中で登園と出勤準備を行い、帰宅すると食事の準備にお風呂と寝かしつけ。休みの日も家事に追われることも。まさに目が回るようなスケジュールです。そのため、子どもとゆっくりと関わる時間は多くはありません。
保育参観は子どもの様子を見守り、一緒に過ごす時間です。家事に追われることもなく子どもの様子をゆっくりと見守れる時間は、保護者にとって貴重な時間。いつもは気付かないような子どもの成長が感じられることで、日ごろの疲れが癒やされたり子育てを楽しく感じる余裕が持てる機会にもなります。
他の子どもや保護者とのつながりを作る
核家族が増えるなか、保護者は自分だけで子育てをしているような孤独を感じることがあります。そんな時に、同じように子育てをしている保護者と関わり、他の子どもの様子を知ることは子育てをするなかでは重要です。園への送迎時に気軽に話せる保護者がいるだけでも、孤独感は薄れます。保育参観をきっかけに仲良くなり、休みの日にも子連れで遊べる関係になることも。
保護者同士の仲が良いと子ども同士も仲良くなれるので、保育にも良い影響がありますよ。
保育園に対して安心感を持ってもらう
保育の様子がわからないことは保護者の不安につながります。そんな不安を解消し、安心感を持ってもらうというねらいが保育参観にはあります。
登降園時の短い時間や連絡帳では伝えきれない、子どもの様子と保育士の働きかけを知ってもらう良い機会です。また、実際に保育を見てもらうことで保育士に対して親近感を持ってもらえるという効果もあります。園と保育士に対して、安心感と親近感を持ってもらえると保護者トラブルも減少しますよ。
【年齢別】保育参観のアイデア
さまざまなねらいがある保育参観。普段の保育を見てもらうとは言っても、子どもが楽しめて保護者も満足してくれるカリキュラムを用意したいですよね。
保育参観のアイデアを年齢別にご紹介します。
0・1歳児のカリキュラム
0・1歳児クラスでの保育参観のポイントは、親子の触れ合いです。保護者が室内にいると、離れられないことが多いので、無理に離そうとする必要はありません。
親子で一緒にわらべ歌遊び
『おすわりやす』
保護者が足を伸ばして座り、足の上に子どもを乗せます。
♪おすわりやす いすどっせ あんまりのったら おちまっせ♪
と歌いながら足を揺らします。
最後に「ゆらゆらゆら…ドスン」と言って、子どもを足の間に入れます。ドスンの部分を「ギュウ」にして抱きしめるのもおすすめです。
『一本橋こちょこちょ』
ねんねの時期の赤ちゃんは寝かした状態でおなかから、お座りができる子どもは座って手のひらから始めます。
♪一本橋 こちょこちょ(手のひらやおなかを指でなぞってくすぐる)
たたいてなでで(優しくたたいてなでる)
階段のぼってこちょこちょこちょ(徐々に腕やおなかの上の方まで指2本で上がり、最後はくすぐる)♪
どちらも子ども達が大好きな定番のわらべ歌遊びです。大好きなお父さん、お母さんとの触れ合いに子ども達が喜ぶこと間違いなし!保育士はぬいぐるみを使って見本を見せると良いでしょう。
繰り返し行うと保護者も覚えてくれますし子どももさらに喜びますので、何度か繰り返して行ってくださいね。
歌は振り付けも楽しめる選曲で
0・1歳児クラスの参観に取り入れる歌は、振り付けを楽しめる選曲が良いでしょう。まだ歌うことは難しくても、一緒にからだを動かしている様子はかわいらしく、ぜひ保護者にも見てもらいたいところです。具体的な選曲もご紹介します。
- チューリップ
- ちょうちょう
- かえるのうた
- きらきら星
- どんぐりころころ
- てをたたきましょう
ポイントは子どもに分かりやすいシンプルな動きです。手でチューリップやちょうちょうを作ることや手拍子ならば、0・1歳児でも十分に楽しむことができますよ。
2歳児のカリキュラム
2歳児では保護者から離れて自分でできる活動も増えていきます。そのため、子どもの成長を感じてもらえる活動と親子でできる活動の両方を取り入れると良いでしょう。
歌に合わせて動物まねっこあそび
保育士がピアノで弾く曲に合わせて、子ども達が動物に変身するまねっこ遊びです。「かえるのうた」が始まったら、かえるに変身してジャンプ!「おんまはみんな」の童謡が始まったら馬のまねっこをしながら保育室を走る。というように、いろいろな動物に変身して体を動かしてみましょう。
参観で初めて取り入れると難しいので、普段の保育でも取り入れてみてくださいね。
簡単な楽器遊び
2歳児クラスでは、歌う以外にも歌に合わせて楽器遊びを取り入れることもおすすめです。使う楽器は鈴やタンバリン、カスタネットなど。合奏というよりは、曲に合わせて楽器を鳴らすことを楽しむ活動にすると良いでしょう。おすすめの曲をご紹介します。
- おもちゃのちゃちゃちゃ
- かえるのうた
- 大きなたいこ
- 山の音楽家
- ジングルベル
