保育士のひきだし
2018.12.25
保育士になるには?資格の取り方、試験内容、難易度などを解説
子どもの成長を見守り、保護者の手助けをする保育士の仕事。かわいい子ども達と一緒に過ごし社会貢献もできるすてきな職業です。共働き家庭が増えている中で、保育士は常に求められています。
では、いざ保育士になりたいと考えたとき、保育士になるためにはどんな方法があるのか。そもそも具体的な保育士の仕事内容とはどんなものなのかが気になる、という人も多いのではないでしょうか?
保育士を目指している方へ。保育士になる方法や保育士の仕事についてご紹介します。
保育士とは
保育士とは、小学校就学前の保育に欠ける乳幼児の保育と保護者支援を行う国家資格「保育士資格」を持ち、保育所などの保育施設で仕事をする人を指します。
保育に欠ける乳幼児とは、共働きなどの理由から保護者が保育を行えない時間帯のある子どもです。
子どもの成長にとって、乳幼児期の大人との関わりは大切な意味を持ちます。保護者と離れている間、一番身近な大人として子どもと関わり、成長を見守り、保育園という集団生活の中で社会性を身に着ける手助けも行う存在です。
また、保護者支援という面でも保育士の存在は大きな意味を持ちます。保護者が子育てに迷ったときに保育のプロとしてアドバイスをしたり、悩みを聞くことで保護者が前向きに子育てができる手助けをするのです。保育園に通っている親子だけではなく地域の親子を園に招き、話をする機会を設ける場合もあります。
保育園に通う子ども達にとって大好きな存在、そして保護者にとって信頼できる存在、それが保育士です。
保育士の仕事内容
保育士の仕事は多岐に渡ります。保育園で働く保育士の仕事内容をご紹介します。
- 子どもの発達に合った保育内容の立案
- 子ども1人ひとりに合わせた援助と関わり
- 保護者対応
- 園行事の立案・実行
- お便り作成・週案、月案、年間カリキュラムの作成・個人記録の作成などの事務仕事
- 環境整備
- 製作準備や季節の壁面作り
- 子どもの発達に合った玩具の選定
園によって事務仕事や行事内容は違いますが、子どもへの働きかけや関わりを軸に、さまざまな仕事をこなします。
保育園の種類について
保育園には大きく分けて3つの種類があります。
- 国の認可基準を満たし、都道府県から認可を受けた認可保育所
- 都や県独自の認可基準を満たした保育所(東京都認証保育所、埼玉県認定ナーサリーなど)
- 国の認可基準を満たしていない、認可外保育所
認可保育所の中には、園児定員19名まで、0,1,2歳児を対象とした小規模認可保育所も含まれます。
認可外保育所は国の認可基準を満たしていませんが、その分保育園ならでは特色を打ち出したり、保護者のニーズに答えた保育が可能です。そのため、あえて認可外保育所のまま運営している施設もあります。
保育士になるためにはまず「保育士資格」を取得する
さまざまな保育施設で求められている保育士。
保育士になるためにはまず、「保育士資格」を取得する必要があります。保育士資格を取得する方法は大きく分けて2つあります。
- 大学や専門学校など厚生労働大臣が指定する保育士養成施設を卒業する方法
- 保育士試験を受験し合格する方法
それぞれの方法を見ていきましょう。
大学・短大・専門学校などで保育士養成課程を修了する
こちらの方法では、保育士資格の取得が可能な、大学・短大・専門学校を受験し入学。保育士資格取得に必要なカリキュラムを受講し、修了することで保育士資格が取得できます。
実際に保育園を訪問し、一定期間子どもや保育士と一緒に過ごすことで保育の実践を積む保育園実習もカリキュラムの1つです。
卒業と同時に資格が取得できることと、実習の機会が多く実践を積めるというメリットがあります。
保育士資格だけではなく幼稚園教諭免許など、他の資格が取得できる学校もあります。自分がどんなカリキュラムを求めるのか、保育士資格以外にも資格取得を目指すのかという点にも考慮して学校選びをすると良いでしょう。また、短大・専門学校と比べて、大学卒業の方が高い給与を設定している保育園もあります。
保育士試験に合格する
決められた受験資格(【参考】受験資格|一般社団法人全国保育士養成協議会)を満たした状態で、1年に2回実施されている保育士試験を受験。合格して保育士資格を取得する方法です。カリキュラムを修了すると同時に資格取得ができるわけではないので、自分で試験対策をして合格を目指す必要があります。
勉強の方法は大きく分けて3つ。
- テキストを購入し独学で勉強をする
- 通信教育を利用する
- 通学講座を受講する
自分に合った方法を利用することで、合格の可能性は上がります。
保育士試験の受験は社会人になってから保育士を目指したいという方や、子育て経験を活かして保育士として働きたいという方が多いことが特徴です。
働いていたり、家庭の事情で外出ができなくても、自分で時間を見つけて勉強ができるというメリットがあります。
保育士試験の内容について
保育士試験には筆記試験と実技試験の2つの試験があります。筆記試験に合格をしなければ実技試験に進むことはできず、両方の試験に合格して初めて保育士資格が取得できます。保育士試験は前期と後期の1年に2回実施されるので、毎年2回ずつチャンスがあるということですね。
筆記試験と実技試験について、具体的にご紹介します。
筆記試験について
筆記試験には8つの科目が出題されます。
- 保育原理
- 教育原理及び社会的養護
- 児童家庭福祉
- 社会福祉
- 保育の心理学
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
それぞれの科目で合否が決定し、合格した科目については合格した年を含めて3年間は有効です。
例えば、初めて保育士試験を受けて「保育原理」のみ合格したら、その年を含めて3年間は保育原理は受験する必要がないということです。
得意科目と苦手科目を把握し、合格有効期間を上手に使うことで合格への道へと近づきます。
実技試験について
実技試験は筆記試験に合格して初めて受験できます。
出題内容は3つ。
- 音楽表現に関する技術
- 造形表現に関する技術
- 言語表現に関する技術
この3つの中から2つを選択して受験します。
過去に出題された内容を、平成28年度の出題を例に挙げて見てみましょう。
音楽表現に関する技術
課題曲「かたつむり」「オバケなんてないさ」の弾き歌い。幼児に歌って聴かせることを想定して弾き歌いなさい。
ピアノ以外にも、ギターとアコーディオンでの演奏が認められているので、ピアノが弾けなければならないというわけではありません。
造形表現に関する技術
保育の1場面を絵画で表現する。
場面設定は当日発表されます。保育士として必要な造形表現が求められる出題です。
言語表現に関する技術
3歳児クラスの子ども達に3分間のお話をすることを想定した素話。絵本や台本の持ち込みはNGなので、話を覚え3分間にまとめて話をできることが前提です。
課題には4つの童話があり、その中から自分が話しやすい童話を選びます。
保育士としての声の出し方や表現力、幼児に対する話し方ができることを求められる出題です。
保育士試験の難易度は?
