まなびのひきだし
2015.03.04
06.表現を交流していく
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このコーナーでは、むっちゃん先生(無藤隆教授)が、保育・幼児教育の大事なポイントを分かりやすく解説します。一人でじっくり読むのもよし!研修の素材として、園やクラスのみんなと読むのもよし!様々な形でご活用ください。毎月1回(第1水曜日を予定)お届けします。読まなきゃ、損。差がつきますよ!
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■ここでは、造形表現について、その要点を子ども同士の交流という点から考えてみましょう。たとえば、掲示をどのようにしていくかということです。掲示ということは子どもに遊びのための刺激を提供することなので、表現作品を飾ることも、もっと広く活動の成果や保育者の伝えたいことを示すということもあります。
■園の保育室の掲示をどう行えばよいのでしょうか。全体の掲示でも子どもの作品を見せるのでもいろいろとあるでしょう。たとえば、子どもの描いた絵を飾ります。グループの作品の場合もあります。誕生日を示すのに月ごとに子どもの名前を書いたものを飾る場合もあります。季節の様子を見せるように、保育士の方で製作して飾ることもあるかもしれません。
何よりその掲示が子どもにとって意味のある刺激となっているのかどうかが、かんじんです。飾ってあっても、子どもが見ないものは意味がありません。一瞬見ても、つまらなければ、それは壁紙の模様以上の意味を持たないでしょう。
■基本となることは、子どもが参加して作ることです。子どもの作品を飾るのはそのためです。自分が参加して作れば、子どもには意味あるものとして感じられます。どうすれば見てもらえるかまで年長くらいになれば考えるかもしれません。たとえば、誕生日表を作るとして、子どもが保育士と一緒になって4月あたりに作ってみる。子どもたちの誕生日を言ってもらい、それを書き出して、月ごとに並べる。月ごとの特徴をグループで絵にしてみる。一人一人の子どもについては名前とともに、その子どもの自画像を貼る。カレンダー作りも出来ます。12ヶ月の絵を作り、日にちも書いて、飾ります。そういった活動は表現でもあり、協同活動でもあり、どうすればよいかを考える工夫をするところにもなります。
自分がどこを作ったか分かることが大事です。協同で作ったにせよ、そこは自分だということです。それを探せば見つかるようにします。といって、ただ、個人の作品が並んでいるだけでは全体を眺めて、つまらないので、その全容が一つの作品として見られるようにもします。遠くから見て全体のインパクトがあり、近くによると個々の子どもの貢献が見えるということが必要です。
■そこにドラマが見えるようにもしてみましょう。単に作品があるだけではなく、それがどう展開したかを見えるようにします。
たとえば、遠足の絵をそれぞれの子どもが描いたとします。
行く途中、行った先のいくつかの出来事、帰りとそれらを並べ直して、見えるようにします。運動会も行事ごとに並べ直し、遠足で動物園に行ったら、動物ごとに整理して、全体が運動会の場とか、動物園と分かるように、保育士がまとめて描きます。時間や空間のまとまりをつけるわけです。
■いかに全体が映えるように、美しく、子どもの作品も素敵に見えるようにするかも気をつけましょう。保護者から見ても、きれいだと思ってくれるように仕上げます。小さな子どもの殴り書きでも色の付いた紙の上に丁寧に貼ると、美しく見えます。子どもの作品を大事にしてくれていると子ども自身にも保護者にも感じられるようにします。
■いつも同じ作品が飾られているのではなく、その時々の子どもの活動を反映し、また誘う仕掛けとするようにも配慮しましょう。カレンダーだって毎月作ってもよいのです。行事以外だって絵を描けばよいのですし。皆で生活発表会のために劇を作ったら、その経緯を表す記録を映像や絵と多少の文章で表して掲示できます。保育士が掲示をしたなら、それがどう子どもの活動を刺激して、新たな活動を生み出すかも考えます。皆で集まったときに一緒にそれを素材に考えてもよいでしょう。