テンポよく楽器を鳴らせる曲がおすすめです。自宅で楽器遊びをする家庭は少ないので、園での成長を感じてもらえます。
親子製作「手形スタンプ」
親子で関わりながらできる活動には、親子製作がおすすめ。親子で1つの物をつくり上げる経験はなかなかないので、子どもにも保護者にも貴重な時間です。
手形スタンプ用のスタンプ台を使うと簡単なのですが、数が足りない場合には、水彩絵の具でも大丈夫です。子どもの手にインクか絵具を付けて画用紙にぺったん。子どもだけではなく子どもの手の横に保護者にも手形をとってもらうと、より一層記念に残ります。
できあがった手形は1度回収して、乾かしてから丈夫な厚紙に貼り穴を開けてリボンを通せばおうちでも飾ってもらえますよ。後日、保護者に渡してあげてくださいね。
3・4歳児のカリキュラム
3・4歳児では活動の幅が広がり、保護者に見てもらいたい活動がたくさんあって悩んでしまうことも。そんな時には、月の保育目標を中心としたカリキュラムが良いでしょう。
例えば、3歳児クラスで保育士の手を借りずに身支度をする。という保育目標を立てていたとしたら、参観でも身支度の時間を長く設け、手助けがなくても自分でできる様子を保護者に見てもらいます。
4歳児クラスで集団遊びに力を入れている時期であれば、戸外活動を参観に取り入れても良いのです。
成長が目覚ましい3・4歳児の参観カリキュラムを見ていきましょう。
はさみやのりを使った製作「ぼく・わたしのおうち作り」
3・4歳児クラスになると、はさみを使えるようになり製作の幅が広がります。そんな時期の参観におすすめなのがおうち作りです。
- 好きな色の折り紙を2枚選ぶ
- 1枚を家の土台、もう1枚を屋根にする
- 屋根にする折り紙を三角に折って開き、線をはさみで切る
- 画用紙に土台と屋根を貼り付け、家を作る
- クレヨンで自分や家族、窓や庭などを描いて完成
4歳児クラスでしたら、煙突をつけたり2階建てにしたり…さらにこだわった家を作っても良いですね。
3歳児クラスでも、1つひとつ手順を説明しながらゆっくりと進めれば十分に作ることができます。わが子が集中して取り組んでいる姿をぜひ見てもらいましょう。
戸外での集団遊び「しっぽとり」
園庭がある保育園では、戸外活動の参観もおすすめです。子どもがルールを理解して遊んでいるかというところにも、注目して見てもらいましょう。3歳以上児は友だちとの関係が密になる時期ですので、集団遊びの中で友だちとの関わりを見てもらうねらいもあります。
- 2チームにわかれ、色の違うリボンをズボンのウエストに挟む
- 保育士の合図でスタート
- 枠内でしっぽを取られないように逃げながら走り、相手チームのしっぽを取る
- しっぽが全て取られるか、決められた時間がたったら終了
- しっぽを多く取ったチームが勝ち
しっぽを取られてしまった子どもは枠の外に出て、同じチームの友だちを応援します。保護者にもゲームに参加してもらうと盛り上がりますよ。
5歳児のカリキュラム
5歳児クラスは、保育園生活の集大成です。友だちと一緒に楽しんでいる様子や真剣に取り組んでいる様子、さまざまな子どもの姿を見てもらいたいですね。室内での活動をピックアップしてご紹介します。
室内での集団遊び「じゃんけん列車」
じゃんけんをして勝った人の後ろに負けた人がつき、どんどん列車が長くなっていく遊びです。1番最後まで勝ち続けた人の後ろにはクラス全員が並び長い列ができます。
一見簡単な遊びに見えますが、じゃんけんをする相手を探してじゃんけんをする。負けた人は勝った人の後ろにつく、というルールをクラス全員が理解できていないとうまくゲームが進みません。参観で初めて行うのではなく、保育の中でも何度か取り入れてから参観を迎えると良いでしょう。
じゃんけんは運なので、どの子どもにも勝つチャンスがあることも良いところ。子ども達だけで行った後には、保護者も一緒に参加して行うと親子で楽しめます。
自分で考えて作り上げる製作「お弁当作り」
5歳児の製作は決められたものを作るのではなく、自分で1から考えて作る様子を見てもらいたいところです。そんなねらいをかなえるためには、お弁当作りがおすすめ。さまざまな材料を使って、アイデアいっぱいのお弁当を作りましょう。
材料は、折り紙・毛糸・お花紙・画用紙・ストロー・発泡剤・スポンジなど。材料から自分で選び、思い思いのお弁当を作ります。どんな具材をいれるのかも、全て子どもにお任せです。
お弁当箱に詰めてふたを閉めたら、いつもご飯を作ってくれるお母さん、お父さんに子ども達からプレゼント。子ども達が一生懸命作ったお弁当にきっと感激してもらえますよ。
時間があれば、1人ずつみんなの前でどんなお弁当を作ったのかを発表しても良いですね。
子ども達が自分で考え、真剣に1つのものを作り上げる姿に成長を感じてもらえる活動です。
保育参観時の保育士の服装は?