8科目の筆記試験と実技試験の合格が求められる保育士試験。その難易度はかなり高いと言われています。では実際には、どのくらいの割合の人が保育士試験に合格しているのでしょうか?
厚生労働省の調べによると、平成29年度に東京都で保育士試験を受験した人は13,587人。そのうち合格した人は3,051人でした。
【参考】厚生労働省 保育士試験の実施状況(平成29年度)
合格率は22%。約2割の人が合格している計算です。ということは、8割の人は不合格という結果ですね。
確かに、難易度が高く合格率の低い試験であることは事実なようです。特に筆記試験の難易度が高く、何年も合格できないという話をよく聞きます。
筆記試験になかなか合格できない。そんなときの秘策として、合格科目は3年間有効という有効期間を利用するという方法があります。
試験は前期後期の1年に2回あるので、今回の試験は8科目のうち2科目を重点的に勉強する。そして2科目合格したら、残りの6科目のうち2科目を重点的に勉強するという方法です。
1回に勉強する範囲が狭まるので、頭に入りやすいというメリットがあります。その都度受験手続きをする必要があること、受験料がかかるという問題はありますが、着実に合格したいと言う人にはおすすめの方法です。
保育士資格で就職できる場所
保育士養成施設に指定された大学・短大・専門学校で養成課程を修了する。もしくは保育士試験に合格して保育士資格を取得した人は、「保育士」として働くことができます。
保育士の活躍の場として、代表的なのは保育園ですね。しかし、保育園以外にも保育士資格で就職できる場所はたくさんあります。保育園も含めてご紹介します。
認可保育所
国によって定められた保育士設置基準(子どもの人数に対する保育士の人数)を満たさなければ運営することができない。
認証保育所・認定ナーサリー
都や県が定めている保育士設置基準を満たさなければ運営することができない。
認可外保育所
国が定めた保育に従事する人数の3分の1が保育士資格を保有している必要がある。
学童保育所
学童保育所の運営に必要な「放課後児童指導員」の資格を取得するための要件の1つとして、保育士資格の保有がある。
院内保育施設
病院内で働く医師や看護師が子どもを預けるための保育施設。認可保育所ではありませんが、保育士資格必須の求人がほとんどです。
病児保育施設
病気の子どもや病気の回復期にある子どもの保育をする施設。保育士と看護師の両方が在中し、子どもの保育とケアにあたります。
事業所内保育施設
企業内で働く従業員のために、企業が設置する保育施設です。平成28年には厚生労働省が企業主導型保育事業制度を創設し、市区町村の認可なしでも補助を受けられるようになりました。
保育に従事する人の半数以上が保育士資格を有していることという規定があります。
ベビーシッター
ベビーシッターとして働くために必須となる資格はありません。ただ、企業によっては保育士資格保有者の時給を高く設定している場合もありますし、保育資格を持っているとより多くの依頼をもらえるという利点もあります。
自分に合った方法で保育士資格を取得し、保育士への第一歩を踏み出そう!
認可外保育所やベビーシッターなど、保育士資格がなくても就ける子どもと関わる仕事はあります。しかし、資格を持っていないと保育士と名乗ることはできません。
子どもと関わりたいという思いの中で、職場の選択の幅を広げるという意味でも保育士資格の取得は重要です。
学校に通って資格を取るのか。それとも保育士試験に挑戦し合格を目指すのか。
学校に通う場合は、大学にするのかそれとも短大や専門学校にするのか。保育士試験に向けての勉強には通信教育を利用するのか。それとも独学で頑張るのか。
決めるべきことはたくさんあります。保育士資格取得のために、自分にはどの方法や環境が合っているのかをよく考えて決めるようにしましょう。
保育士の仕事は大変なこともありますが、それ以上にやりがいと魅力にあふれた仕事です。保育士として働く自分になるために!保育士資格取得という第一歩を踏み出してくださいね。