保育参観は日ごろの保育を見てもらう場ですので、基本的にはいつも保育中に着ている服装で大丈夫です。ただ、清潔感と安全面にはいつも以上に気を配りましょう。
- エプロンのボタンが取れかけていないか
- Tシャツやエプロンがしわだらけではないか
- 洋服にシミはついていないか
- 上履きや外履きは汚れていないか
細かなことですが、保護者は保育士の様子を意外と見ています。特に安全面には敏感です。乳児クラスでは、ボタンが取れかけていると誤飲につながるのでは?という不安を与えてしまいますので、日ごろから常にチェックしましょう。
園によっては、保育参観時はジャージやジーンズNGであったり、色の指定がされることも。初めて保育参観にのぞむときには、必ず確認をしてくださいね。
急なトラブルがあっても落ち着いて対応しましょう
子ども同士のけんかやけがなど、保育参観中にもトラブルが起こる可能性はあります。そんなときに1番大切なことは、保育士が落ち着いて対応すること。突然のトラブルに焦ってしまうと、保護者からは頼りがいのない保育士と思われてしまいます。
内心は焦っていても、それを表に出さないようにしましょう。
トラブルごとの対応法をご紹介します。
子ども同士がけんかを始めたとき
子ども同士のけんかは保育の場面ではよくあることです。保育参観でも起こる可能性は十分ありますね。参観中にけんかが始まったときに1番大切なことは、早めに対応することです。日頃の保育では年齢が上がると特に、あえて仲裁をせずに見守る場面も多いですが、参観で対応せずにいると「けんかが起きているのに何もしてくれない保育士」と思われてしまいます。
また、こじれてしまったけんかは解決が難しくなるので、参観中は特に早めにけんかに気付き、対応することが重要です。
0・1・2歳児クラスでは、おもちゃの取り合いなどでけんかになる場面が多いので、参観中はけんかになりやすい個数の少ないおもちゃは使わない工夫もすると良いですね。
保護者が来られなくなった
保育園を利用する保護者のほとんどは働いていますので、仕事の都合で参加ができない保護者も少なくありません。
そんなときには、来られない保護者と子どもへの配慮が必要です。親子製作など親子で楽しむカリキュラムの場合には、保育士が親代わりとなって保護者が来られない子どもと一緒に行いましょう。
参観に行けない保護者は、自分が行けないことで子どもが寂しい思いをしているのでは、という部分が1番の気がかりです。実際には自分だけお父さんやお母さんが来ていないことで子どもにさみしそうな様子が見られるかもしれませんが、それを保育士から保護者に伝えるのはNG。友だちや保育士と楽しく過ごしている場面を伝えてあげてください。
参観中にけがが起きたらどうする?
参観中にけがが起きた場合には、普段の保育で対応している通りに素早く丁寧な処置を行いましょう。
医務室がある園では、保育士が付き添って医務室で処置を行います。保護者が心配している様子があれば、一緒にきてもらっても良いですね。保育室で処置を行っている園では、活動から少し離れた場所でけがに合わせた処置を行います。そのときに大切なことは、焦らないこと。けがで子どもが泣いているときには、なだめながら落ち着いて処置を行います。保育参観の前には、応急手当のための道具を再度確認しておきましょう。
突然のけがに保育士が慌ててしまうと、子どもも保護者も不安になります。いつも通りの対応を心掛けてくださいね。
参観が終わった後の懇談会について
保育参観が終わった後に、保護者との懇談会を設けている保育園も多くあります。
- 保育参観の振り返り
- 日頃の子ども達の様子
- クラス全体としての保育目標や挑戦していること
- ご家庭へのお願い
- 質疑応答
これらが主に懇談会で話をする内容です。保育参観の振り返りから始めると、保護者の雰囲気も和み、良い雰囲気の中で話ができますよ。
保護者から出た質問についてはすぐに答えられるものはその場で答えますが、はっきりと返答ができない場合はあやふやに答えず、園長や主任に確認をしてから答えるようにしましょう。
懇談会は限られた時間の中で話をしますので、話す内容や保護者にお願いするべきことはあらかじめまとめた状態でのぞんでくださいね。
保護者が安心感をもってくれる活動が保育参観成功のポイント
保育参観は保護者に日頃の保育や子どもの様子を見てもらえる、保育士にとっても貴重な時間です。
カリキュラムを考えるときのポイントは、保護者が安心感を持ってくれるかということ。子ども達が思い切り楽しんでいる姿や、発達に合わせた活動に真剣に取り組んでいる姿を見られることが保護者の安心につながりますよ。
また、毎日忙しく過ごしている保護者にとって、ゆっくりと子どもと向きあえる時間でもあります。子どもにとっても、大好きなお父さんやお母さんと過ごせる楽しい時間となるようなカリキュラムも取り入れてみてくださいね。